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メニエールと私

この雑記以外に記事にする気はないし、俗にいう”強み”にしていくつもりも一切ないが、ある意味区切りとして書く。私はメニエール病を抱えている。

最初に断るが、以下の文章は一患者の体験談なので医学的確証はない。自分の症状の正体が気になる人がGoogleに聞くべきは、近隣の耳鼻科の開院時間だけだ。

これは昔からわりと女性に発症者が多い(らしい)病気だ。最近ではジャニーズ事務所を退所した今井翼氏が罹患している。難病らしい。
正直これが珍しいのかどうなのか、実態を知らないけど、先生いわく「前からあった病気だけど最近増えてる」ようだ。
耳の中の蝸牛のリンパ液の排出機能がぶっ壊れ、平衡感覚をつかさどるなんやかんやに不具合が生じる、というのがメカニズムらしい。
症状としてはめまいと耳鳴り、それらに付随する吐き気だ。

発症原因はざっくりと「ストレス」だとか。いやいや、人間生きてりゃストレスくらいかかるだろう…と、罹患した自分ですらいまだにあまり納得がいっていない。突発性難聴と症状や原因が似ている。耳だし。

ちょうど1年前にガツンときた。
その前から年に1回くらいの頻度で「あ、やばい」というレベルのめまいがあったり、時々低音が音割れするなどの症状があった。だがめまいは寝ていれば治ったし、音割れは慣れてしまったので検査もせず。
それが去年の仕事始めの日。パソコンで映像仕事をしていたら突然目が回り、吐き気がした。トイレに行ったら壁紙のなんでもないうっすらしたエンボスにまた目が回り、やがて片側の耳から耳鳴りや音割れがして、はい無理。

町医者で検査し、大学病院で検査し、病名が出た。
ドクターストップがかかっているのに、人員の関係で映像仕事を続けた結果、風のない日にひとり歩くしずかな歩道橋、そのわずかな揺れにすら「うええ、床が波打ってる…」と感じ歩けなくなるほど平衡感覚が失われた。
毎日聞いていた音楽は聴けず、いや聴く気になれず。ライブ用の耳栓をして聴覚への刺激を減らし、目を見開いて焦点を合わせないようにしながらフラフラ歩いていた。

ニュース番組で国会議員が話している、まるで動きのないインタビュー映像を見ただけで目が回り、テレビは見れない。映画なんてとんでもない。CGも厳しい、ポケモンGOすらダメだった。飛行機も最近乗るまでは大丈夫か不安だった。

この病気はしんどい。
外見上の変化と言うと、吐き気やらめまいで顔が青ざめて、息が荒くて、冷や汗をかく。でも熱は出ないし、吐き気っていっても嘔吐にいたることは数えるほどだったし、出血してるわけでもない。
だから周りからは「ちょっと調子が悪い」くらいにしか思われないのだ。そりゃそうだ、傍目には二日酔いだもの。
仕事人間からは「たかがめまい」「たかが耳鳴り」と本気で言われる。まさに二日酔いの範疇で語ってしまうのだろう。経験したことないものはイメージするのも難しいから、そう言ってしまう人間を責める気にはならない。だがしんどいものはしんどい。
どうやら、世間あまたある”症状”の中でもめまいや耳鳴り、吐き気っていうのは軽度な症状ととられがちなようだ。

だが、何度も言うが実際はしんどいのだ。
五感のうち視覚と聴覚という、周りを判断するうえで大事な二つがダメになっている。嗅覚もただただ吐き気を増幅してくるし、触覚も不快だ。舌なんかこの際特に役に立たない。そして平衡感覚もやられているので、立っているだけで揺れを感じる。歩くと波打つ床を歩いているかのようだ。幸い倒れるようなことは2回くらいしかなかったが、場所と転び方次第ではそれが死因になる。症状が強い時は外出すること自体、間違いだ。
それまでできていたことのほとんどができなくなる。これほどショックなことは無い。仕事ができない。音楽も聴けない。映画も、ライブも行けない。楽な姿勢も日によって違うので、静かに目を閉じて座るか寝るかしているしかなかった。

幸い、薬を飲んで症状を引き起こす刺激(激しく動く映像や平衡感覚に響くもの)を避けていれば、ゆっくりであれば書類仕事はできるし、生活は可能だ。そして徐々に症状は治まっていく。そうすれば映像を観てもいいし、スポーツも可能だ。
ただこの病気は、病気と言うよりは体質に近い。ストレスが過度にかかるとまた症状が起きる。なので症状が治まることを「完治」ではなく「寛解」というようだ。
平衡感覚を改善する体操やなんやらが効くとか効かないという話もあり、ちょっとやったがそれが効いて和らいだのか、単に薬が効いたのか、私個人では何とも言えない。

いま私は「寛解」状態だ。症状がひどい時はできなかったこともやれる。
飛行機に乗る、映像を観る、撮る、作る。CGを見る。映画を観る。スポーツをする。楽器を弾く。ライブに行く。
それでも、飛行機や映画は、症状が治まったあとでも「乗ったら、観始めたら、めまいが出るんじゃないか」となかなかに不安だった。杞憂だったからよかった。それだけストレスが軽減されているらしい。

いまでも躊躇しているものがある。VRとスカイダイビングだ。
VRなどの「視覚をだます」技術は私の脳みそと三半規管、蝸牛にはまだまだ負荷が強い気がしている。杞憂ならいいが、予感としては良いものではない。
そしてVRなんかよりずっとやりたいスカイダイビング。これはできるかどうかわからないし、周りに止められている。やりたいなあ。笑

まあ、この病気のお仲間にはストレスに注意して生きてこうぜっていうこと、そしていま罹患してしまった人は、うまく付き合ってくしかないんで気長にやってこうぜ。としか言えない。
今は上記のようにある程度好き放題やれているし、引き金となった映像、これを撮ったり編集したり、見ていても大丈夫だ。
それでもたまに「あ、これ自分疲れ溜まってるな」っていうシグナルが出る。そういう時は残ってる薬を飲んでさっさと寝る。2,3日そうやって様子を見れば大体おさまる。付き合っていくしかない。

どっかで楽しいことしたり、かかった負荷をゆるめる時間が必要だっていうこと。誰だってそうなんだけど、これにかかっちゃった人は、しっかりそこのところをやらないとしんどいよね、っていうことだ。

改めて言うが、この雑記は一罹患者の見解なので、医学的な確証ある発言ではない。なんか気になる症状が出てる人は、いいからさっさと耳鼻科に行け。

これをあえて書いた理由。
まあ、お気楽な果実の実態の報告だろうか。あとは今井翼氏を応援するという意思表示()

このストレス社会では患者もどんどん増えていきそうだが、一方でこれからVR技術はじめ「感覚をだます技術」がますます進んでいく。そのうち問題にならないのかな?と若干疑問に思うこの頃なのでした。

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