見出し画像

女王

大学一年のとき、サークルの女子部に君臨する女王がいた。
(誰も知り合いがこのnoteを見ませんように。)

4女の彼女は、本当に影で女王と呼ばれていた。引退しても出てくるような痛い先輩じゃなくて、実力でも女王だった。
性格も強烈だったらしい。私は直接被害を受けてないのでイマイチぴんとこなかったけれど。

1女の私とは本来全く関わらないはずなのだけど、あるとき、遠征の帰りに2人で一緒に帰ることになった。
なぜそんなことになったかというと、私以外の同期がバイトもしてないのに「時間はお金で買うべき」なんて言って揃って特急で帰ってしまって(私はお金のために時間を売るバイト戦士だったから、未だに嫌味な書き方になってしまう)、2女と3女は観光に行ってしまい、在来線に乗るのが2人だけだったのだ。

さて、気難しい女王気質という話は聞いていたから、さすがに緊張した。1女と4女なんて会話に困る。向こうも困ったと思うけどこっちも困る。
けれど媚を売るのは実は得意なのでなんだかんだ話をして、沈黙もなく大学の近くの駅まで戻ってきたと思う。
すごく適当な理由付けだけど向こうもバイト代を無駄遣いしたくない倹約家だから話が合ったのかもしれないな。(ちなみに同じバイト戦士といっても彼女は高給で有名な塾講バイトしてたから相当稼いでたと思うけどね。)

そこで夜ごはんを食べることになった。
女王は「チェーン店はイヤだからね、どこでも食べれるやつはダメ」と無茶振りをしてきたので、下僕のわたくしめは必死でお店を探した。
(今ならすぐ検索できるだろうけど、まだガラケーの時代だった。結局、たぶんチェーンだったんだろうけど、女王が初めて見るお店だったのでお許しをもらえた。お優しい…。)
バイト戦士で倹約家なのにチェーン店がダメなの?というツッコミは女王に失礼なのでやめてもらいたい。畏れ多くも一般庶民に理解できるようなお方ではない。

そこでご飯を食べて、ありがたいことに奢っていただいて解散した。

後日、本当に二人で帰ったのかとみんなに聞かれた。「すごいね」ってやたら言われたし、「うそ、奢ってもらったの?」「恋バナしたの!?!?」などとも言われた。みんなどれだけ冷たくされてきたんだ。
普通に世間話と恋バナをして食事しただけでどうしてこんなに驚かれるのだろうと今でも思うし、価値観が違いすぎたり下僕力が足りないだけでは?と結論付けることは簡単なんだけど、
これだけ皆が気を遣うということはさすがに何かあると思うので、やっぱり私がズレてるんだろうね。
私も、お金がもったいないから一人だけ在来線で帰るような協調性のない女なので。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?