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私はあなたを助けてあげられる(日常の不思議ファイル 28)

ヒロさんとの本当の出会いは27の翌日、
私がロビーを横切る時、ヒロさんはそこで煙草を吸っていました。
ヒロさんは私と親子以上に離れていて70歳を過ぎていました。

私は近づくと、ヒロさんの顔を見て唐突に

「私はあなたを助けてあげられると思いますよ。」

なぜそんなことを言ったのか自分でも分かりません。
それを聞いてヒロさんは目が飛び出しそうなほどビックリした顔をしました。煙草が口から落っこちそうになっていました。

「…そうですか。本当に困っているのです。助けてくれますか?」

自分を抑えるようにヒロさんは静かに言いました。
その日はヒロさんたちN町4人は福島に換えることになっていたので
私は翌日にでも行くと言いましたが、

「明日…明日は用事があるので来週の月曜日に。」

実は後で聞いたら翌日に用事なんか無かったのだそうです。
あまりにも突然で心の準備が出来なかったので、ずらした…
と後で言われました。

そしてヒロさんはやはり悩んでいて
ついに死のう!と思って車で海に向かったそうです。

「車を降りて、砂浜を歩いていき、靴を脱いで海に入っていったんだ。
そしてだんだん深くなって、波が顔にかかるくらいまでになった時、
あなたの「では、月曜日に行きますね。」という声が聞こえたんだよ。」

そんな訳でひろさんは引き返し、海辺で近所の人へお土産を買って
戻ってきたのだそうです。

月曜日にN町に行ってヒロさんにあった時、そんな話を聞きました。
そしてヒロさんの悩みをいろいろ聞き、アドバイスをして
すべてが解決したようで、ヒロさんはすっかり元気になりました。

私からすれば死ぬほどのことではないような気がしたのですが
本人にしてみれば、周りが見えなくなってしまうほど追い詰められていた
ということなのかも知れません。

その日、町議会議員をされているご夫婦に紹介された時、

「海に行ったと聞いて、死にに行ったんじゃないかと心配していたんですよ。」

と本当に心配そうに言っていたのでかなり悩みは深かったのでしょう。

それ以来ヒロさんと私は歳こそ違うものの、まるで兄弟のような感覚で仲良くしてきました。

90歳になる前に、ヒロさんは亡くなってしまいました。
いろいろな不思議を見せてくれたな~と思うし 
ヒロさんが亡くなった後、
奥さんがヒロさんの縁故や出身や出会う前の過去を全く知らなかったり、、
今も謎に満ちたまま、本当は何者だったのか分からないままなのです。

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