【ココロコラム】「代案がないなら反対するな」は正しいのか?

今回はココロコラム『「代案がないなら反対するな」は正しいのか?』全4回のシリーズをお届けします。

以前からの本物の心理テストの読者の方から、サポートと一緒にリクエストいただきました。


「代案がないなら反対するな」は正しいのか?(1)~代案が必要な4つの条件とは?~

相手に言い負かされて、でもなんとなく納得できない。もやもやしてしまう。そんなことはありませんか?
そういうときはたいてい、相手の理屈におかしなところがあります。強弁や詭弁なのです。

今回は、「代案がないなら反対するな」「反対するなら代案を出せ」という主張について考えてみましょう。
とてもよく使われますね。

たとえば、会議でA案が出たとします。
あなたはA案はよくないと思って反対しました。
すると、A案を提案した人が、「A案がダメだと言うのなら、あなたには何か代案があるのですか?」と問い質してきます。
あなたには別の案はありません。

すると、A案を出した人は、「代案があるならともかく、ないのに反対するとは、どういうことですか。反対するなら、代案を出してください」とあなたを責めます。
それで、あなたは黙らされてしまいます。
他の人たちも、A案がいいと思っているわけではないけれども、代案がないので反対を言い出しにくく、そのままA案が通ることに。

こういうこと、よくありませんか?
家庭内での言い合いでもよく出てくるパターンですし、沖縄の普天間の米軍基地を辺野古に移設するというような国レベルの大きな問題でも堂々とこの強弁が登場します。
物事を強引に押し切ろうとする人が、とてもよく使うパターンです。

さて、この主張のどこが論理的に間違っているのでしょうか?
「代案がないなら反対するな」「反対するなら代案を出せ」という主張を、本当に正当なものだと思い込んでいる人も少なくありません。
なぜかというと、これが正しい場合もありうるからです。

それは、次の4つの条件が満たされているときです。
1)現状のままでは、問題がある。
2)問題解決を急ぐ必要があり、時間が残されていない。
3)A案には、現状を改善する効果がある。
4)A案には、別の大きな問題がない。

この4つがすべて満たされているときには、A案に多少問題があるとしても、代案がない場合には、A案を採用するしかありません。

たとえば、
1)病気になった。(現状に問題がある)
2)早く治療しないと、命が危ない。(急ぐ必要がある)
3)新薬には治療効果がある。(現状を改善できる)
4)新薬には重大な副作用がないし、他の問題もない。(別の大きな問題を引き起こさない)
という場合には、「新薬を使用する」という案が妥当で、これに反対する場合には、代案が必要です。なにしろ、代案がなければ、死んでしまいます。

しかし、逆に言うと、この4つの条件のうち、ひとつでもそろっていないのなら、反対するのに代案は必要ではありません。
代案はまったくなくても、ただ反対していいのです。

たとえば、いちばんよくあるのは、
4)新薬には重大な副作用がないし、他の問題もない。(別の大きな問題を引き起こさない)
という条件が満たされていない場合でしょう。
いくら新薬に治療効果があっても、重大な副作用があったのではなんにもなりません。

たとえば、新薬の効果によって肺炎で死ぬことは免れたとしても、新薬の副作用によって心臓麻痺で死んでしまうのでは、なんにもなりません。
ですから、代案(他の治療法)がないとしても、「この新薬を使うのは反対」と主張したとしても、何らおかしくありません。

「じゃあ、ただ反対して、新薬を使わないことにして、患者を見殺しにするのか?」と疑問に思われるかもしれません。
「そんなバカなことはできないから、新薬に反対するのなら、代案が必要なのでは?」と。
ここがよく間違われる大切なポイントです。
次回、ご説明させていただきます。

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