テーマ学習01: テーマ学習の設計と実践(前編)

問題意識

我が家の三人の子どもたちはホームスクーリングをしています。ホームスクーリングの場合、意識しないと家族以外の他人に表現する機会が得られません。一番上の子は習い事やプログラミング関連の発表などで、表現することには慣れていました。しかし、下の二人は興味があっても習い事には通いたがらないこともあり、表現する機会を得られているとは言い難い状態です。表現する喜びを経験し、力と自信を身につけてほしいとの思いから、表現する機会を作ることにしました。また、父親である筆者自身もアウトプットのトレーニング不足を痛感していたため、一緒に取り組むことにしました。

目的の確認と説明

父親(=筆者)主催で「テーマ学習」を設定、表現する機会を実験的に作ってみよう!と家族に相談しました。妻は「いいじゃない!」と乗り気でしたが、下二人は「父はまた何を言い出しているのだろうか...」とやや警戒気味。信用がないのは、父の不徳の致すところ。それでも必要性は変わりませんから、正直に目的・ねらいを説明してみました。

「いいかい。将来何をするにしても、感謝することと人に貢献することを忘れてはいけない。貢献するためには、どんな仕事であれ、持っているものを表現して、誰かに伝える必要がある。伝えることに慣れていると、スムーズにことが運びやすくなる。今のうちに練習しておくと、いいと思うよ。テーマは自由だから、好きなことやしてみたいこと、普段していることから選んでくれていいよ。」

それでも疑心暗鬼が晴れない子どもたち。筆者自身の伝え、気持ちを動かす能力も向上の余地が大きくあります。「なるべく楽しくできるように工夫するから」と話して、なんとか同意してくれました。本当は、子どもから「これしたい!」という形が理想なのですが。まぁ、親が突然言い出すのだから、しょうがない。やってみないと理解してもらえないということで、無理矢理感を理解しつつも長男・次女と共にスタートです。

プロセス

以下のプロセスで進めてみました。仮でもいいので素早く始めて、生のフィードバックを早く得ることを意識しました。可能な限り自由度を確保し、子どもが自分で選び決めることを求めました。

1. テーマ設定
2. 対象設定
3. アウトプット設定
4. 計画
5. 実践(1週目)ネタ集め、ネタ作り、プロトタイプ作成
6. レビュー
7. 実践(2週目)手直し、編集
8. 公開
9. ふりかえり

1. テーマ設定

「企画会議」(仮)と称して、2週間の始まりにテーマ・対象・アウトプットのイメージを話し合います。今のところ平均20分程度。事前にテーマを考えてもらうことで、あまり時間をかけないようにします(飽きちゃうからね)。テーマは可能な限り子供自身が興味を持てること。伝える対象は自分以外の誰か、なるべく家族外の人。アウトプットイメージは、フォーマットや具体的な内容の形を相談します。
長男は「読書感想文」、次女は「大好きなbtsのダンス」をテーマに選びました。


2. 対象設定

「伝える相手は誰にしてみようか?」と問いかけます。仮でいいよとします。子どもたちは結局、途中で切り替えました。長男は「両親」、次女は「おにいちゃん(長男)」(のちにオーディションの審査員に変更)としました。
「自分が本当に好きなテーマは出したくない」、「匿名であれば世界に公開してもいい」と言っていました。本人の思いを尊重して、それらのテーマは独自に自由にやってもらうように伝えました。テーマ学習の枠組みについてはどこかで親がアウトプットを確認したいので、条件に合わなかったためです。

3. アウトプット設定

冒頭で対象とアウトプットを仮でも定めることで、ゴールイメージを作るようにしました。あいまいなゴールだと、時間や労力が分散されてしまい、テンションが続きません。途中で迷路に迷い込んでガス欠になることを避けるため、始める前に仮でいいからアウトプットの形と媒体を決めてもらいました。出来上がりをイメージすることで、過程での無駄が減りスピードが上がることを期待するからです。

テーマは「〜?」の形にしてクリアにするように指導しました。課題と進む方向を明らかにするためです。

 ● 当初設定したテーマ
 - 長男:「二年間の休暇を漢字2文字であらわすと?」
 - 次女:「韓国嫌いな兄に韓国の魅力を伝えるには?」

2週間という期間を定めて、期間内に仕上げるという感覚に慣れるようにしました。期間は、Scrumのスプリントやコンサルタントがインプットに使う期間を参考にしました。

4. 計画

2週間をどのように使うか。何をどの順番で行うか。お金やモノなど必要なものはなにか。段取りとリソース配分を始めに行います。1週間後の週末を中間レビューに定め、それまでに一旦作ってみようということにしました。


5. 実践(1週目) ネタ集め、ネタ作り、プロトタイプ作成

長男はひたすら本を読んでいました。もともと本はよく読む方です。しかし読書感想文はほとんど書いたことがありません。昔、ドラえもんの漫画つきの「読書感想文の書き方」本を購入しましたが、その時も読むだけで、書くところまではいきませんでした。大人でも本を読むことは好きでも、感想文を書くのは厳しい。それを、漢字2文字にまとめ、補足説明をつけるという自分で決めたスタイルに踏み出したことは大きな変化だと思います。アウトプットのことは一旦忘れて、まずは本の世界にどっぷり浸かっている様子でした。

次女は、オーディション応募用のダンスの動画を撮り始めました。コロナ自粛期間にbtsとそのダンスに出会い、ずっと動画を見ながらダンスの練習を続けてきました。半年でここまで気持ちが変わり、踊れるようになるものなのかと驚くばかりです。オーディションは前から情報を調べていて応募の意向はありました。動画の試し撮りも数度トライしていたようですが、室内では狭く見切れてしまう問題があり、そこから前進できずにいました。今回のテーマ学習を機会に再度トライすることに。デジカメ、iPad、スマホと試し、とりあえず仮録りしてしまうことをすすめました。一通りプロセスを通すことで形にすることが大切だと考えたからです。
スマホで撮影した動画を、Macに取り込みiMovieで加工します。まったく初めての作業なので、オススメを伝えつつイメージを確かめながら、一緒に形にします。タイトルからクロスディゾルブ(フェード)効果でダンス映像が始まる様子に、目を輝かせている様子。「あぁ、やってよかったな」と思った次第です。Youtubeのアップまでを一緒に行い「ほら、いつも見ているYoutubeと同じでしょ?本当にYouTubeに乗せられたんだよ!」と小さな成果と前進を喜び合いました。仮でもそこそこ見られるクオリティだったので、本人許可のもと妻経由で親戚にLINEでリンクを送り様子を見ることに。三者三様の反応がありましたが、どれも貴重なフィードバックです。どのような気持ちかは聞きそびれましたが、今までほとんど見せたことがなかった自分のダンスに驚き喜んでくれる様子を見て、ちょっと気持ちが変わったのではないかと想像します。

後編へ続く

中間ふりかえり・後半1週間と結果・最後の振り返りについては、後編として別稿でお届けいたします。どうぞお楽しみに!

テーマ学習を始めた、父としての思い

そんなに暇そうにしているなら&せっかく時間がたくさん取れる若いうち・コロナ自粛期間のうちに、自分がしたいことを思う存分してくれたらいい。
テレビやマンガだって、思う存分楽しめばいい。ただ、そこで得られたものを表現するだけでいい。
自由きままに過ごす時間を奪い去る目的ではなく、楽しみ・喜びをより深いレベルまで追求してほしいという思いです。研究をしなさいという意味ではなく、とことん追求していくという噛むほどにおいしいプロセスの楽しみ方を体験してほしい、そんな思いで取り組んでいます。

表現することはしんどい。生みの苦しみがあります。登山や泳ぐことのように、ゴールに至る過程で途方に暮れることもしばしばです。子どもたちが嫌がるのもわかります。「人によって違う。表現が好きな人はいいが、そうじゃない人だっている」という考え方はたしかに理解できます。

同時に、やってみないとわからない、ということがあるのも真実だと思います。大変さとセットで喜びと学ぶことが深まると考えています。

まして我が家の場合は、ホームスクーリング・コロナ禍において そのチャンスの大部分を提供できるのが親です。親が何もしないことは責任放棄になってしまう。過干渉という やりすぎもよくないけれど、環境や機会を提供しないのは問題であろうと思うわけです。もちろん、子どもに強いストレス拒絶反応が出そうなら続ける意味もないです。その場合、心を守るため、すぐストップします。

なぜこのnoteを書こうと思ったの?

子どものモデルとなるため、自分自身のアウトプット力向上のため、また家庭教育・家庭学習に共に取り組む仲間・ご興味のある皆様への参考となればと思い書きました。お読みいただければわかりますが、取り組むプロセスを書いています。悪戦苦闘して悩み工夫しようとする内容をシェアできれば幸いです。

ダイエットやジョギングなど、仲間がいると続けやすいと言われます。テーマ学習を親も一緒に行うことは、子どものためであると同時に、親自身の成長のためでもあります。親も子どもに助けられています。そういう意味では一方的な関係ではなく、それぞれの道を行く同志であり、助け合う関係であるといえます。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
後編、そしてすでに始まっている2サイクル目以降もお楽しみに!

後編はこちらからどうぞ▼


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