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[本のおはなしvol.13 ] 「でんしゃはうたう」

私にとって5月は毎年繁忙期。忙しない日々を過ごしていますが、木曜日の30分の時間が気持ちをリセットしてくれています。
さて、13回目の本のおはなしは『でんしゃがうたう』

のりもの大好き!電車大好き!な息子に絵本を探しているところで見つけたこの絵本、「うたう」ってどういうこと?と思いながら表紙を開いてびっくり!
こんなに読むのが難しい絵本は初めて!でした。

電車の音、どう表現しますか?
「ガタンゴトン」でしょうか? 他にも踏切「カンカン」、機関車「シュッシュ!ぽっぽ!」などわかりやすくステレオタイプな擬音語が浮かぶと思います。たくさん読んでいる電車絵本の中でも「がたたん」「ガタゴト」などが多いかな。
[本のおはなし vol.7]「のりもの絵本①」で岡本雄司さん作の絵本を紹介した時にも少しお話ししたような…『でんしゃにのったよ』で鉄橋を渡る時に「ダダッ ドドッ」と表現されているのには「確かにこれは鉄橋を渡る電車だ!」と感動しましたが、今まで電車の「音」に注目したことはありませんでした。

さて、この『でんしゃはうたう』ですが…電車が駅を出発して、次の駅に着くまでを「音」で伝える不思議な絵本。「ダダッ ドドッ」よりもいろんな「音」が出てきます。文字を目で追いながらただ読むとまぁ難しい!

とっ  どだっとおーん  どだっととーん どだっととーん
たたっ つつっつつ たたっ つつっつつ どどん
たたっ つつっつつ たたっ つつっつつ どどん

1度目は噛みまくり、これでは混乱と遅れが生じてしまう!(トーマス風に)
息子も母ちゃんどうしたの?とポカーンとした顔で見ています。

さて2度目、よーし!電車になりきるぞ!と気合を入れて読むと…
楽しい!!!!!
声に出すと体が震えてそれはまるで電車に揺られているよう。膝の上の息子も一緒に「だだっ」と言いながら出発進行です。

今回のおはなしのために絵本のことを調べていたら…
この電車、モデルは京王線。狭間駅から府中駅の間、確かに途中にモノレール(多摩モノレール)、そして川(多摩川)が。

この絵本の作者、三宮麻由子さんのインタビューを見つけました。
「一番音が大きく、電車らしい音が聞こえたのは総武線、おすすめは2両目以降!」確かに最近の電車はとても静かです。この絵本を読んでから電車の「音」を気にしているけれど、特に小田急線、さらにいうとロマンスカーの車内はもう図書館かな、というくらいに静か…

インタビューを読んでもらうとわかりますが、作者の三宮麻由子さんは4歳で病気のために光を失われたそうです。現在はエッセイスト・絵本作家として活動されています(ブログやツイッターもとても面白い!)。視覚以外の感覚がより繊細になっているからこその表現なのかもしれません。
そして他の絵本も気になり探してみると…

『おいしい おと』
こちらは食べるときの音。春巻(春巻が最初なことにもびっくり!食べる音はカル カル)、おひたし、レタス。口の中のいろんな音。とってもおいしそう!
作者の言葉が福音館書店のブログの中にありました[心の翻訳]

『かぜ フーホッホ』
風の音。扇谷一穂さんがゲストティーチャーとして行っている保育園での時間で、子どもたちに読んでいる絵本でした。

5月は、「かぜ」をテーマにした時間を子どもたちと過ごしています。「風を作ってみよう!」という声かけとともに、自分で作った旗を持って、みんなで様々な風を表現するワークの一環で、この『かぜフーホッホ』を読んでいます。「このページの風は、どんな感じかな。」と言ってページをめくると、旗を持った子どもたちは思いっきり走り回ったり、と思ったら、ゆっくりになってみたり。と、みんなで様々な風を体験しています。この本のお陰で、豊かな時間になっています。ー扇谷

ちいさなかがくのとも 2006年6月号 『おでこに ピツッ』
こちらは今の季節にぴったりな雨の音。お庭で遊んでいたらおでこに最初の雨粒がピツッ、地面にツプッ、葉っぱにパツッ。雨がだんだん強くなってきて止むまで。屋根や植物、あちこちの雨の音、そして鳥の声。雨も歌っているのがわかります。『かぜ フーホッホ』と同じく斉藤俊行さんの絵がまた優しく雨を伝えてくれます。

他にも
ちいさなかがくのとも 2013年4月号 そうっと そうっと さわってみたの
こちらは野原で草花をそうっと触ってみた、そんな絵本。聴覚ではなく触覚を研ぎ澄ませて。

ちょうどこの「本のおはなし」をはじめる時に、扇谷さんと「感覚」の話をしていました。コロナ禍で様々な制限がある中、今までと違う感覚が鋭くなってきている、というような。そんなことも思い出しながら、改めて日々の慌ただしさに埋もれ閉じてしまう感覚を広げて、視覚にばかり集中せずに、生活の中の音、香り、暖かさ、おいしさ…いろいろな感覚を大事にしていきたいなぁと思います。

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今週の子守唄は、三宮麻由子さんが「鳥語ラジオ」(三宮麻由子さんとラッキィ池田さんのラジオ。)武蔵関公園編で言及されていた「真っ白い耳」(何事にも捉われない空っぽの状態で音を聴くという意味の三宮さんの言葉)で捉えた音を表す言葉と、もう梅雨入りした?というくらい雨の続いた近頃のお天気からインスピレーションを得て、「あめふり」を選びました。

どこかで一度は耳にしたことのあるこの歌。
雨の音を表すこの「ピッチピッチ チャップチャップ
ランランラン」という言葉は、今でこそたくさんの人に浸透していますが、
この歌が作られた当初は、この言葉も新しい感覚を呼び起こすものだったのかもしれません。
北原白秋も「真っ白い耳」の持ち主だったのかもしれない。と思いながら、あらためて、その詞をいろいろとじっくり読んでみたいと思った次第です。

あめふり

北原白秋作詞、中山晋平作曲

あめあめ ふれふれ かあさんが
じゃのめで おむかい うれしいな
ピッチピッチ チャップチャップ ランランラン

かけましょ かばんを かあさんの
あとから ゆこゆこ かねがなる
ピッチピッチ チャップチャップ ランランラン

あらあら あのこは ずぶぬれだ
やなぎの ねかたで ないている
ピッチピッチ チャップチャップ ランランラン

かあさん ぼくのを かしましょか
きみきみ このかさ さしたまえ
ピッチピッチ チャップチャップ ランランラン

ぼくなら いいんだ かあさんの
おおきな じゃのめに はいってく
ピッチピッチ チャップチャップ ランランラン

次回は、扇谷一穂選書『カエルのおでかけ』
12時30〜 インスタライブにてお会いできたら。





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