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ぼんやり世界

世の中はいつもぼんやりしていて、鮮明だなんて言ってない。
眼鏡をかけても、コンタクトレンズを入れても、涙袋から大切なものがこぼれ落ちていく。
足下は遠く、キッチンは暗く、文庫本はつれない。
あなたはもう用済みですねって、図書館で本を読むことすらはじかれる現実に、豚の鳴き声ばかりが響く。
お金を出しなさい、そして世界に自分を合わせなさい。
わかってはいるけれど、工夫して生きることが怠惰だったら、頻繁にバージョンアップを余儀なくされるソフトウェアでしかない人生。
効率って、誰かに言われると斃れていくんだよって、それでも君は「人間なんてそういうものさ」って舞台から降りていくんだろう。

自分という重力はとても強くて、その檻から抜け出すことはできない。
ただひとり、檻に閉じ込められる永遠を、思わない日はない。

今しかないって、今しかないって、今しかないって。
生きている歓び、なんて言葉自体が哀しい結末の導火線だって。
おぼろげな世界に手を伸ばしながら、檻の中をぐるぐる回るのだろう。
そうして無意味という屍を振り払いながら、ただの自分を行使するのだろう。

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