不機嫌なひとが好き

私は「ルックス博愛主義者」です。

昔からどういうわけだか、女性のルックスで好きなタイプというものがありません。好きなタイプがあることで、何かメリットがあるんでしょうか?

中学生や高校生の時、同級生の男子が「あいつ、ブスだなあ」とか女子のことを言ってるのを聞いていつも「???あの子にもいいところはあると思うのだけど・・・」とか思っていたので、男子同士のその手の採点話には全く加わることができませんでしたし、加わる気もなく冷ややかに見てました。

好きなタイプがないと言うより、ブスとかかわいい、キレイの区別がよくわからないんです。だから「この人、キレイだなあ」と感じたこともありません。

ルックスなんてどうでもいい、とまでは言いません。

大学時代から20年以上付き合っている彼女がいるのですが、やっぱり日に一度は「ああ、かわいいなあ」とか思ったりしますけど、だからと言って彼女がイコール自分の好きなタイプってわけじゃありませんし、そもそも好きになったきっかけも彼女のルックスが好ましかったからではありませんでしたし。

これは、ほんの時々自分のことを鏡で見て「あれっ、ひょっとしてオレっていい感じじゃない?」って思うのと似た程度のものだと思います。とは言え「なんかいいな」とルックスに対して思う瞬間はあるということです。

博愛主義と書いたらずいぶん胡散臭いのですが(笑)、私には好きなタイプという選別眼がないかわりに「どんなルックスの女性にも、どこかそれなりに良いところがあるだろう」と思っていて。あっ、胡散臭いですよね、すみません。

その「良いところ」というのも、私から見て良いという意味ですらなく、誰か違う人が見たら違うところが良いと思うのだろうし、人それぞれの良さは、関わる人それぞれの人数分あるわけで、そんな中で「好きなタイプ」とかを自分の中で定めることに何か意味があるのか、私は全然わからないんです。自分が「人として大事な部分が欠けている」のはここだなあといつも思います。

でも、ルックスではないのなら、いくつか「惹かれる部分」というのはやはりありまして、そのうちのひとつがどうやら「不機嫌な表情」らしい。

例えば昔の日本の白黒映画で『御身』(島耕二監督。1961年)という作品があります。叶順子演じるBG(今で言うOL)が、弟が紛失した会社の金の返済のために宇津井健演じる金持ち社長に3ヶ月間自分を売るが・・・という話です。

宇津井社長は叶BGにずっと手を出しません。煩悶する叶BG。実は宇津井社長は本当に彼女に惚れてしまったので、手を出さずに彼女から自分を好きになるようにずっと待っていた、君が好きなんだ、まあステキ、私あなたの奥さんになります!やっぱりほんとうの愛が大事よ!・・・というような、まあ女性から見たら大変にふざけた思いあがったストーリーなんですけど。

で、そんなお話なもんで、叶順子がずーーーっと不機嫌な顔をしているんですね。ちょっと思い詰めたような。当たり前ですよね。お話中の彼女の境遇を思えば無理もありません。

でも、それがいいんです。

他にも例えば。数年前にやっていた『外事警察』というサスペンスドラマがありました。これは麻生幾の同タイトルの警察小説を原作にしているそうです。

ここで、渡部篤郎演じる公安部外事第4課班長の手段を選ばない非情なやり口に対し、尾野真千子演じる新米班員が葛藤を感じながら捜査を続けるというのが主な設定です。

尾野班員は終始ブスッと眉間にしわを寄せた表情です。この役柄にはちょっと惹かれてしまいました。と言っても、最初に書いたように、尾野さんのルックスが好みなわけではなくて、その演技の突き抜けっぷりが話題になったNHK朝の連ドラ『カーネーション』をはじめ、いくつか他の出演作も観たことがあるのですが、そこでは別にピンと来ませんでした。

最近では有栖川有栖の通称「火村シリーズ」が原作のミステリドラマ『臨床犯罪学者 火村英生の推理』に出てきた、優香演じるいつもイライラした女性刑事もちょっと良かった。よく知らないのですが、彼女ってグラビアアイドルだったんですよね? とりあえずこのドラマを見た限りでは、いい感じに年齢を重ねたのかなあと思いました。

話は逸れますが、昔はチャラチャラしたイケメンだった江口洋介吉田栄作がいい感じに歳をとっているのを見ると、中年になった身としてはなんか希望を感じるんですよねえ。歳をとるのって、捨てたもんじゃないです。

はい、話を戻します。

要するに、私は不機嫌な顔や言動をしている女性が気になるようなんですね。

じゃあ私は「不機嫌顔フェチ」なんでしょうか。まあ、それならそれでしょうがないのですが、もうちょっと理由を踏み込んで考えてみるに、その不機嫌の原因、彼女を悩ませている何かが表に表れていることに、内面への入り口を見て取るからじゃないのかと思うんです。

ルックスに興味がないので、結局私にとってある女性が好ましい人であるかどうかというのは全てその人の内面にかかって来ます。でも、内面ってなかなかわからないですよね。不機嫌な顔は、それを知る鍵になるような気がして。

上で登場した作中の3人は、全員自分の中の思想や生きる姿勢、仕事のやり方みたいなものと、目の前で起こっていることや人間関係との間のすり合わせに悩んだり心揺さぶられたりしているわけです。それは逆に言うと、自分の中に信念のようなものがあるから、現実とのギャップに苦しんでいるということではないのでしょうか。

女性の不機嫌な表情は、その信念の確かさを垣間見せるもののような気がするんです。女性に限らず、信念をしっかり持っている人は素敵だと私は思うんですよ。

不機嫌な顔は、その人が内に秘める信念や強さの表れだとすれば、結局私は人の内面にしか興味がないのかもしれません。あっ「映画やテレビに出てくる人なんてみんな美人じゃん。結局美女が好きなんじゃん」っていうツッコミはナシでお願いします!(笑)

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オラシオ

ライター、コラムニスト。青森市在住。『中央ヨーロッパ現在進行形ミュージックシーン・ディスクガイド』(DU BOOKS)監修。コンピCD『ポーランド・ピアニズム』『ポーランド・リリシズム』(コアポート)選曲・解説。ご依頼はaladyhasnoname@yahoo.co.jp

コメント4件

私は常々、グルーヴのある人が好みだと言ってますが、なかなか上手く伝えられないですね。サブカル感でもファンキー感でもないんで、難儀してます。コミュニケーションの質の問題とは思っていますが。
私は、自分の好みっていつも微妙に範囲が揺らいでいるので、はっきり言葉にするのが難しいのでは、と思っています。しかし、グルーヴのある人というのはなかなか珍しいカテゴリですね(笑)
私の周りには「笑顔が素敵な人が魅力」と考える人が多いですが、私自身は「私の無表情やジト目」の顔が好きです。それを言うと、笑顔の方が素敵だよと諭され、私の感性に問題ありなのかと思ってきましたが、不機嫌な顔が好きな方もいるんだ!とわかって世界が一つ広がりました^^
「笑顔が魅力」って、私は個人の魅力がどうこうより笑顔という概念そのものがいいもの、という捉え方ですね。笑顔は確かにいいものなんですが、あまりその人の個性と関係ないので、個人的には他の表情に惹かれます。それに、笑顔だと好かれやすいから笑ってたほうがいい、という対人メソッドもなんだか窮屈ですよね。
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