見出し画像

カメラとデジカメ 人生凝縮写真集

先日フェイスブックで知人が、某観光地で撮った2枚の写真を並べてアップしていました。

数十年前の、若者だった時の自分と、今の自分。撮影場所やアングルも同じで、ポーズも同じ。

投稿者本人は「何とかここまで生きてきました」みたいなコメントしか書いていませんでしたが、その人の人生の重みと言うか、一瞬で凝縮されたものを感じて、ちょっとグッと来てしまったんですよ。

同時に、これってどこかで見たことあるなあと思ったんです。少し経ってから思い出しました。

ブラジルの高原地帯ミナス地方出身の若くて才能あふれるミュージシャンたちが集って、1972年に『クルビ・ダ・エスキーナ Club da Esquina』というアルバムを発表します。で、その『クルビ~』のジャケットが地面にしゃがみ込んでこちらを見つめる二人の少年なんです。

ミナスって今も変わらずブラジル音楽の重要なキーワードであり続けていて、音楽ファンだけでなく関係者やミュージシャンもいつも熱い視線を浴びせている「ブラジル音楽の聖地」なのです。私個人も、このアルバムのサウンドがブラジル音楽の新しい響きを切り拓いたと思っていて、まあある意味革新的な作品なんですけど、つまり、それだけたくさんの人がこのアルバムを聴いていて、この少年たちは「おなじみ」の二人なんですね。で、確か今年の話だったと思うのですが、成長した二人を同じ場所で同じポーズをとってもらって撮影した写真が一時期ネットで公開されていたんです。

ちょっとちっちゃいですけど、↑こんな感じ。ついでに1曲このアルバムからの名曲を聴いてください↓。

で、知人の写真の投稿を見て、このクルビ・ダ・エスキーナの2つの写真のことを思い出し、ただ単に感情的に「いいなー」と感じたのと同時に「これって、すごくいいアイディアじゃない?」と思ったんですよ。

昔、携帯もスマホもない頃は「写真を撮る」のって今ほど頻繁にやっていなかったですよね。最近は街の名所を車道に飛び出して撮るとかの問題も起きてるみたいですが、昔はそこまで撮りたいと思ってなかったと思います。スマホみたいな機械が可能にした、圧倒的な手軽さがあるからパシャパシャ撮るんですよね。まさに「社会が生んだ欲望」ってやつだと思います。

現実世界が「撮影欲」というヴァーチャルな世界にどんどん浸食されていく様子を描いたものにポーランドのクシシュトフ・キェシロフスキの傑作映画『アマチュア』があります。ぜひご覧になってみてください。閑話休題。

で、そんなに頻繁に獲らなかったからこそ、当時普通にカメラで撮影した写真は「記念になるようなもの」「何かを感じた時だけに撮ったもの」だったはずです。それなりにその旅やその風景、その時の自分の心境とかに思い入れがあるんですよね。

そんな「写真」と、今デジカメやスマホで撮った「データ」。これを、同じ場所で同じアングルで同じポーズで撮影した2つを並べて掲載する写真集があれば面白いんじゃないかと思うんです。もちろん最近撮ったやつはデータ系じゃなくて、ちゃんとしたカメラで撮った写真でもいいと思います。

数年くらいだとちょっと何とも言えないんですけど、少なくとも十年以上インターヴァルがあったら、その間にそれなりに人生のドラマってありそうですよね。また、同じ場所で撮っているのに建物の感じが変わっていたり、後ろに写る景色が変わっていたり、当然自分自身も変わっていたり。

2つを並べて同時に眺めると、人生だけじゃなくて、社会の移り変わりなんかにも想いを馳せられそうです。小説で言う「行間を読む」みたいな。

もちろん、写真には何かテキストをつけたいですよね。

「夫とはじめて行った海外旅行でした。夫は数年前病気で亡くなってしまい、独りでここにまた訪ねてみましたが、あの時の自分たちの会話が生き生きと頭の中によみがえって来て、少しさびしくもありつつ、嬉しかったです。他にも、彼と旅した土地にまた行ってみようと思っています」

とか。あ、ベタですみません。

自分が写った写真って考えてみたら、それ一枚だけでもいろいろ想像しちゃいますよね。最近はどれだけの人が「自撮り」するんでしょう。また、周りにいる人や、一緒にそこに行った友人や家族に撮影を頼んだりということもあります。上のテキストの例の女性のように、前は二人で、今は独りでという変化などもあったりするでしょう。

それか、2つ並べて、全くの想像で作家さんたちにショートショートを書いてもらうというのも面白いかもしれませんね。本人のテキストとショートショートを併録するとか、まあいろいろあります。

現実的に考えると、どうやって素材を集めるかなどの問題もあるのですが、こんな写真集、私は見てみたいです。

*カヴァー写真の説明。昔、大久保でちょっと特殊な仕事をしていまして。先日大久保に泊まることになって、ひさびさに駅で降りたのでパチリ。やっぱり少し懐かしくなりました。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

フリーランスのため、みなさまのサポートは取材や執筆活動の貴重な経費とさせていただいております。また、サポートいただくとものすごく励みになります。最高のエネルギーです。よろしくお願いします。

ありがとうございます!SNSでシェアしていただけるとさらに嬉しいです!
13

オラシオ

ライター、コラムニスト。青森市在住。『中央ヨーロッパ現在進行形ミュージックシーン・ディスクガイド』(DU BOOKS)監修。コンピCD『ポーランド・ピアニズム』『ポーランド・リリシズム』(コアポート)選曲・解説。ご依頼はaladyhasnoname@yahoo.co.jp
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。