リアル
「前略プロフ?なにそれ?やらないよ、そんなの。」
飯田圭太がそう答えたのは、中学2年生の頃だ。
前略プロフという携帯サービスが当時流行っていて、一緒に始めようと友達の和樹から誘われたが、圭太は断ってしまった。
前略プロフというのは、今のSNSの前身のようなサービスだ。
携帯は持っているけれど、あまり好きではなかった。
平成という時代に生まれているのに、考え方は昭和に生まれた方と近いのかもしれない。
とはいえ、ezwebで「前略プロフ」と検索してしまった。
前略プロフで3人ほど、仲の良い友達を検索してみた。
なんだ、みんなやっているじゃないか。
和樹が始めようというのも、分かる気がする。
そして、一番気になっていた名前を打ち込んでみた。
こんなサービスには少しも興味がなかった。
なのに、こうして検索しているのは、あの子がやっているか気になったからだ。
小学校5年生から片想いをしている、安西未来だ。
検索欄に「安西未来」と打ち込んでみた。
検索する前に恥ずかしくなった。
でも、気になる。
もう一度、検索欄に「あ」と打つと、「安西未来」と予測が表示された。
それがまた恥ずかしくなった。
必死に「安西未来」という言葉が予測に出ないように、「挨拶」「ありがとう」「朝早い」とか、「あ」で始まる言葉を打ち込み続け、やっと「安西未来」が変換予測で上に出てこなくなった。
予測変換で名前が出てくるだけでドキドキしてくる。
いざ、前略プロフで検索してみると、安西未来のプロフィールが見つかった。
誕生日、好きな動物、性格などなど。
facebookの基本データがもっと詳しく書かれているようなものだ。
一番気になったのは、好きな人という欄。
このプロフィールで、一番気になる回答だ。
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