生涯のお気に入りアルバム10枚、こんな感じっす

"ほんとうに衝撃を受け、かつ今でも聞き続けている(ごくたまにであっても)生涯のお気に入りアルバムを10枚。毎日ひとつずつジャケを投稿する。説明は不要。毎日誰かを指名する。"

ちょっと前から、こんな感じの「バトン」が回りはじめていて、おそらく私に回す人はいないだろうなあと思いつつ眺めていました。

するとツイッターのフォロワーさん(個人的にも何度か一緒に飲んだことあり)と、「日本一発信力のあるバーテンダー」こと林伸次さんからほぼ同時に「やらない?」と持ちかけられ、やることにしました。そして、先日無事に10日連続のツイッター投稿を終えました。ここにその選盤結果をまとめておきます。

Spotifyにあるものはそちらのリンクを併記しました。Spotifyにないものはようつべのリンクを張っておきますので、どんな音か確かめてみてください。そして、できたら買ってお手元に置いてください。僕の人生を豊かに彩ってくれている、すばらしい作品ばかりです。

1日目 / 10日
Eduarudo Gudin & Noticias dum Brasil

宇宙一好きなアルバムです。ポーランドのジャズを専門にしているライターなのに、ブラジルの作品って我ながらツッコミどころ満載なのですが、好きなんだからしょうがない(笑)。エドゥアルド・グヂンはサンパウロの作曲家で、このアルバムは彼のグループNoticias dum Brasilのファースト。室内楽っぽいアンサンブルと、今やブラジルを代表する歌手に成長したモニカ・サウマーゾを擁した5人のヴォーカル・セクションのコンテンポラリーなコーラス・アレンジが美しすぎます。「無人島に持っていく一枚」というテーマでもきっとこれを選ぶと思います。軽く千回以上は聴いてます。

2日目 / 10日
David Friedman / Winter Love,April Joy

アメリカのジャズ・ヴィブラフォン奏者の2nd。East Windという日本のレーベルから発売された、日本企画盤です。ジャケ買い系アルバムでもあると思うのですが、この美しいジャケット・デザインにはグラミー&アカデミー賞受賞者の、あの石岡瑛子さんも携わっています。チェンバー・ミュージックやミニマル音楽も視野に入れた、フルートやコントラバス、ヴィブラフォン/マリンバなどが曲ごとに編成を変えて届けるサウンドの瑞々しさ。本作を聴いて一気にマレット楽器が好きになったのですが、あとで母にそのことを話すと「貧乏だったので無理だったが、学生時代はマリンバをやりたかった」と言われ、ちょこっと縁を感じました。

3日目 / 10日
David Grisman Quintet / DGQ-20

私は一応ポーランドの「ジャズ」が専門のライターなので、ジャズ大好きと思われているわけなのですが、実は「アドリブの快楽」ということに限って言えば、正直このライヴ3枚組があればもう一生分楽しめるなと思っています。ブルーグラスの進化系「ドーグ」という音楽を創り上げたフラット・マンドリン奏者デイヴィッド・グリスマンのグループの20年間のさまざまなライヴ・レコーディングやスタジオでの新録を収録した本作。信じられないくらいメロディアスで、かつ超絶技巧のアドリブ・ソロが泉のように湧き出てきて悶絶ものです。

4日目 / 10日
Adi / Golconda

日本のポップアルバムです。PSY・Sのベストアルバム『Two Hearts』とどちらにしようかと迷ったのですが、あっちは最近聴き直して再発見したクチなのでこちらに。このADIは、金子飛鳥、塩谷哲、渡辺等にTechie(本間哲子)というスーパー凄腕メンバーたちによるユニットで、サポートでドラマー、パーカッショニスト、囃子の家元の仙波清彦が参加というクリエイティヴ・ミクスチャー・ポップの早すぎた傑作です。プログレやワールドの要素も取り入れつつ、アンビエント、創作楽器、人力テクノ、チェンバーなんかを思わせる部分もあって、今のceroみたいな音楽の源流ってこの辺なのではと本気で考えています。↓の「チープな日々」はDJでよくかけます。

5日目 / 10日
Frank Zappa / You Can't Do That On Stage Anymore Vol.5 Disc2

フランク・ザッパって、とどのつまりが「アメリカそのもの」なんですよね。ギリシャ系移民の息子で、移民大国アメリカが生み、抱え込んだファンクやブルース、民俗音楽、現代音楽、ジャズ、ゴスペルなどのありとあらゆる音楽を、誰もがノれる大衆性の象徴のようなロックというプラットフォームの上でミックスした。「オーディエンスは、あなたの複雑な音楽性をちゃんと理解できていないのでは?」という質問に「そんなのどうでもいいじゃねえか、みんな楽しんでんだから」と答えたのは伊達じゃない。このアルバムはブート(海賊盤)の無許可販売に対抗するために発売されたライヴ録音シリーズで、「溺れる魔女バンド」と言われた時代(80~82年)の演奏です(Disc2のみ)。

6日目 / 10日
Febian Reza Pane / Sweet Radiance

日本人とインドネシア人のミックスのピアニスト、フェビアン・レザ・パネのピアノ・ソロ3枚組。レザ・パネさんは、大貫妙子などなど、実に多くのアーティストの作品や音楽番組出演にピアニスト、アレンジャーとして参加していますので、みなさんも絶対一度は見たことがあるのではないかと思います。本作はほとんどワンテイクのみ、一発どりでレコーディングされていて、2日間で録音が終わったそうです。時折流れてくるスキャットとも鼻歌ともつかないヴォイスもいい味。私はこのアルバムを聴くとマジで体調が良くなります。そんな音楽があるなんて、思ってませんでした。録音エンジニアのオノ・セイゲンさん、これで大ファンになったんですが、まさかのちに親しくお話しできる仲になるなんて、これもまた思ってませんでした。

7日目 / 10日
Enver Izmailov /  At A Ferghana Bazaar

ハウシュカやニルス・フラーム、スワヴェク・ヤスクウケなどのピアニストに顕著なんですけど、最近は「よく知っているはずの楽器から、知らない音がする」という音楽に注目が集まっています。これもまたそんな音楽のひとつです。エンヴェル・イズマイローウ(イズマイロフ)は、ウズベキスタンで活躍するウクライナ人なんですが、エレキギターのフレットを両手でピアノのように叩いて弾く「ダブル・ハンデッド・タッピング」という奏法の魔術師です。なんかエレクトロ打楽器みたいな変な音がする上、バルカンやスラヴ、旧ソ連圏各国の民俗音楽の要素も混じって、とにかくわけわからん、でもむちゃくちゃ楽しい音のサーカスのようなソロ・ライヴ。

これに限っては動画を見てもらった方がいいと思うので↓を。

8日目 / 10日
Steve Kuhn / Steve Kuhn

ボッサ・ノーヴァに似たふわふわしたヘタウマヴォーカル、コンテンポラリーかつ前衛的な弦楽四重奏団、最高にヒップでテクニカルなリズムセクション、カラフルなパーカッションに都会的な薫りのするエレピと、快楽コンテンツがてんこもりの鬼アルバム。加えてドラムのビリー・コブハムの音色が無形文化世界遺産クラスの音色の美しさ。実は私がポーランドのジャズにハマったのは音色がすごく美しいからなんですが、その前にハマってたのはこのコブハムのドラムの音のヤバさでした。美しい音色って、ほんと正義です。ちなみに、名作編曲家として知られるゲイリー・マクファーランドは本作で編曲を担当していますが、数ヶ月後に急死。これが絶作になりました。

9日目 / 10日
Zbigniew Namyslowski / Dances

世界各地の民俗ダンス音楽が実にキャッチーに、あえて言うならファニー&キッチュな感覚でミックスされた、ミクスチャー大国ポーランドならではのジャズ。その絶妙なダサかわいさを含め、アメリカからは生まれない音楽です。このズビグニェフ・ナミスウォフスキの音楽に出合わなかったら、私はジャズに飽きたまま、聴かなくなっていたかもしれません。つまり、ポーランド・ジャズ・ライターのオラシオはいなかったかもということです。ナミさんには二度インタヴューしているのですが、なかなかその創作の秘密まで踏み込めず、手強い相手です(笑)

これも「マジメにかっ飛んでる感じ」は動画↓のほうがわかりやすいです

10日目 / 10日
Babooshki / Vesna

「一生聴き続けられるアルバム」って、一生の友と同じく、そうかんたんには出合えない。でも私はこのアルバムと出合って「ああ、これを見つけることができた自分は、あと何年かは、音楽ライターとしてやっていける」と根拠のない自信を得られたんです。ポーランドとウクライナの女性ヴォーカリスト2人が結成した、民謡ジャズ・グループ。素朴な旋律と、洗練されたアレンジと演奏の相乗効果がエヴァ―グリーンな鮮烈さを生んでいます。そのオシャレでハイセンスで、かつ心に刺さる音楽を聴いて、たくさんの人が「これ、ほんとうに民謡のカヴァーなの?」と驚きます。

番外編

ところで、クラシックを入れ忘れました。いくつかこのバトンにふさわしいものがあります。プレイヤーや演奏内容、併録曲の組み合わせなどなど、このCDじゃないとダメなものです。ご参考までに。


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オラシオ

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