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【津軽びいどろ】華やかに美しく青森の風景を映し出すハンドメイドガラス(青森県青森市)

日本全国の“地域の宝”を発掘する連載コーナー「地元にエール これ、いいね!」。地元の人々に長年愛されている食や、伝統的な技術を駆使して作られる美しい工芸品、現地に行かないと体験できないお祭など、心から「これ、いいね!」と思える魅力的なモノやコトを、それぞれの物語と共にご紹介します。(ひととき2023年6月号より)

 ガラスに浮かぶ、とりどりの色彩が目を楽しませる「津軽びいどろ」。工場を案内してくれた北洋ほくよう硝子ガラスの社長・壁屋かべや知則とものりさんは「伝統工芸品の津軽びいどろは、職人の高い技術力と長年の研究で培われてきたオリジナルの色の豊富さが特徴です。青森の地域性を色に落とし込み、デザインを掛け合わせてプロダクトを生み出しています」と話す。

こんなセットで手紙を書きたい、名産のりんごをモチーフにしたガラスペンとインク壺

 北洋硝子は1949(昭和24)年、陸奥むつわんでのホタテ養殖をはじめとする漁業に欠かせないガラスの浮き玉を作る会社として創業した。

 浮き玉は、「ちゅうき」という技法で作られる。吹きさおを全身でコントロールしながら、大きな球体を均等な肉厚に吹き上げるのだが、厚みが均等でないと水圧によって割れやすくなってしまう。小さな球を吹くだけでも最低5年はかかる技だ。

「宙吹き」をする伝統工芸士の神正人さん。職人全員が青森県出身者

「軽くて割れにくいガラスの浮き玉は好評で、かつては全国の7割ほどのシェアを占めていたのですが、時代の変化とともに樹脂製に代わっていきました。それから宙吹きの技術を生かして花器などを作り始め、1977(昭和52)年に〈津軽びいどろ〉が誕生したんです」

「あかりんごカップ」。津軽地方のスターバックスではロゴ入り地域限定津軽びいどろタンブラーを販売

 そこで重要になった、ガラスの色の開発を専門に担ってきたのが現在の工場長・中川洋之ひろゆきさんだ。

社長の壁屋知則さん(右)と工場長の中川洋之さん。今年、不要なガラスの浮き玉を再利用した新作を発表

「作っているのは基本的に青森の四季の色です。普通は色の粒を買うのですが、自社で調合を試みました。発色はもちろん、ガラスの強度なども加味しながら試行錯誤し、今や色のレシピは100色以上あります。工場で調合できるので色は無限に出せるんです」

季節の花を引き立てる津軽びいどろの一輪挿し。左から「夏の田園」「宵の蛍」「雪の灯」「向日葵」 撮影協力=喫茶マロン

 津軽びいどろでは津軽海峡や八甲田山の雪、ねぶた祭などのモチーフが色で表現されている。

ねぶた祭をはじめ季節感をガラスに込めた箸置き。小さいが成形には鍛練が必要となる

「青森発のブランドとしてさらに育てて、どんどん世界にも発信していきたいです」と壁屋さん。

 職人たちの手からなる、表情豊かなガラスが青森の四季の風景を伝えてくれる。

青森の地酒や肴が楽しめる日本酒バー「アマクチホノカ」へ。津軽びいどろの猪口は目にも涼しげで冷酒がすすむ!

文=佐藤暁子 写真=佐々木実佳

ご当地INFORMATION
●青森市のプロフィール
青森県の中央に位置し、陸奥湾に面している県庁所在地。青森港は江戸時代より商港として発展し、現在も市場があり活気に満ちている。三内丸山遺跡や八甲田山、浅虫温泉など見どころも多く、毎年8月には夏の風物詩「ねぶた祭」が開催される。
問い合わせ先
北洋硝子(青森直営ショップ)
☎017-782-5183
https://tsugaruvidro.jp/
喫茶マロン
☎017-722-4575
アマクチホノカ
☎017-772-0443

出典:ひととき2023年6月号

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