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蓬莱の妃 1章2節 《水の章》 §6



登場人物


 宮内 輝夜(みやうち かがや):富士吉田市の代表的神社の一つである旧社明香神社の宮司をしている宮内家の長女。普段はニート女子をしているが、この地の古代にあったとされる『富士王国文明』の調査・発掘を行っている。その一方自らの美貌が災いにより(本人談)雑誌等にてファッションモデルをしている。元々宮内家の血筋として受け継がれているとされる能力により『仲介者』という仕事も行っている。能力において日本でも世界的でもトップクラス。

 手嶋 晴(てじま はれ):手嶋屋HLD代表取締役社長であり江戸時代から続いている手嶋屋酒蔵の後継者。非公認の宮内輝夜のファンクラブ会長でありモデル業界でもタニマチ的存在で、輝夜が撮影で都内等に来る際には必ず差し入れをしてあくまでも「影から見守っている」ようなスタンスでいる。公では極めて「切れ者」として恐れられているが輝夜に関しては超甘々な態度しかとれない女性。現在未婚で容姿は若干ふくよかであるけど美人なので常に結婚相手を紹介される。しかし輝夜が居れば問題ないので結婚に関しては全く考えていない。

 城戸 正三(きど しょうぞう):現在旧小山村の廃トンネルおよび近隣の隠れ施設にて人造人間を開発及び製作をしている科学者グループの責任者。元帝都東京大生物学教授だが倫理的に問題あったために学会と学校から追放されてしまった。だが本人は復讐より完璧な人造人間を作り出す方に専らの関心と情熱を持っている。無論人間としての倫理観は皆無。との事だが嘗て大学教授だった頃は学生に対しておおらかで【学校一のコーヒーマイスター】として尊敬されていた。



§6 私より色々知っていそうです【輝夜語り】


《家での話し合いで輝夜は埼玉県の現場に行く事になったが、運よく家に彼女のファンクラブの会長である手嶋晴が来た。実は輝夜は晴とは『初対面』だったが、黒田の依頼に輝夜は晴を一眼で信頼をし話の流れのまま車で現場に行くことになった。》


 「晴さん、うちの黒田からの依頼、本当に受けて戴いて大丈夫ですか・・・と今更言っていますけど。
 とは言え、これでほっぽりだされたら私は昨日とは違い妹ちゃんが居ないので一人で晒されてパニックになってしまいます。
 ・・・今日晴さんとは初めてお目にかかったのに関わらず図々しいお願いになりますが、出来ればこのまませめて現場まで行ってもらうと嬉しいのですけど。」

 「勿論ちゃんと現場まで送らせて戴きますわ、決して輝夜さんにそんな酷いことは致しませんのよ。
 輝夜さん、安心して私めの車でゆったりと羽川までお送り致しますわ。それに私は輝夜さんのお役立ちが出来れば全く問題有りませんのよ。
 それに昨日はハブ・・・じゃなくて急な会議をうちの悪魔にセッティングされてしまったのでお会い出来なかった事が本当にとても辛く感じましたわ。

 でも、今は妹には感謝感謝ですわね。

 あと黒田さんって相変わらず優秀な方ですわね。今日も私が勝手に押し掛けただけなのにこんな機会を提供して戴けるなんて・・・本当に有能ですわ。
 うちの会社に今からでも役員待遇にでも勧誘でもしておこうかなと思ってしまいますわ。」

 結果的にはなりましたが晴さんはこの展開に大変満足をしており、昨日やられた仕打ちの事すら天啓と思っている節も有り晴さんって本当に人格者だなと思っております。
 お陰で私も独りで現場まで行かずに済みます。

 私は普段では味わえない豪華な革張りのシートで今にでも寝落ちしそうな気持ちよさに陥りそうです。
 晴さんも高速道路に入ると座席を後ろにずらしてすっかりのんびりして完全自動運転に任せています。

 因みに私が座っている助手席は乗り込んだ時には既に私の脚が窮屈にならないように予め座席を後ろに移動していたので、体の大きい私でものんびりしています。
 車内にはチルアウト系の音楽がかかっており互いの会話に邪魔になっておらず、これままた私にとって快適な感じを心にも伝わっております。
 何しろ普段は後部座席でのんべんだらりと1列を占有しており、決してお業気が良いものでは無い格好でいるので車移動とはいえ新鮮さを感じております。

 しかしながら、本音は昨日行った旧小山村での救出活動に行きたかったのですけど、あちらの方は村に入れるのが限られた車や自動運転がない(自動運転のあるバイクも有りますが、売れ行きが芳しくなく国内メーカーでは製造中止しています)バイクでしかないので、何れも運転出来ない私が行っても足手まといです。
 まぁ今回移動手段役をかって出て戴いた晴さんはとても上機嫌に色々話し掛けてきていますので、普段目立たないようにして気を遣って戴いているのでサービスしたいと思います。

 と思っていた時に晴さんがちょっと言いずらそうな面持ちで話しかけてきました。

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