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【高松盆栽】松盆栽の生産量が日本一!産地から国内外にその魅力を発信(香川県高松市)

日本全国の“地域の宝”を発掘する連載コーナー「地元にエール これ、いいね!」。地元の人々に長年愛されている食や、伝統的な技術を駆使して作られる美しい工芸品、現地に行かないと体験できないお祭など、心から「これ、いいね!」と思える魅力的なモノやコトを、それぞれの物語と共にご紹介します。(ひととき2023年11月号より)

 高松盆栽の歴史は遡ること200年余り。野山に自生していた松を鉢に植え替え、金刀比羅ことひらぐうの参拝客を相手に、土産物として販売したのが始まりだという。「雨が少なく温暖な瀬戸内の気候と、水はけがいいこうがんの土壌が、松の栽培に適していたんです」。香川県盆栽生産振興協議会の会長を務める尾路おろさとるさんが教えてくれた。

高松盆栽の郷 高松盆栽の発展のために尽力する尾路悟さん 

 高松盆栽は、盆栽の代表格・黒松を筆頭に、主に松を扱う。高松市のなしちょう国分こくぶんちょうが生産地の中心で、最盛期の農家は300軒を超えていた。現在は60軒ほどに減少したものの、国内で生産される松盆栽の約8割を占める。

中西珍松園の一角に佇むギャラリー「TAKUMIKUMO VILLAGE*」。伝統的な松盆栽がモダンな空間にマッチしている

*高松盆栽、香川漆器、庵治石〈あじいし〉の加工、陶芸といった香川県の伝統的なものづくりに携わる集団「TAKUMIKUMO」の拠点で、盆栽のほかにもさまざまな伝統工芸に触れることができる

 2020(令和2)年には、盆栽愛好家の裾野を広げようと、情報発信の拠点施設「高松盆栽のさと」をオープンさせた。松柏しょうはく類*、雑木類*ともに豊富に揃い、約1万鉢を展示販売。気軽に見学や購入、体験ができる場所として好評だ。

松柏類*  松に代表される常緑針葉樹
雑木類* 松柏類以外の樹木

ワークショップも開催。講師は花澤美智子さん 写真提供=高松盆栽の郷
高松盆栽の郷 和三盆干菓子で盆景を作って楽しめる「和三盆糖 箱盆」

 中西珍松園ちんしょうえんでは、重厚な黒松が印象的な玄関を抜けると、洗練された盆栽庭園が迎えてくれる。「庭の盆栽は季節ごとに変えています。盆栽次第で、表情ががらりと変わりますね」と5代目の中西陽一さん。希望があれば、盆栽の郷の案内もしてくれるという。妻の佳奈さん曰く、 「一緒に歩いて学びましょう」。

中西珍松園 [上]中西陽一さんと佳奈さん。現代の暮らしに合う盆栽の飾り方を提案している [下]ゆったり盆栽を楽しめる庭園

 花澤明春園みょうしゅんえんの5代目・花澤登人たかひとさんは、購入者へのアフターケアを徹底し、盆栽に対する不安を払拭している。身近な山野草を多数扱うのも信条だ。一方、幹がハートや星の形をしたポップな盆栽や、香川らしいオリーブの盆栽を手掛けるのは、6代目として家業に携わる娘の美智子さん。新しい風を吹かせてファンを掴んでいる。

花澤明春園 [上]伝統的な盆栽のイメージを覆すアルファベットやハート形! [下]花澤登人さんと美智子さん 

 樹齢100年以上も珍しくない盆栽は、気ぜわしい現代人にこそ、鷹揚おうようかつ丁寧な暮らしを積み重ねる大切さを教えてくれる。「自由に自分のセンスで楽しんで」と登人さん。「水やりさえ欠かさなければ大丈夫。それが植物の強さであり、魅力ですから」

花澤明春園 [上]山野草の盆栽は素朴で愛らしい [下]小ぶりなオリーブの盆栽「コリーブ」

文=神田綾子 写真=佐々木実佳

ご当地INFORMATION
高松市のプロフィール

高松市北西部に位置する鬼無町・国分寺町は、世界的にも珍しい「盆栽の郷」。盆栽用の植木を栽培する畑が点在しており、散策も楽しい。今冬には「せとうち盆栽庭園美術館」がオープン。600平方メートルの盆栽庭園を中心に、体験施設、盆栽をテーマにしたカフェ、ゲストハウスなども併設。また、鬼無町は「桃太郎伝説」発祥の地のひとつとしても知られ、熊野権現桃太郎神社、鬼ヶ島とされる女木島〈めぎじま〉をはじめ、伝説ゆかりのスポットが数多く残る
問い合わせ先
高松盆栽の郷
☎087-874-2795
中西珍松園
☎087-882-0526
花澤明春園
☎087-881-2847

出典:ひととき2023年11月号

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