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全員の成績が急上昇した理由(日常の不思議ファイル 10)

私たちの中学校は田舎にあって学力は低いレベルでした。
ところが意外なことに、町の学校に吸収合併され2年生になって最初の中間テストで、
成績上位150名に、私たち全員がその中に入ったのです。

私たちが住んでいたのは田畑が広がる田舎で
小学校の63人が、そのまま持ちあがって中学生になり、
田舎特有の、お互いが複雑に親類関係になっていたりして
まるで兄弟のようにすごしていました。

ところが、中学1年から2年に進級する時に、町の中学校に吸収合併されることに決まりました。
その結果、一学年がおよそ400人近いマンモス校に。

そしてその最初の中間テストで全員が素晴らしい成績を収めたのです。

それまで通っていた中学校は田畑の真ん中にあり、
ぽつんぽつんと農家が点在するようなところで
もちろん塾なんてありません。

学校が終わると、中学生になっていてもみんな遊びまわって
暗くなると家に帰って、家族と一緒にテレビを見て、寝る
という生活でした。

小学校の63人がそのまま中学1年生になったとき
急に町の学校と合併になるといってもピンときてはいませんでした。

ところが急に焦りだしたのが先生方です。

田舎の学校から来た生徒は学力が低い、
つまり先生方の指導のレベルが低い、ということになるというわけです。

先生と言っても地元出身の田舎の先生です。
いきなり詰め込み教育を始めました。

生徒のレベルなんてお構いなしです。

いくら口を酸っぱくしても勉強する習慣のない子たちですから
いきなり勉強好きになるはずもありません。

先生方は業を煮やして毎朝、テストをすることにしました。
そしてその結果を毎回、全員分の成績を廊下に貼りだしたのです。

それまで、成績のいい子は分かっていましたし、
低空飛行を続けている子も分かっていました。

ですが、63人中63番!と貼りだされてしまった子は
はっきりと『おまえはビリだ!』と現実をつきつけられてしまい
さすがに焦っている様子でした。

すると、予習さえすれば点が取れるテスト、
漢字の書き取りや、数学の小テスト(あらかじめテキストを渡されている)
を家で勉強してくるようになったのです。

その結果63番の子は、62、61、60番…とだんだん上がってきます。
当然ながら62番、61番だった子たちがその代わりビリ争いになり
またその子たちも焦って家で勉強するようになり…

全体が下から押し上げられるような形で少しずつ
全体が勉強をするようになって、取れる点数が増えてきました。

それ以外にも、先生方の本気の熱心さに圧倒され
授業中遊んでいる、なんて雰囲気には到底なるはずもなく、
みんな真剣に授業を聞くようになっていました。

そしてその結果が合併後の全員成績上位に食い込んだ、ということなのです。

その時、気がついたことがありました。
小学校の時から、真面目にコツコツ勉強を続け
田舎の学校では、トップではないものの、いつも成績上位だった男の子が、
上位150人の中でも、下の方だったことです。

それまで勉強なんて興味もなく成績に無頓着だった子たちは
貼りだされた素晴らしい結果に本人たちが一番驚いていました。

そしてそれが弾みになったんだと思います、
勉強するようになって、みんな成績をどんどん伸ばしていきました。

驚くくらい成績が急上昇した子が何人もいました。

なんて言うか、うまく表現できませんが、充分に情操が育って準備ができた何も無いまっさらなところに知識が入ってきたということなのか、「努力」という言葉では言い表せられない、才能のようなものがいっせいに開花するのを目の当たりにしたという気がします。

真面目にコツコツ君は、前にもまして勉強するようになったのですが、
上の下あたりをウロウロ…という感じで(それでも上位)、努力の割にはなかなか振るわないようです。

小学校まで勉強のべの字もなく遊び惚けていた子たちが
中学校でいきなり詰め込まれて一気に伸びたのを見て

自分も含めて、幼い時に全く勉強せずにのびのび育っていたから
勉強するようになった時、心の伸びしろが大きかったんだなぁと
私は中学2年生にして、悟ったのでした。


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