見出し画像

【ココロコラム】「わからないことには口を出すな」に負けるな!


今はネット上でさまざまなやりとりがされていて、そこでは議論が起きることもあります。
しかし、実りのある議論は、あまり見かけません。

たいていは、
「あの黒いのは虫かな?」
「いや、黒豆だ」
「あっ、動いた。やっぱり黒豆だ」
「風で動いただけだ。黒豆だ」
というような「動いても黒豆」式の議論のことが多いです。
こうなると、声高に言いつのるほうが勝って、あきれてやめたほうが負けたかのようになってしまいがちです。

こうした不毛な疑問の中で、気になるものについて、いくつか取り上げてみたいと思います。
まずは、「ちゃんと勉強してから言え」という主張です。
これ、よく目にしますね。
たとえば、科学的な話などになると、「それは間違ってます。そんなことも知らずに、よく発言しましたね。ちゃんと勉強してから発言しましょう」というような書き込みをする人がいます。

これは、正論に聞こえます。
いい加減な知識で発言するべきではないと思わせる力があります。
しかし、現実問題として、そこまでちゃんと勉強できるわけはありません。
つまり、「ちゃんと勉強してから発言しましょう」は、実質的には、発言封じに他なりません。

真面目な人ほど、こういう発言をまともに受けとめて、「それはそうだ。自分は勉強不足だ。黙っておこう」と、口を閉ざしてしまいます。
そうすると、どうなるかと言うと、黙っていない過激な人たちしか発言しなくなり、議論がますますエキサイトして、極端な危ないものとなっていきます。

こういうときに黙ってしまうような、ごく普通の真面目な人たちの意見こそ、もっと取り上げられるべきであるにもかかわらずです。

「でも、不確かな知識で意見を言ってみても仕方ないのでは。間違っているといけないし」と思うかもしれません。

しかし、たとえ無知な発言であったとしても、それに対して説明する人がいたり、そこから議論が始まったりして、いろいろなことがわかっていきます。ですから、決してムダではありませんし、有意義なのです。

「そんなこともわからないのに発言するな」などと説明を拒否するような人は、その人のほうに問題があるわけで、それで黙っていては、そういう問題のある人の天下になってしまいます。

でも、多くの人は黙ってしまいがちです。いわゆる「サイレント・マジョリティ(物言わぬ多数派)」です。

「サイレント・マジョリティ」は、「ノイジー・マイノリティ(声高な少数派)」に簡単に利用されていまいます。
「サイレント・マジョリティ」をWikipediaで調べると、アメリカと日本の選挙の例が出てきます。

ニクソン大統領は、ベトナム戦争反対の運動が起きたときに、「大多数のアメリカ人は反対運動をしていない。つまり戦争賛成なんだ」と言いました。
実際には、反対運動をしていない人の中には、賛成の人もいれば反対の人もいたでしょう。でも、黙っていれば、それだけで賛成派にされてしまうのです。
いじめを見ても黙っていれば、いじめに加担したことになるのと同じです。

つまり、中立を保ち、間違ったことをしたくないと思っていても、「サイレント・マジョリティ」になってしまうと、それは逆に無理になるのです。

中立を保ちたければ、間違ったことをしたくなければ、それを主張しなければなりません。
真面目でおとなしい人には難しいことですが。
「わからないのに口を出すな」は「開けゴマ」の逆で、口封じの呪文です。そんな呪文に負けないようにしてください。

なお、自分が「わからないのに口を出すな」と言いたくなることもあるでしょうが、それは口封じになってしまうので、ぐっとこらえましょう。

(津田秀樹)


お読みになって面白いと思ったり、参考になったら下記からサポートをお願いいたします。 サポートでご支援いただいた収益につきましては、今後の記事の執筆料や運営費に充当させていただきます。