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ひとりワークリレーに持っていきたい

仕事というものは、一発当てればいいというものではなくて、基本的に「続けるもの」ですよね。そのためには、花火を打ち上げてそれで終わりというハレ的なやり方ではなくて、常に次につながる体制を保つ必要がありそうです。

いま本格ミステリ小説の新人賞「鮎川哲也賞」が熱いです。

鮎川哲也は『黒いトランク』『りら荘事件』など日本の推理小説史に燦然と輝く名作を数多く残した大作家です。この賞は、鮎川さんが生前の1990年に設立されたもので、出版社の東京創元社主催です。

この鮎川哲也賞が、ここ2年続けてすばらしい受賞作を生み出しているのです。それは、一昨年度の『ジェリーフィッシュは凍らない』(市川憂人)と昨年度の『屍人荘の殺人』(今村昌弘)の二作です。

特に屍人荘のほうは「このミステリーがすごい!」「本格ミステリ・ベスト10」「週刊文春ミステリーベスト10」という推理小説系ベストランキングで三冠達成という快挙で、大変話題になっています。

ミステリとしての面白さ、非常に読みやすい文体などその魅力はぜひ一読いただくとして、私が注目したのは「これはシリーズもののはじまりなのかな」と思わせる設定でした。

両方とも、いわゆるホームズ&ワトソン的な二人の主役が登場し、物語のラストも何となく「次がありそう」という余韻を残すものになっているのです。もちろんホームズ&ワトソンはミステリにおける鉄板設定なので、この2作に限らず多くの作品で導入されてきたものです。

ですが、この2作はミステリの読者が好む設定だからというより「次につなげるため」にホームズ&ワトソンを登場させているように感じたんです。と思っていたら、実際に『ジェリーフィッシュは凍らない』のマリア&漣が続いて登場するシリーズ第二作『ブルーローズは眠らない』が出ました。さあて、屍人荘の二人はどうなるでしょうか。

ミステリとシリーズものと言えば、赤川次郎のデビュー時のことを思い起こします。赤川さんは、今もミステリ短編集などに選ばれている名品「幽霊列車」でオール讀物推理小説新人賞を受賞して作家デビューしました。

審査員だったか文庫版のあとがきを書いている人だったか忘れましたが、このデビュー作に対して「新人賞の応募作品で日の目を見ないかも知れないのに、ホームズ&ワトソン的主人公を登場させてもう続きを見据えている。空恐ろしい新人だ」みたいなことを書いていたんです。

一般的にデビュー作って、その作家のそれまでのすべてが凝縮された、ポテンシャルを出しきったものというイメージが強いですが、言ってみればただのキャリアのはじまりなんですから、そこで枯渇したらダメですよね。

鮎川賞の2作や赤川次郎のことを思う時、自分もそのように何か大きなことをやる際に、そこをゴールにしないでさらに次の仕事への通過点というひとりワークリレー的な考え方をしたいものだなあと思います。

例えば、トークイベントとかやる時に、その内容が面白かったとしても、ほとんどの人はその時間を楽しんで終わりなんですよね。イベント後も熱心に私の仕事やネタにしたことを追い続けてくれる人は少ないと思います。でも、そのイベントの時に「次は、こういうイベントをやります」という風に、何かやる時に常に次のイベントやさらにその次などについて宣伝できれば、興味を継続させられるんですよね。

また、そのほうが自分自身もモチベーションが持続しやすいです。

実際レヴューやインタヴュー記事など単発のオファー待ち仕事ばかりだと生活にあまり緊張感がないのです。フリーランスになってすぐに東奥日報という青森県内最大手新聞にコラムの連載をさせてもらったんですが、その時はすごく充実していました。次につながるという状態は、ほどよく日常にテンションの高さが持ち込まれて、それぞれの仕事の質も上げると思うんですよね。

あとはやっぱり、いろいろ続けていけてると対外イメージもいいですよね。「売れっ子なんだなあ」という感じに見えるのではないでしょうか。こういう風に「今の、さらに次」がないと、何かメモリアルな仕事をやっても「ふう、でっかい花火上げられたぜ」と中途半端に満足してしまうんです。単発の仕事だけで、何かを成し遂げたように勘違いしちゃうんですね。

ダイエットのために小さい茶碗でお米を食べて満腹感を得る時のような、ただの錯覚です。あとから振り返って「あれはでかい業績だったなあ」としみじみするのはいいのですが、渦中にいる時はさらにその次を見据えていかないと、ちゃんと仕事として続いていかないなあと最近よく思います。

昨年20日に初のコンピ『ポーランド・ピアニズム』(コアポート)を出したのですが、おかげさまで追加プレスの好評を受け、続編の企画進行中です。少しはひとりワークリレー体制に近づけてるのかなあ。

コンピについては、こんな紹介記事↓書きました。どうぞよろしくです。

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ライター、コラムニスト。青森市在住。陸奥新報で「図書館ウォーカー」連載中。『中央ヨーロッパ現在進行形ミュージックシーン・ディスクガイド』監修。コンピCD『ポーランド・ピアニズム』『ポーランド・リリシズム』選曲・解説。ご依頼はaladyhasnoname@yahoo.co.jp
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