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蓬莱の妃 1章2節 《水の章》 §7



前振り


いつも来て戴きありがとうございます。

非常に個人的な話になりますが、昨日ようやく『毒抜き』という事でちょっと長めのウォーキングがてらの温泉施設探訪をしてきました。
本当ならそこで久しぶりにサウナに入って整いたかったのですが、施設側にて何かしらの『アクシデント』が有ったらしく入ることが出来ませんでした。
未だに体に『毒』が残っている感覚が有ったものですから、正直サウナは苦手なのですが入って少しでも抜きたかったという気分が有ったので残念と言えば残念でした。
それでも帰りは通ったことがない道の散策をでき、新たなる発見が出来た事は何よりでした。

それにしても昼食を摂る為に入ったコメダ珈琲店で注文したフィッシュバーガーは反則級の大きさで笑ってしまいました。『M』のバーガー屋さんのものの2.5倍ぐらいのボリュームは有ったかなと。

因みに今回のセクションのボリュームは1万字ちょっとの文章になりました。ちょっと多めですが、お読み戴ければ幸いです。


とりあえず今回の前振りは以上になります。
前セクション(§6)は以下にありますので、まだご覧になられていない方はご覧ください。



登場人物


 宮内 咲夜(みやうち さくや):宮内家の次女。帝都東京大学出身で都内私立大学にて薬学研究の分野で大学院生をしながら個人企業の実質的代表者及び魔法使い研究SNSカンパニー『ウィッチ ド ブリュー』代表者。容貌は姉とは双子ながらも正反対の可愛らしさのある女性だが、言葉遣いに関して(特に姉に対して)は激辛でその他の人に対しては本人から壁を作っている節もある。彼女も姉と同様に能力者であり『仲介者』として活動もする事もある。

 黒田 光流(くろだ みつる):姉妹の名付け親であり二人の世話人。二人の世話以外にも地元の観光協会認定のトレッキングコンシェルジュ。父親の影響で発掘調査や古文書解読も。一応能力者であるが未開発。

 矢作 夏美(やはぎ なつみ):輝夜のモデルとして先輩であり「お酒の師匠」の一人である。モデルとしては日本国内でトップクラスの人気者。輝夜のモデル仕事は大抵彼女からの依頼によるもの。趣味は旅行と地酒巡りで輝夜と(と言うより黒田と)出会う迄は専らバイクでの旅行しかしなかったが、黒田から電車での旅行の話を聴いて(洗脳され)すっかり電車での旅行にもズッポリハマっている最中。故に黒田の事を『ししょー』と呼んでいる。

 春原 芽(すのはら めい):輝夜のモデルとして若干後輩であり友人。趣味はソロキャン、スピ巡り、遺跡巡り。彼女も黒田から影響され乗り鉄と言う趣味に目醒めた。公には隠しているが元々密教系の「能力者」でもあり、日々の鍛錬の一連という事で時折輝夜とフィジカルトレーニングをする事も有る。術式の能力をさることながら格闘センスは能力者としてトップクラスとの事(輝夜談)。後日、輝夜の「付き人兼世話役」の一人として過ごすことになる。



§7 事前の計画は大事ですから【黒田語り】


《輝夜と手嶋晴が埼玉での調査に出かけた後、黒田、咲夜、矢作夏美、春原芽の四人は旧小山村に隠れ住んでいるハーフと言われている人達を救助に行くことになった。》


 輝夜お嬢様と晴さんが出発してから5分後ぐらいに私達は旧小山村に向けて出発しました。

 助手席でシートに深々とめり込めせながら座っている咲夜お嬢様が、いつも以上に気合が入っているのを私は隣に居て強く感じていました。

 彼女はここぞと言う時には何故か両手の指を無意識にマッサージをしている『癖』が昔から有ります。
 今も左手の人差し指に赤のジェルネイルを丁寧に塗り、その塗り終わった指の両サイドから右手でゆっくりとマッサージをしていた。
 以前何度かこういう行為を何故していたのかを訊いた時『・・・ん、無意識です。それしか言いようがありません。』と言う答えを何れの時でも返って来たので、私も理由を訊かなくなりました。

 姉妹でこの車を使って移動する時には姉の輝夜お嬢様が後部座席に本職のモデルならではの美脚を思いっきり伸ばして後部座席一列分を使って乗るのが日常になっており、咲夜お嬢様は必然的に助手席に乗ることになっています。
 ただ、独りの場合には姉の真似をして脚を伸ばして座る事もしようとしてみたものの大抵慣れている助手席に座っているので今も自然に私の隣にいます。

 実は姉以上のマイペースで如何なる場合でも冷静な判断が咲夜お嬢様でも、流石に今回の晴さんの突然の訪問には驚きを隠し切れなかったみたいで、車の中という身内だけの状況になってつい心の声を漏らしていました。

 「・・・まさか晴さんが今日来られるなんて正直想像もつきませんでした。本当に昨日お姉様とお会いしたかったのですね。
 流石ファンクラブ会長と言いたいのですけど・・・まぁ普段周りの方々にも配慮させている時分どうかなと思う節もありますけど。それだけあの更来紗さんから邪魔されてしかも2ショット写真を送りつけられた事がかえって晴さんに火をつけたのかも知れませんね。
 ・・・ぃゃガチなファンって本当に恐いと私も人伝には聞いていましたけど・・・すごい情念です。いやはや感心します。」

 「確か先程お話しを伺った時に『何らかの計略で云々・・・』と言ってましたから余程悔しかったのでしょう。
 晴さんは私に以前からおりをみて何度も富士吉田市の方に行きたいですとも仰っておりましたから、まぁそれが偶々今日になってしまったと言う感じかなと私は受け取っております。
 私の方でもう一台車を頼む必要が無くなり独りで無人カーで行くより心強いかと思われるかなと。輝夜お嬢様にとっては結果オーライかと思われますけど。」

 私の若干白々しい台詞に変な表情を浮かべジト目で睨みつけながら彼女は私に問いただしてきた。

 「はぁ、そーですか。・・・で黒田さんは私達が帰ってくる前に早津妃社長・・・でしょうか、確か能力者のハーフさんでしたけど、その方から何かしらの入れ知恵をされたのでしょうか?
 確か今日は夏美さんの妹さんも来られたので、てっきり紗夜子さんと打ち合わせで来ただけかと思ったのですけど・・・本当ですか?」

 「・・・お嬢様、別に隠し事とか他人には言えない入れ知恵をされた訳では御座いませんよ。変な勘繰りなされないように願います。

 要点だけ述べさせて戴きますと、本人が予言がましい言い方にはなりましたが輝夜お嬢様が羽川の現場調査に行く事になるでしょうとか、あと今回参加して戴いている春原さんについて『何かと役に立ちそうだから連れて行っては如何でしょうか』と言っていたぐらいです。」

 「私も春原さんの件については以前からお姉様から春原さんと『何らかの修行』をしていると言っていたので、お姉様は仰ってはいませんでしたけどその時に春原さんは能力者と言う事は気がついてはいました。
 でもまさか夏美さんも気がついていたとは・・・いくら隣人の能力者さんからのアドバイスが有ったからと言っても普通判りません。
 強ち夏美さんって能力者じゃないのかなと思いますけど。」

 「夏美嬢は特段お嬢様たちのような特殊呪術的『能力者』としての力が無くても、この国のトップクラスのファッションモデルでかつ一流の二輪ライダーとしても活躍しているだけでも十分能力を持っているお嬢さんだと思いますよ。
 それにうちののんべんだらりの輝夜お嬢様の手綱を自由自在に操作できるだけでも能力者として資格有りますよ。」

 私のこの言葉を聞いて若干苦笑気味に肩を震わせながら首を縦に振りながら同意していた。

 話をしている内にこの県の最重要幹線道路である国道20号にぶち当たる交差点まで到達して、この国道を抜けたちょっと先にあるコンビニに立ち寄って最終確認をしようとバイカーの二人に連絡をし、二人が合意したので交差点を抜けた先にあるコンビニ兼シェアスペースに併設している大きめの駐車場に止まった。

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8,587字
既刊している電子書籍が1記事1万字以内程度に収まるように再編集しておりますので空いた時間に読めます。

富士吉田生まれ育ちの美人姉妹で能力者である宮内輝夜・咲夜姉妹が活躍するファンタジー小説の本編の1章《水の章》2節目。 姉妹が前日調査で出か…

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