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激アツに対して出来ることとは 2023/06/17





  西暦2088年、日本。発展し続ける在庫管理システムと深刻を極めるモノ不足により、万引きの難易度は有史以来のピークを迎えることとなった。今や1個70円のフィリックスガム(うち55円が税金)ひとつくすねることすら大手銀行の金庫破りと同程度の難易度を誇るとされている。これにより国内での軽犯罪率の発生率はそれなりに低下し、ドン・キホーテ2ドスを始めとする小売業を営む企業は商品ロスの削減に成功し、企業イメージ向上による流通の活発化を促した。
  しかし今、こうした万引き高難易度化によって新たな問題が顕在化している。それは“万引きのスポーツ化”である。
  現代で万引きをするに辺り、求められる素養は非常に多い。高度なセキュリティシステムへの造詣、適切なルートと手順で犯行に及ぶためのフィジカル、そしてそれらの違法行為を前にしても揺るがぬメンタル。この歪んだ心技体は金と時間を持て余したごく一部の富裕層の目に止まり、彼らを駆り立てた。
  我々の取材に対し、夢グループ現代表の石田・ボルシャック・NEXはこう語った。

「知っての通り、最早万引きはスポーツなんだ。それもただのスポーツじゃない。エクストリームスポーツ……いいや、これでは言葉が足りないな。ではこれではどうだろう、エクストリームExtremeイリーガルIllegalスポーツSports。我々富めるものは人類の先導者としてこのEISに挑む責務がある。故に私はこうしてドンキ2ドスで全然面白くないちょっとスケベな雑貨を万引きしているんだ。分かるね?」
 
この取材の後、当時の音声が決定的な証拠となり石田は逮捕。公判もその日のうちに行われ、絞首刑6回、Dlsiteの購入リストをA4コピーして地元の回覧板に載せ刑(1回につき既存の死刑3回分に相当)、電気椅子2回の計11回の死刑、所謂オーバーキル刑に処されることとなった。
  高度に発達した技術に対する犯罪行為がスポーツと称されてしまう、そんな混迷の時代がやって来てしまっている。そんな時代だからこそ、求めるものに対して正当な対価を支払う、そんな取引の原点とも言えるルールを今一度啓蒙する必要があると考える。

日本経済新聞 第736411号 3ページより抜粋



・すみません、今日はお休みだったんですけどあまりにも外が暑すぎて外出出来なかったので“存在しない新聞記事”を書いて無理矢理日記にしました。






・クソほど暑かったけど、猫に自分のものを勝手に私物化されるという経験が一日に二度も出来たので休日としては結構いい感じだったかもしれません。

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