ほんのよこみち

詩のような短編小説のようななにかを書きたいです。よろしくお願いします。ちなみに、読書記録や日常雑記はこちら→https://www.honno-yokomichi.com/

ぼんやり世界

世の中はいつもぼんやりしていて、鮮明だなんて言ってない。
眼鏡をかけても、コンタクトレンズを入れても、涙袋から大切なものがこぼれ落ちていく。
足下は遠く、キッチンは暗く、文庫本はつれない。
あなたはもう用済みですねって、図書館で本を読むことすらはじかれる現実に、豚の鳴き声ばかりが響く。
お金を出しなさい、そして世界に自分を合わせなさい。
わかってはいるけれど、工夫して生きることが怠惰だったら、頻繁

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半世紀の次へ

半世紀も生きるって、子どもの頃は遥か遠くのことだと思ってた。
半世紀生きると、子どもの頃が遥か遠くの幻影になった。
思い出そうとしても、ぼろぼろと崩れていく。
代わりに、時間の速さばかりが気持ちを追い立てる。

20歳の頃に読んでた小説を今でも好きだったり、
30歳の頃と同様に、今も子どものことで悩んでいたり、
40歳の頃の、生きていくのに精いっぱいな自分が哀しかったり、
50歳になってもちっとも

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ちょっと

単純作業をたくさんした。
単純なので、速さばかりが求められる。
でも、どんくさいって自分でわかっているから、ちょっと手の込んだ、速さよりも考える作業が入ってくれると、楽しい。

ただ、「ちょっと」なんだ。
手の込みすぎる仕事は、このあたまじゃついていけない。
まちがって、別の言語世界に首を突っ込んだりしたら、何もできなくて固まってしまう。
「ちょっと」の基準は、じぶん。
じぶん基準の積みかさねが、

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花びらが降る
花びらが舞う
重力に従うのか
風力に踊らされるのか
どちらが勝つと思う?

重力に抗うのは花びらには無理だけれど
風力はエネルギーをつくり出すよ
生まれた熱で、花も咲くよ
でも、重力はいのちのかたちをつくるよ
常に押さえつけられるからこそ、からだは強くなるよ
ああ 重力エネルギーってないね?

花びらは舞う
花びらは降る
重力でお湯を沸かせたら、最高じゃない?
黙っていても落ちていく

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時代

記憶の中を通り抜けていた映画に、街角でつまずく。
セカンドハウス。
ひとりで留守番することが怖かった、幼き日の夏。
スピルバーグのもたらした開国、なんて知らなかったよ。

組織生産の効率は、低迷する洋館。
在野の人たちが、動いた
技術革新が人を横に横につないでいく。

新しいものを、という呪縛は 古きものをつくり続ける。
おもしろいと信じるものがどんどん干からび
ウケるものがわからなくなる。
古家

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缶コーヒー

冬の深夜、病院の廊下で待つ死。
危ない、と言われた祖父の、残された時間。
談話室に集まる、近しい親族。
異常なざわめきに震えながら、コーヒーの自販機を探している。

仄暗い中で光る無機的な箱。
コインが吸い込まれていく音を聞きながら、
ありきたりなコーヒーのボタンを押しながら、
無神経な落下音に驚きながら、
スチール缶の熱さを持てあましながら、
上着のポケットや袖の厚みを総動員して、10本の缶コー

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