Tomasz Dąbrowski Ad Hoc / Strings 南博参加のポーランド人TP奏者新作!前編

昨年の秋Tomasz Dąbrowski トマシュ・ドンブロフスキというポーランド出身のジャズ・トランペット奏者がこっそり来日していました。ひとつは、彼の個人的プロジェクト「S-O-L-O:30th Birthday / 30 Concerts / 30 Cities」のため。もうひとつは、彼が普段の活動の拠点にしているデンマークの首都コペンハーゲンでよくつるんでいる演奏仲間のベーシストKenneth Dahl Knudsenの来日公演のため。

前者は彼が三十路に突入したのを記念して、世界中の30の都市で30のトランペット独奏コンサートを行うという壮大なプロジェクト。東京ではDisk Union新宿Jazz館での演奏となったようで、その関係で私はユニオンの方から事前に彼の来日情報を知らされていました。で、そのライヴとKennethたちとの演奏だけで彼は帰ったのかと思っていたんです。

ところが! 先日彼のFacebookページの投稿を見てたら「日本の素晴らしいピアニストHiroshi Minamiと録音したアルバムをリリースした」ってあるじゃないですか! あの南博? 何だそれ、知らねえ!

このアルバムは、ものんくる、類家心平、林正樹、東京ザヴィヌルバッハ、喜多直毅など、近年の日本のアラウンド・ジャズ・ミュージックの最重要アーティストの作品を立て続けにリリースしているレーベルAirplane Labelからハイレゾ配信販売のみで発売されたもので、トマシュ、南のほか、坪井洋がドラム、千葉広樹がウッドベースというクァルテット編成で録音されています。Airplaneは最近話題を呼んだミャンマー民族音楽のドキュメンタリー映画『Beauty of Tradition』でもよく知られていますね。

トマシュは同じポーランドのリヴィング・レジェンドTomasz Stańko トマシュ・スタンコの路線を継承するインプロヴァイザーで、エクスペリメンタルかつ即興を重視したビターなサウンドのミュージシャン。その彼とあの南博がアルバムを録音! こうして文字で見るだけで、想像の隙間から密度の濃い音が立ち昇って来そうですね。

実は昨年ポーランドに行った時にヴロツワフという都市で行われるJazztopad Festivalの演奏のあと、トマシュとも一緒に飲んだんですがそんな話は全然してなかったんで、余計びっくりしました。

南博は、私が東京時代に参加していたバンドのメンバーも「南さん、すげえよな」と言ってて個人的にも十数年前からよく聞いていた名前ですが、まさかポーランドとのつながりの中で彼のことを目にするようになるとは思ってもみませんでした。

今のところ、ジャズ専門のショップの方など、音楽関係の方たちもこのトマシュのアルバムのリリースの情報をほとんど知らないようですし、またひとつポーランドと日本の架け橋ができたということで、トマシュ本人と、リリース元のAirplane代表で作曲家、上記ドキュメンタリー映画の監督でもある川端潤さんに突撃インタヴューをしてみました。川端さんは本作のプロデューサーを務めています。

このレヴュー前編では、まず川端さんのショート・インタヴューをお送りします。

オ:今回、ハイレゾ音源のみのリリースにしたのはどうしてですか?
川:最近はiTunesなど音質をあまり気にしない傾向がありますが、うちのレーベルではやはり音にこだわりたいと思っています。ハイレゾだとアナログに近づけるし、ミュージシャンの息遣いが感じられますしね。

オ:録音スタジオは、代官山の『晴れたら空に豆まいて』ですよね。どうしてここで演奏することに?
川:晴れ豆は、南さんがよくライヴをしていて演奏しやすいということと、ライヴハウスの空気感も出せるということからです。このスタイルの演奏の方が一体感、親密さが出やすいと思いました。

オ:Airplaneからのリリースになったのはどういう経緯ですか?
川:これも南さんがらみですね。彼のバンド『Go There』のアルバムを弊社からリリースしていますので、その流れです。

オ:録音メンバーも南さんの人選?
川:そうですね。

オ:ポーランド人ミュージシャンとのお仕事というのも珍しいと思うのですが、レコーディングに接して何か印象的なことはありましたか?
川:トマシュは物静かな男でしたね。録音も淡々と静かに進んでいった印象が強いです。
オ:それは面白いですね。と言うのも、昨年ヴロツワフで一緒に飲んだ時の彼は、とてもよく喋っていたので。お酒の席だからでしょうか(笑)

オ:録音が完了するまでは、どれくらいの時間がかかったんですか。
川:一晩で終わりました。テイクも、多い曲で最高3テイクくらいでした。

オ:川端さんもたくさんアルバムをリリースされている作曲家でいらっしゃいますよね。今回の『Strings』はトマシュが全曲作曲です。彼のコンポジションや本作は、同じコンポーザーの川端さんにはどのように聞こえましたか?
川:トマシュがリードする音楽で、それぞれのミュージシャンとの距離感、緊張感、演奏の中での会話がしっかりと表現された作品だと思います。南博の抒情的なピアノに、エレクトロニックなアンビエントサウンドとトマシュのトランペットが絡み合い、冬の情景を想像させてくれるアルバムです。
オ:おお、これからの季節にぴったりですね! 川端さん、どうもありがとうございました!


はい、まずはプロデューサーの川端さんへの短いインタヴューをご覧いただきました。後編はいよいよ主人公のトマシュ・ドンブロフスキへのインタヴューをお送りします。最初コンタクトしたとき「メールでインタヴューの質問送ろうか?」と書いたら「俺は、用意された質問に答えるのはあまり好きじゃないんだ。ここ(FBのメッセンジャースレッド)でチャットしようよ」とのことで、リアルタイムなチャットインタヴューとなりました。真摯なインプロヴァイザーの彼らしい対応で、それも嬉しかったですね。

インタヴューは、話題がアルバムを離れたりしてなかなか面白いものになっています。後編もお楽しみに!

Tomasz Dąbrowski Ad Hoc / Strings (Airplane Label)の情報は↓から。

ハイレゾ音源購入 → http://www.e-onkyo.com/music/album/api1010/
ライナーpdfファイル → http://www.airplanelabel.com/news/images/strings-liner.pdf


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オラシオ

ライター、コラムニスト。青森市在住。『中央ヨーロッパ現在進行形ミュージックシーン・ディスクガイド』(DU BOOKS)監修。コンピCD『ポーランド・ピアニズム』『ポーランド・リリシズム』(コアポート)選曲・解説。ご依頼はaladyhasnoname@yahoo.co.jp

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