【お金3.0ってなんだろう?】

【お金3.0ってなんだろう?】
「メタップス・タイムバンク代表 佐藤航陽さんの話を聞いて考えてみた」

「問いを立てるデザイン」というオムニバス形式の講義を大学院でとっている。先日はメタップス・タイムバンクの代表を務める佐藤航陽さんがいらっしゃって、講演・ディスカッション・質疑応答をしてくださった。講義での佐藤さんの話や佐藤さんの著作である「お金2.0」の内容を元に自分なりに「お金3.0」について考えてみた。

佐藤さんの主張を整理

まずは、佐藤さんの主張を自分なりに整理することから始めた。

・世界は「分散化」している
・自動化と分散化が混ざった「自律分散型」のビジネスモデルが世界を変えていく
・自律分散型ビジネスモデルによって経済が「民主化」する
・知識と同様にお金もコモディティ化していく
・お金そのものには価値がなくなり、根源的な「価値」が重要視される「価値主義」へ発展していく
・価値は3種類ある
 1. 有用性としての価値
  - 資本に転換できるもの
 2. 内面的な価値(個人の感情と結びつく)
  - 共感・熱狂・信頼・好意・感謝など
 3. 社会的な価値(共同体の持続性を高める)
  - 治安維持活動、慈善活動、非営利活動など
・資本主義は有用性としての価値しか価値としてみなしていない
・これからは内面的な価値(や社会的な価値)が重視される

改めて整理してみると、佐藤さんは「お金2.0」を厳密に定義しているわけではない。単に「次の時代の」お金のあり方や社会について主張を述べているだけであるようだ。
これらの主張も踏まえながら「お金3.0」と題して、「次の時代のお金のあり方や社会」について自分なりに考察してみることにする。

社会制度の変遷から考える

マルクスの経済発展段階説によれば

1. 原始共産制
2. 古代奴隷制
3. 封建制
4. 資本主義
5. 共産主義

と段階的に発展し最終的に共産主義に至るとされる。
実際には、共産主義は崩壊したことを踏まえると、

1. 原始共産制
2. 古代奴隷制
3. 封建制
4. 近代的中央集権国家体制
  a. 資本主義(←今ここ)
  b. 社会主義→崩壊

という見方の方が正しいように思える。
ところで、マルクスは以下のようにも主張している。

「下部構造(産業構造)が上部構造(社会制度)を規定する」

確かに、狩猟・採集によって生計を立てていた時代は原始共産制で社会が成立していたが、
やがて農業の発明によって主従制が生まれ、
産業革命(工業革命)に後押しされて近代的中央集権国家へ移行していった。

これらのことを踏まえると社会制度の変遷は以下のように捉えられるかもしれない。

1. (狩猟・採集)→ 原始共産制
2. (農業の発明)→ 主従制
  a. 古代奴隷制
  b. 封建制
3. (工業化) → 近代的中央集権国家体制
  a. 資本主義(←今ここ)
  b. 共産主義→崩壊

このような社会制度の変遷の中にあって「お金」はどのような歴史を辿ってきたか。
「お金」を「価値を取引する媒体」と定義して、その歴史を振り返ってみる。

1. 物品
2. 金属
3. 紙幣
  a. 兌換紙幣
  b. 不換紙幣
4. 情報
  a. 電子マネー
  b. 仮想通貨

これを社会制度の変遷の文脈に当てはめてみると、

1. (狩猟・採集)→ 原始共産制 (物品貨幣)
2. (農業の発明)→ 主従制 (物品貨幣→金属貨幣)
  a. 古代奴隷制
  b. 封建制
3. (工業化) → 近代的中央集権国家体制 (金属貨幣→紙幣 - - >情報)
  a. 資本主義(←今ここ)
  b. 共産主義→崩壊

このように捉えることができるだろう。

この文脈に佐藤さんの主張を乗せるとするならば、
次の産業構造は「自律分散型」の構造になり、
社会構造はより「民主化」されたものになり、
資本主義から価値主義へと移行する。

つまり以下のように捉えられる。

1. (狩猟・採集)→ 原始共産制 (物品貨幣)
2. (農業の発明)→ 主従制 (物品貨幣→金属貨幣)
  a. 古代奴隷制
  b. 封建制
3. (工業化) → 近代的中央集権国家体制 (金属貨幣→紙幣 - - >情報)
  a. 資本主義(←今ここ)
  b. 共産主義→崩壊
4. (自律分散化)→ 民主化された経済国家 (???)
  a. 価値主義

ではそのような時代においてお金のあり方はどうなっているのか。
実は佐藤さんは社会や価値については言及しているが、「お金」には言及していないのではないか。(恐れ多い)

ところで、歴史的に振り返ると貨幣の本質的な価値は有用性にありそうに思える。

物品は言わずもがな。
金属も(埋蔵量に限りがあることに由来する希少性という特徴が価値を後押ししているが、本質的には)装飾や工業に有用であることが価値を生み出している。
紙幣はそれら有用なものと交換できることを国家(発行所)が保証しているだけで、価値の本質はやはり有用性にある。
情報も時代の変化のなかで有用性を獲得し価値を生み出した。
そう考えると、有用性はお金の条件であるように思えてきた。

つまり佐藤さんの言うように価値は、(1)有用性としての価値、(2)内面的な価値、(3)社会的な価値の3つに分けられるのではなく、
佐藤さんが「内面的な価値」として挙げた「共感・熱狂・信頼・好意・感謝」なども、時代の変化の中で「有用」とされるようになり、価値を持った
と考えられないだろうか。

つまり、
個人の感情と結びつくもの(内面的なもの)や共同体の持続性を高めるもの(社会的なもの)も、次の時代においては「有用」であるため、
「価値」を持ち、
共感・熱狂・信頼・好意・感謝や、治安維持活動、慈善活動、非営利活動などが「お金」として機能する可能性がある
ということである。

従って、将来「お金」になりうるこれらの媒体を、集めたり、提供できる用意をしたりすることが、次の時代に備えるということではなかろうか。

主張のまとめ

最後に、主張をまとめておく。

・お金とは「価値を取引する媒体」である
・「お金」の条件は有用性だ
・有用性は価値の本質である
・内面的なものや社会的なものも次の時代においては「有用」であるため、
「価値」を持ち、
共感・熱狂・信頼・好意・感謝や、治安維持活動、慈善活動、非営利活動などが「お金」として機能する可能性がある
・内面的なものを集めたり、社会的なものを提供できる用意をすることが次の時代に備えるということではないか


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