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【ココロコラム】幸運を呼ぶ考え方

幸運を呼ぶ考え方(1)-レジリエンスの紹介と回復のしやすさのポイント

精神科医をある程度やっていると、一度病気になっても、立ち直りが早い人と、ずっと続いてしまう人の差がかなりあることを痛感します。それは、生物学的な体質もありますが、考え方によってもかなり左右されます。近年、精神医学では、回復しやすさを【レジリエンス】と名づけて、注目しています。【レジリエンス】とは柔軟性やしなやかさといった意味です。それをすべてここで解説するのはなかなか難しいので、私なりに日々実感している精神のしなやかさ、幸運を呼ぶ考え方を取り上げていきます。

もともと、人間の考え方は直近に起こったことにすごく影響されやすい特質があります。誰でも、嬉しいことがあれば楽しい気分になりますし、仕事で失敗したり怒られたりすればいやな気分になります。問題は、これを引きずるかどうか。

特に、嫌な気分を長続きさせないのが、精神の回復のしやすさのひとつのポイントです。嫌な気分でなにか人生の重大な決断をしても、だいたい自分を過小評価したり、他人をオーバーに見積もったりして、暗めの結論が出ます。「こんなことが起こったらどうしよう」などと、起こりもしないことを心配して、取り越し苦労をしがちです。そして「やっぱり私はダメだ」という考えになってしまう。自分がダメだと思いこめば、世の中がつまらなく見えてしまいますし、ますます悪いことが続きやすくなってしまいます。

幸運を呼ぶには、嫌なことがあった場合は、さっさと気分転換をするなどして気持ちを上手く発散させ、嫌な気分のまま人生の重大な決断をしないことです。逆に、いい気分のときはなるべく長く味わい、時々思い出すなどして、いい気分の記憶をよくよく覚えておくことも大切です。

また、嫌な気分でもないのに「なんか嫌な予感がする」とか「縁起が悪い」とか「どうせこの先ろくなことがない」などというのは、やめましょう。日本人は慎重なせいか、先のことをやや暗めに見積もっておいて、いざやってみると思いの外うまく行ったというのを好みます。そのため、ものの先行きを暗く言う人もけっこういます。私も過去はそうだったように思います。これは、自ら不幸を呼ぶようなものです。絶対にやめたほうがよいでしょう。私の経験上でも、こう言うことを始終言っている人が何人かいましたが、みな能力が高いのにあまり幸福になっているとは言いがたい。わざわざ幸運の芽を言葉で潰してしまうようなものです。

ここで、人間の考えは目先のできごとに影響されることを思い出しましょう。目先の一回のことに、気分は本当に左右されやすいものです。そこで、よいできごとがあり、よい気分の場合は「ますますいいことが起こるだろう」とか「なんかいい予感がする」など、十分にハッピーな気分に浸る。後からも思い出す。また、実際に「楽しいな」「いい気分だな」と口に出して言う(心のなかででもかまいません)ことを習慣にしましょう。「いいこと日記」も、そのためのツールです。じわじわ効いてくるはずです。

それと同時に、嫌なことは「どうせこの一回だけだ」と毎回思うようにしましょう。一回しか続かないと自分の中で思い込むことがポイントです。絶対に、「この先もいやなことが続くだろう」に類したことを思ってはいけません。そして、自分の内面の考察などはしないようにして、嵐が過ぎ去るのをひたすら待ちましょう。こう考えることで、心のダメージが小さくなります。

いい思いはなるべく記憶に残し、嫌なことはこの一回しか続かないと思い込む。これが、幸運を呼ぶ考え方の大きな要素だと思います。

(精神科医・西村鋭介)

今回のココロコラム「幸運を呼ぶ考え方」は、全3回の連載です。続きの2・3回目は引き続き有料部分に記載しております。ご興味をもたれた方はご購入の上ご覧ください。

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