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お と も だ ち

違和感を感じずにはいられない。

公園や児童館、ショッピングモールにプレイランド。

週末の度に、2歳の倅を連れて出かける日々。

いまだに違和感の残る状況がある。


「おともだちが遊んでるでしょ」

「おともだちが待ってるでしょ」

見ず知らずの親御さんが口々に言う。

その度にボクは心で思う。

「おともだちではないが」


他所の子を呼ぶ際、「おともだち」という呼称以外に

適した呼び方はないものだろうか。

と、いっつも思う。

いっつもだ。

勿論「おともだち」と呼ぶ意図は良く分かる。

誰が言い出したのか知らないが、害の無い良く出来た表現だとは思う。

しかし、「おともだち」の定義としては、あまりにも浅く

雑な呼称ではないだろうか?

「みんな仲良く」「みんなおともだち」

分かるよ。分かる。

でもなんだろう。この違和感。

「おともだち」って、そういう都合の良いモノだろうか?

いつか本当のお友達が出来たとき、

「ねぇ?おともだちってなぁに?」と曇りなき眼で聞かれたとき、

答える準備はあるのだろうか。

「おともだち」とは本来、困った時に手を差し伸べてくれる、

くだらない事で笑ったり、一緒に過ごせる者のコトだろうに。

「おともだち」と「他所の子」の境界線を引かなくていいのだろうか。

「おともだち」なら譲り合ったり、一緒に遊ぶのは当然だ。

しかし、お友達ではない、知らない人にも同じ気持ちを持ってもらいたい。

そして、その中で芽生えた友情の証として改めて

「おともだち」と呼んでもらいたい。

そんな父の気持ちは、どう伝えるべきなのか。

故に父は悩む。

もっと適した呼び方がないものか。


あまり関係ないが、この違和感はアレに似ている。

美容院でシャンプーしてもらった後、恐らくは皆も感じるだろう

「お疲れ様でした」だ。

「疲れてないよ。むしろお疲れ様でした」

誰もが一度は思うだろう。

感じた疑問をそれとなく聞ける、素直で或いは面倒臭いボクは

この落ちない腑について、何人かの美容師に聞いたことがある。

逆じゃないのか? 他に適した表現はないのか?

すると大抵の美容師は、「たしかにそうですね。何故でしょう?」と

よく出来た営業スマイルを見せるのだ。

そしていつも明確な代案が返ってきた事はない。

彼らもわかっていないのだ。

わかっていないが便宜的に多様する。

そうね、営業スマイルという単語からひとつ妙案が。

では、どうせなら。

「気持ち良かったですか?」

「うん、気持ち良かった」

「良かったです。ニコッ」

って、勘違いを生むような会話の方がしっくりくる。


まぁ、美容院の件はいい。

ちょっとした疑問だし、そこはマニュアルだから。

しかし、これから幼稚園、小学校と、今後増えていくであろう

他所の子を呼ぶ状況はどうしたものか。

故に父は未だにそのような場面において

余所の子を「おともだち」と呼んだことはない。

呼べない。

腑に落ちてないから。

呼んだら負けだ。

さて困った。


事ある毎に考えるのだが、良い案が出てこない。

例えば「似たような子」

「ほうら。似たような子がいっぱい遊んでるよ」

たまに使うが、流石に他所の子を目の前にして使う呼称じゃない。

「A君、Bちゃん」

ふむ。悪くはないが、意味が解らないだろう。

「キッズ」

「ほら、キッズが使ってるでしょ?」

お!?どう?

「少年or少女」

「順番だよ。少年のあとね」

ふむ。悪くないね。

そもそも「他所の子」と呼ぶのは悪いことかしら。

少し他人行儀で冷たく聞こえるのかもしれないが、間違ってはいない。

散歩中に倅がてくてく知らない家の敷地に入ろうとする。

父は「ダメだよ」と諭す。

彼は言う。「どうしてダメなの?」

「余所の家に勝手に入ったら捕まっちゃうよ?」

彼は理解を始めた。

同じ事のような気もするが。


もっと他に最適な呼称がございましたら、

是非とも教えていただきたい。

優秀賞に選ばれた呼称は、父が責任持って使わせていただきます。

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