ハニートラップって、やっぱりかかるほうも悪くない?

最近知人に貸してもらって人気のマンガ『怨み屋本舗』シリーズを読んでいるのですが、何度か気になる展開がありました。

恋人や配偶者がいるのに他の人と肉体関係を持ったことを隠し撮りなどで物証をとられ、それをネタに金をむしり取られたりした人が「怨み屋」に復讐を頼むという話がいくつかあるのです。

まあ、裏切った当の本人じゃなくて、第三者である恐喝者からそういうひどい目に遭ったら怨み屋に頼みたくなる気持ちもわかります。実際、浮気相手はもともと恐喝や詐欺を行うつもりで被害者に近づいているパターンが多いんです。

つまりハニートラップですよね。でも、その被害者たちが決まってこういうことを言ってるんですね。

「確かに俺(私)も悪いけど、ここまでやるのはひどいじゃないか」

浮気は悪いと思ってはいるが、こんなひどい目に遭う道理はないと。本来受けるべき罰以上にひどい目に遭っているのだから、復讐したいってことですよね。

この作品に限らず、浮気した側が「浮気したくらいで何でこんなにひどい目に」って言っているのに触れると、どうしても「あなたの中で、浮気ってずいぶん軽い行いなんだね」と疑問に感じてしまうのです。

浮気について、私は法律に触れない隠れ犯罪のようなものだと思っていて、それは「された側」と「する側」がいるからです。言わば擬似・被害者/加害者ですね。

人の愛の形はさまざまですが、愛情を持って恋人であったり結婚であったりという「二人だけの関係性」を約束し合うことは、お互いへの最大の信頼に基づいた契約のようなものだと思います。相手を束縛するということではなくて、他の誰よりも信頼し大切に思っているという気持ちの表明と言いますか。

そんな相手にもし浮気されたら、その後、人のことが信用できなくなるほどの衝撃を受けてしまうでしょう。よく、一度浮気されると次の恋愛関係に踏み込むのに二の足を踏んでしまうようになると言われますよね。

これって恋愛話だから「勇気出しなよー」みたいな助言を与えられて終わりますが、ほんとうはもっと大きな枠組みの話で、人間不信という不幸を植え付けられているわけですよね。人が信じられなくなるってものすごい不幸だと思いませんか。ある意味、一生の傷を残しているわけです。

ここまで読んで「重い!」と感じた方も多いかと思います。ずっと一人のパートナーに想いを向け続けることなんて無理だし、そんなにされたら相手もウザいはずという感じでしょうか? 

そこまで思いつめて相手を決めるわけじゃないんだし、恋愛なんてもっと軽く楽しめばいいじゃないとか。そうですね。確かに、書いていて自分がイタい人間のような気もしてきました(笑)。

私は恋愛や性愛に関してはカタブツ人間なので、ちょっと考え方が堅苦しいかもしれません。ただ、一応言っておくと私は「心変わり」については否定していません。

人への愛情ってある種の「運」だと私は考えています。この考えについては、これまでいろんなところで書いているのですが、ある人を好きになったりそうでもなくなったりするのは、自分では操作不能の心の動きです。

ずっと一途に愛していたはずなのに、ある日突然疎ましくなったり、他の人が好きになるなんてこともあると思います。その運命の流れからは誰も逃れることはできません。20年以上付き合っている私も、いきなり相方のことがどうでも良くなったりするかもしれません。

恋はするものではなくて落ちるものだと誰かが言っていましたが、まさにその通りなんですよね。

ただ、そこまでは不可抗力だとしても、けじめをつけることは努力次第で何とかできることではないでしょうか。目の前の人よりも他の人のほうが好きになってしまったら、今の相手とはすぐ関係を終わらせる。関係を終わらせるまでは新しい「恋した相手」と肉体関係を持つとか隠れてデートするなどの行動に出ない。

相手はもう「一番」ではないかもしれない。でも、つい先日まで愛していた人なのだから、その愛情の最後の名残として相手への敬意を忘れず、それくらいのことはしてもいいのではないでしょうか。

恋愛は「お楽しみ」の面もありますから、それで一生を束縛されたり、義理を重んじるあまり楽しくなくなってしまうなら確かに「重い」。しかし、本来ならきちんとつけるべきこうした「けじめ」が、世の中であまりにも軽んじられていることに、個人的にものすごく疑問を感じます。

恋愛なんだから、ひどい終わり方もありじゃん。ってずいぶん軽く認定されてしまっていると言うか。

これって結局、恋愛の入り口ばかりが重視されて、きれいに別れるやり方、マナーみたいなものがきちんと情報として出回っていないからなのかなと思ったりもします。恋愛や婚姻関係が終わるのは、苦い体験になると暗に決めつけられている感じ。

きれいな別れ方の指南本とか、出ないものですかねえ。

でも、きちんと別れないで浮気のような状態で破綻した場合、相手に人間不信という一生の傷を負わせるかもしれないわけです。浮気したほうは新しい愛に進めていいのかもですが、されたほうはたまったものじゃありません。浮気をされた彼や彼女が突然突き落とされる暗闇は、どれほどのものなのか。

『怨み屋本舗』の話に戻ると、怨み屋に依頼するハニートラップ被害者は、とりあえず一度はふらふらとパートナーを裏切っています。それが原因で家庭が崩壊したり金を脅し取られたりしています。そこではじめて「犯罪被害者」になる。

でも、その向こうには裏切られてショックを受けた「浮気被害者」もいる。しかし浮気被害者は「もう忘れて次の恋に進みなよ」とか「恋愛あるあるだよ」とか言われて、その傷をなかなか認めてもらえない。そして周囲の人には内心「見る目がなかっただけ」とか「恋愛みたいなくだらないことでいつまでも傷ついてるなよ」とか思われたりもする。

ハニートラップを仕掛けるほうも、もしそれが計画的犯罪だったならプロなのでいろいろスキを突いてくるのでしょうが、その手管や色香にふらふらとなるほんの束の間の浮気は、これまでパートナーと積み上げてきた長く深い信頼の時間を根こそぎ叩き潰すだけの重みを持っているのです。

個人的には、パートナーがいるのに他の人と愛し合うなんて、その後の一生がむちゃくちゃになってしまうくらいものすごい行いだと思っています。先に、他の人に気持ちが傾いてしまうのも運だと書きましたが、浮気がそれほどに重い行いだと充分に認識していれば、ある程度心変わりは防げるような気もしています。

ふらふらっといってしまうのは、やはりどこかで「浮気くらい」と思っているから。「浮気したくらいでこんなひどい目に遭うなんて」というセリフが、その人の中で浮気を天秤にかけた時の軽さを証明しているのでは。はじめからどこかで言い訳を用意しているんですね。

いやー、浮気したあなたがめちゃめちゃになるのなんて、当たり前じゃんって思ったりもするのですが。やっぱ重いですかね。その割にいつまでも「ずっと自分を好きでいてくれる人がいい」というのが好きなタイプの上位に挙がっていますよね。それはなぜでしょう。

浮気をされるのもけじめをつけて別れるのも、パートナーが自分ではなく他の人を選んだという意味では同じですし、どちらの場合でも傷つきもするでしょう。でも、その後の人生に与える影響ということではまったく違うのではないでしょうか。

そういう意味では、ハニートラップで引っかかった側もある意味加害者なのであって、ほんとうの一番の被害者は浮気された人なのです。

あと、前々から気になっているのですが、伊藤詩織さんのように性暴力犯罪を告発する人が現れると決まって「ハニートラップだ」と言う男性がいますよね。要するに売名行為だとか金目当てだと主張するセカンドレイプです。

でも、性を金で売り買いする社会を作り上げてきたのはそもそも当の男性じゃないですか。自分たちのお楽しみのために作り上げた性の捉え方のせいで疑心暗鬼になっているって、同じ男性から見てもなんか滑稽です。

伊藤さんの場合は犯罪だったことは間違いないと捉えていますが、仮にハニートラップだったとして、それの何が悪い?とも思っています。だって、性を使ってお金やその他自分のためになる何かを得る道筋を切り拓いたのは、男性なのです。その道を歩いて生きていく女性にぎゃーぎゃー言う意味がよくわからない。

もちろん、意に染まぬ形で性産業に従事させられているなどは言語道断ですが、少なくとも自分の意志で性をツールにしてハニートラップを仕掛ける女性に文句を言う資格は、性産業を一度も利用したことない男性以外は持っていないと思います。

とにもかくにも、世の中は浮気に対する扱いが軽すぎる。恋愛あるあるじゃねーよと思います。ネットで罵詈雑言を浴びせて社会的に抹殺とかはやり過ぎだし他人にそんなことをする権利もないですが、浮気には必ず「された側」がいて、その人の心の傷は決して小さくないはずなのです。

少なくとも私にとっては、ほんのつかの間の快楽よりも、私が浮気することで相方が負う傷のほうがはるかに重く、ふらふらしている場合ではないのです。

ということを踏まえると、ハニートラップってやっぱりかかるほうが悪いんじゃね?と思う今日この頃でした。やっぱ重いですかね。

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オラシオ

この恋愛観、そんなに変わってます?

大学時代に出会った彼女と結婚もせず付き合って早や約四半世紀。初恋からそのまま超ロングラン恋愛に突入した私の恋愛観は相当変わっていると言われます。そんな私の恋愛についてのコラムを集めたマガジンです。
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