見出し画像

痛みが呼んでいる(日常の不思議ファイル 26)

自分自身に起こったことでなければ絶対信じなかっただろうことを書いてみようかと思います。

私自身は不思議と言われるものとは全く無縁に暮らしていたので、
そういう受け入れるのに苦労ししました。
だからこれを読んでいる方も、信じられなくても不思議はありません。

今から20年ほど前、暇な主婦としてボランティアなどをしていました。

ある時、誰かの痛みが呼んでる、という状態になったことがあります。
(今はそんなことはありません)

どういうことかと言うと、
その人のその場所に、手を当てたくて当てたくてたまらなくなったのです。
自分で頭がおかしくなったのじゃないかと思うほど強い衝動でした。

それは対象が知合いに限定されていましたから、

「肩が凝ったんじゃないの?やってあげるわ。」

などと言って相手の肩に手を置いてさする、といった感じです。

私はそれまでそういったものとは無縁で
大人になってからは他人の体に触れるということはありませんでしたので
自分としてはものすごいハードルが高かった覚えがあります。

顔は知っているけれど、名前はちょっと思い出せない人に

「足が痛いんじゃないですか? ちょっとさすりましょうか?」

と言った時はとても勇気が要りました。

「そうなの、なんだか痛くて座れなくなっちゃって…お願い。」

と言われ、そこに手を当ててさすっていると、
自分の方がほっとしてしまう感覚。相手の方も痛みが軽減されます。
手応えがあり、さするとそれがだんだん消えていく…そんな感じです。

女性は気に入った物を買った時、
「この子が私を呼んでいたのよ。」という言い方をすることがありますが、
まさにそれを強烈にした感じ、『痛みが呼んでいる』状態。

足をさすった人は後日、

「あの時はありがとう、あれからすっかり痛みが無くなっちゃった。」

と言われて、その時だけ楽になったのかなと思っていたので不思議でした。

そんなこんなで自分の変な衝動に悩まされていた頃、
お仲間さんたちと勉強会でピラミッド温泉に一泊しました。
現地集合、現地解散のあっさりしたものです。

その時、ピラミッド温泉のオーナーが足を引きずって歩いていました。
そりゃあもう、触りたくて触りたくて居ても立っても居られません。
でも、今までと違って全く知らない人です。

解散して皆が帰った後、思い切ってオーナーに声をかけてみました。

「足が痛いんですか?」

「そうなんだよ。」

「さすりましょうか?」

めちゃめちゃ勇気が要りました。すると、

「あ、やってくれるの? じゃ、こっちの部屋に来て。」

とあっさり受け入れてもらい、かなり安堵。

初めての体験。
足をさするとまるで硬い棒が入っているようです。
手応えを確かめながらしばらくさすっていると、だんだんほぐれてきました。

やっと人間の体らしい手応えになって終わりにすると、

「あなた、すごいね。…しばらくここに通って来なさい。」

と温泉の入場券を束でいただきました。

なんだかおかしくなってしまった自分を持て余していましたので
暗闇の中で何か道筋を示されたような気がしてとても嬉しかったのです。

それから毎週、ピラミッド温泉に行きました。
温泉に入って座敷でご飯をたべてくつろいでいると
オーナーである会長が来て、その場に居合わせた近所の人を紹介します。

私のことを

「この人はね、ある日突然能力がついて・・・云々。」

そうして具合の悪い人を連れてきては、

「この人はね、手がしびれているんだよ。ちょっとやってくれない?」

「この人はね、脚立から落ちて腕が痛くて伸びなくなっちゃったんだよ。」

と言うので、紹介された人は口々に

「よろしくお願いします。」と頭を下げます。

3分から5分くらいでしょうか、
患部をさすっていると手応えが変わってきます。

やってもらった人は

「ありがとうございます、しびれが取れました。」

「あれ?手が伸ばせる? ありがとうございます!」

などと言うので、
それまで平凡に生きてきた私は嬉しくて嬉しくてもっとしてあげたくなってしまうのでした。

そんなある日、フロントの人が来て

「お客さんが来てるからやってくれない?お金もらっちゃったし。」

青天の霹靂です!!

実は私が座敷でそんなことをやっているものだから評判になって
もともと温泉にいた気功師の方が辞めてしまったところでした。

漠然と、お金をもらったらこのチカラは無くなってしまうのではないか
と思っていたのですが、責任も感じ、後には引けないのでやることになりました。

施術室に行くと、患者さんはもうベッドに横になっています。

「よろしくお願いします。」と言うと無言…

いつもの何分間かではなく40分と決まっていたので、
集中し、一生懸命やって手応えもバッチリでした。

「終わりました。」と言うと、その方はふらっと立ち上がって、
無言のまま部屋に戻っていきました。

それまで大げさなくらい感謝感激雨あられに慣れていた私は「え?」
という感じでビックリしました。

そして考えたのです。

今までは『無料』だったからあんなに喜んでもらえたんだ、
今回は『お金をもらった』から良くなって【当たり前】なんだ!!

それまで皆さんに感謝されていい気になっていた私は
頭をガンと殴られたようなショックを受けました。

大きな音を立てて目からうろこが落ちた、という感じです。

ああなんて自分は世間知らずだったんだ!
いい気になってた!
世の中の『治療家』はみんなこうしているんだ!

それまでの私はボランティアで、今日は気が乗らないなどと
集中できないこともありました。
プロは違うんだ!そんな甘いことを言わずにやっているんだ!


それが今の自分の原点であり、ピラミッド温泉との出会いでした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?