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歩み

初台にある、本が読めるカフェfuzkueで過ごした、日曜の夜の日記。

西暦、2220年のカフェ
頭上の書架の面持ちは 
一つ昔の記憶に出逢い続けた君の
君の部屋の
押入れのなかの
ダンボール毎の銀河の内側と兄弟のようだ

バンコクの地下鉄は走り続けている
新宿はデリーとハノイとソウルを混ぜたものに似ている
クアラルンプールのビルが 
日に日に伸びるように見えるのは錯覚だ
そこではあらゆる塊と空気は毎夜
街の狭間の向こう側に浸されて翌朝を迎える
同じ花は成長と引き換えに 
新たな名を授けられる

アーキテクト
アーキテクト
システムアーキテクト
『ユーケルの書』
デジタル
デジタル
デジタルトランスフォーメーション

世界は回転を加速させ 散り散りとなり
もはや運ばれているものを運ぶことしかできなくなった

わたしに運ばれて来たものは 
ひとびとが運べないもの
それは最後に選ぶ食事ではなく
生まれて初めての挨拶をして
口に贈る味だろう

わたしには人生の意味がわかっている
なぜここへ来るまでの道のりを歩まされたのか

子供達は生を知っている
稜線の死を 昼の視界に捉えているのだから

背中に添えられた手は  
前世と その一つ前の前世とを包み込む
わたしが添える手は わたしを歩ませる
月は待ってくれない

しかしながらこれらはすべて消える
それが夢であったからではない
あなたの唯一性は
あなたの鼓膜と網膜の交差にだけ
刻まれたものだったからだ

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