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【ココロコラム】掃除のススメ

精神科医として働いていると、日々いろいろな人の家庭や職場の事情を耳にします。さまざまな人の話を日常で聞いているうちに最近一つ思うことがありました。それは、掃除が行き届いている人は、幸福を呼びやすいのではないかということです。

引きこもりやアルコール依存症や統合失調症の人の部屋は、ほとんどの場合乱雑で、足の踏み入れようもない場合がよくあります。それに対し、掃除をこまめにやる人は、割合精神の病気になりにくいと思いますし、なっても回復が早いような気がします。精神科という枠を離れても、一般の生活でも、部屋や職場など、自分がいる空間を掃除しておくと、何かと生きやすいような気がします。仕事のできる人のオフィスはよく整理されていると思いますし、モテる人の部屋はきれいなことが多いと思います。

これは心理学的にも理にかなっています。清潔で快適な部屋にいたときと、不快で片付いていない部屋にいるときとでは、同じ人でも、評価が変わってきます。清潔な空間のほうが、評価する場合もされる場合も、高く見積もられますし、片付いていない空間の場合は低く見られます。

部屋の清潔度が、いつのまにか個人の評価や感情にも関わっているのです。これを【連合の法則】といいます。読者の皆さんも、疲れきって帰宅し、家に帰ってきてまったく片付いていない部屋を見ると、ますます気が滅入った経験をお持ちの方もいるかと思います。逆に、一流のお店ほど、掃除が行き届いていて、見ていて気分がさらによくなるものです。日ごろから、自分の周りをなるべく掃除するように心がけると、精神面でも、それ以外の面でも得をすることがたくさんあると思います。

掃除のコツですが、これは女性誌などにたくさん出ているので、それを参照していただいたほうが早いかもしれません。一応、面倒くさがりな人に向いた掃除の方法をいくつか述べます。

まず、一年以上使っていないものは捨てることです。「もしかしたら使うかも・・」という思いが、ますますあなたの部屋を狭く、乱雑にしていきます。机でもたんすでも、目に付いたところを掃除してみて、それに当たるものがあったら、どんどん捨てる(ネットオークションで売る手もあるでしょう)ことをお勧めします。モノは放っておけば増える一方です。意識して捨てることで、ココロも軽くなります。

もう一つは、何か一つモノを買ったら、何かを一つ捨てることです。コレクションしているようなものは別でしょうが、そうでない限り、場所ふさぎにしかなっていないものが必ずあるはず。そういうものをどんどん捨てていくことです。
自然科学で【エントロピー】という言葉があります。「乱雑さ」のことです。

これは、自然のままにしておけば必ず増大していきます。これは個人の部屋でも同じこと。自然に任せていると、しだいに散らかり度合いが増してきて、なかなか片付ける気がしなくなってきてしまい、部屋の空気がどんよりしてきてしまいます。

ストレスを発散するのも、いわばココロの掃除でしょう。しかし、えてして人は、買い物で散財したり海外旅行に行ったり、車を飛ばしたりというような、「大掃除」ばかりをしている傾向があります。もちろん大掃除も必要でしょうが、小さな掃除を積み重ねることは、それ以上に大切です。ふだんご紹介している「ココロの燃費を上げる」方法などは、それにあたります。ココロだけではなく、物理的に部屋や職場を片付けるのを心がけてみましょう。数ヶ月もやってみれば、かなりの差を実感できるはずです。

(精神科医・西村鋭介)

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