「思い出せない人」へのあいさつのしかた

音楽ライターって、どういう仕事だと思われているか私にはわかりませんが、とりあえず一番努力している部分は「つながりづくり」かもしれません。しょっぱい話ですみませんが、仕事がもらえるかどうかを最も左右しているのはそこなんですよ。俗に言う「実力」への評価は、たぶん何度か仕事をもらえたその後に積み重なっていくものだと私は思っています。

というわけで、どんどんたくさんの新しい人に会っていくのが音楽ライターの日常だと言えます。私の職業ライターデビューはたった数年前。もう30代後半です。いろんな経験をして、いろんな仕事を頑張って、その積み重ねもライター業の役に立っていると思っているので、おっさんになってからのデビューも悪くないもんだなというのが正直なところなのですが、ひとつだけ「若い子には負けるわ♪」ということがあります。

私は記憶力の良さだけで生き延びてきたようなところがあるのですが、最近その力の衰えが激しい。激しすぎる。何かの集まりに行って、時々「あれっ、この方、一度お会いしたことなかったっけ」とわからなくなることもあるんですね。それぐらいバンバン名刺を交換しまくったり自己紹介しまくったりするもんなんですよ。

また、私は実はけっこう人見知りなので、人に会う時はかなりテンション上げてハイになってます。後で我に返ったら、記憶がうっすらぼやけているなんてこともあります。酔いが醒めたに近い感じでしょうか。まあ、音楽ライターに限らずそういうシチュエーションに陥ったという経験のある方は多いと思います。

「あああ!旧知なのにスルーの失礼もしたくないし、かといって確信も持てない!」

こんな時、私はこうやっています。

①目が合うまでそちらに顔をとりあえず向ける

たぶん目を合わせるのって最強の確認行為です。この時、どういう反応があるか見てみましょう。

1.目が合ったけど何の反応もない
もう明らかに会ったことがない人です。何の心配も要らないので、忘れてしまいましょう

2.目が合ったら、記憶を探るような反応をした
おそらく会ったことがある人です。では②に進みましょう

②相手の出方をうかがう

超当たり前のことを言っていますが、2.の時、もし会ったことがある人なら、少し待っていれば先方は必ずニコッと軽く笑います。微妙な表情の変化ではあるのですが。そうしたら、遠慮なく③に進みましょう

③「あっ、どこかでお会いしていましたっけ?」と話しかける

相手の表情が微笑へと変化したら、まあたいがいの失敗は許される状態に入っています。会った人を完全にはおぼえられないという、お互い似たような悩みを多かれ少なかれ持っているはずですし、この段階で「実は記憶があいまいでして・・・」と言っても「いやあ、私も・・・」とかえって話が弾むはずです。また、こういう緊張の経験をしたので、もうこの方のことを二度と忘れることはありません。不思議ですが、記憶とはそういうものです。

とは言え、①の時の相手の反応でもうひとつ書かなくてはいけないことがあります。

3.明らかに反応があったのに、目が合っていないふりをした

ま、あんまり深く考えないでこちらもスルーすれば良いのですが、この状態になっている原因の可能性としては、

壱.おぼえているけれど、過去に私の側に失礼があり、先方に思うところがある
弐.私の方から先にあいさつするものだと思っている

前者だとするとこれまた不安ですが、自分にもわからなくなってしまっているならもうしょうがないのではと思うしかない気もします。心からお詫びして修復できる関係なら、壱のようにはならないと思うんですね。あいさつくらいはそれでもするでしょう。

壱にしても弐にしても、これ以上続けてもあまり良い関係につながっていかない感じもしますよね。なので、微妙に引っかかるものの、これも忘れた方がネガティヴにならないで済むので「今のは気のせいで、会ったことないんだろう(=1.)」と考えればいいんじゃないでしょうか。ご縁がなかったのだと思って、ここは割り切ってスルーしましょう。

もし本当はお互い会ったことがあるのに、お互い忘れている場合は、これもまたご縁がなかったのです。また、自分が忘れているのに先方がおぼえていないことに対し何か言えた義理ではありませんよね。

えーと、種明かしをするとこれは長大な言い訳です。もし「オラシオのやつ、スルーするとは何だ!」ということがあれば、それは本当に忘れているだけであって、悪意ではないです。いい歳をしたおっさんが、気に入らないから挨拶もしないなんてそんな大人げない真似はしません。ただただ、悲しき記憶力の減衰でございます。普段は青森に引っこんでいるので、そもそもライヴとかに行くことがほぼないですし、東京近辺の方たちほど頻繁に会うこともありません。数年ぶりに会うなんて方も多いのです。まあ、忘れること自体がすでにダメなのだと言われてしまえば元も子もないのですが・・・・。

とにかく、目が合うまで見て、合ったら反応をうかがいつつ少し待つ。親しげな表情に変わったら突撃する。これはかなり効果的です。

蛇足ですが、こういう考え方もあります。上で書いてきたことすべてを否定するものです(笑)。

もし少しでも記憶に引っかかっている気がする人がいたら、かまわず「おひさしぶりです!」と声をかけましょう。あとは何とかなるものですし、単なる勘違いで本当に会ったことがなかった場合でも、それがきっかけでその人とまた新しいつながりができるかもしれません。

まあ、そんな感じで私は乗り切っています。ボクシングで言う「カウンター」、相撲で言う「後の先」みたいなものでしょうか。違う?

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オラシオ

ライター、コラムニスト。青森市在住。『中央ヨーロッパ現在進行形ミュージックシーン・ディスクガイド』(DU BOOKS)監修。コンピCD『ポーランド・ピアニズム』『ポーランド・リリシズム』(コアポート)選曲・解説。ご依頼はaladyhasnoname@yahoo.co.jp
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