超お金持ちになったらあなたにやって欲しいこと あったらいいな、音楽図書館

図書館って、日本ではやっぱり「本を貸す場所。本や新聞が無料で読めるところ」ってイメージが強いですよね。たぶん「図書」って文字が入っているのもその原因のひとつだと思います。でも本当はあらゆる情報と利用者をつなぐ、そういう役割を持った施設なんです。少なくとも、ネット時代の現代の百年以上も前からそういう「理想」のもとに動いているんです。

「あらゆる情報」の中には、パソコンの使い方とか、こういう業種で起業したいんだけれどどうすれば良いかとか、そういうものも含まれています。

つまりCDやレコードなどの音楽資料、または国内盤のライナーや帯なども図書館が扱うべき「情報」に入るんです。でも、現在の日本の図書館では音資料は「とりあえず貸す」くらいのサーヴィスしかなされていないと思います。それだけ日本の図書館は書籍の貸出と保存重視なんですね。

さて、私たち音楽業界の人間の中でよく話題になるトピックに「CDが本当に売れない・・・」というものがあります。まあ実際そうなんでしょう。出版業界もヤバいって言いますよね。稿料の単価がだだ下がりとかの書き手の嘆きもあれば、どんなに面白いコンテンツを紙面に盛り込んでも発行部数が伸びないという声も聞こえてきます。

個人的な意見なんですが「そうは言うけれど、信じられないほどマイナーなジャンルのCDが毎月たくさん国内盤リリースされてない?」とは思うんです。世界中の音楽がこんなに多彩にこんなにたくさんフィジカルで入手できる国って、たぶん日本だけですよ。日本の中での推移を見れば「終わりかけ」の感じがするんでしょうが、世界的に見ればとてつもないフィジカル王国です。外国の音楽ジャーナリストやミュージシャンが、自分の国の音楽をCDで買うために日本に来たり、ネットで買ったりしてるのは本当です。

中古レコード店の充実ぶりもすごいですよね。かつて「シブヤはモースト・ファンタスティック・レコード・マーケット・シティーだ」という外国人コレクターの常識がありました。ひところの勢いが衰えたとは言え「世界的に見れば」それはまだ健在なのではないでしょうか。来日したミュージシャンが滞在中のプランで挙げるリクエストに「シブヤやニシシンジュクのレコード・ショップめぐり」が多いというのは、伊達ではありません。コレクターとしても有名なブラジルのアーティスト、チン・マイアが日本で怒涛のようにレコードをサルヴェージした話は有名です。そんな国、そんな街、他にあるでしょうか?

これほどフィジカルにあふれている国、日本。まさに世界に誇るべき文化です。なので、「出版したら必ず一冊納品しなければならない」=「すべての出版物が最低一部は資料保存される」システムの現行の国立国会図書館の「音楽資料に特化」ヴァージョンができればいいのにな、と私は常日頃思っているんですよ。文化資料を後世に残すという目的に加え、これぞ「クール・ジャパン」じゃん!と思うんですよ。

とは言え、図書館であるからにはいくつか考えなければならない問題があります。そのポイントをまとめてみましょう。

①アクセシビリティー
②コレクターとの連携
③アーティストやマーケットへの還元
④音源資料のアグレッシヴな活用

まず①です。たぶんこれが最も重要なテーマだと思います。今の普通の図書館でさえ、資料や情報と利用者をいかに結ぶか、いかに利用しやすくするのかは議論の種です。

フィジカル資料と言っても、上に書いたようにライナーや帯、ジャケなどその「資料性」は多岐に渡りますが、やはり基本になるのは音源、音楽そのものの部分でしょう。利用者が気軽にやって来て、気軽に検索して、気軽に聴けるようにすることが大事です。あらゆる資料は利用されるために存在します。

音楽を聴くのですから、すぐれた再生環境も必要だと思います。音質面は、CDなら最近はリッピングしたものが良いとか言われていますが、例えば後世の研究でリッピング版と実際に再生する場合とどんな風に違うかを比較するとか、そういうものもあるかも知れません。再生システムもいろんなものを用意しておくべきでしょう。また、ハード自体も「資料」として保存するという考え方も必要でしょう。

館内でのみ使える、音楽が聴けるタブレットのようなものを貸し出すのも良いかも知れません。館内を歩いてブラウジングしながら、その機械で音源データなどにアクセスし、付属のイアフォンで聴くとか。

また、特に「検索」の部分で必要になるのですが、所蔵資料をどのように分類するのかというのもテーマの一つになるでしょう。よりわかりやすく、より正確に、より詳細に。ここにこそ専門家たる「図書館司書」の腕の見せどころがあります。

「クール・ジャパン」なのですから、当然海外の利用者に向けたサーヴィスについても留意が必要です。アメリカの図書館のように、海外の利用者から年会費などを取って、音源資料の配信をしたり、帯やライナー、国内盤限定デザインのジャケなどをpdfで見られるようにするとか、まあいろいろやり方があります。運営費としても使えるでしょう。

次に②です。私はたぶん世界有数のポーランドのジャズCDのコレクターだと思うのですが、自分が死んだらこれどうなるんだろう?といつも考えています。これまでも、有名なコレクターが亡くなって、その価値がわからないご遺族が二束三文で売りさばき、一番良くないかたちで貴重な文化資料が散逸してしまったということが繰り返されました。

もちろん資料がもったいないという気持ちもあります。でも、もうひとつ重要な役割があって、ご遺族だって困るだろうということです。膨大な「ガラクタ」が残されて、途方に暮れるはずです。そういう時「音楽図書館に依頼すれば良い。あとは一番良いかたちでどうにかしてくれる」というのが常識としてあれば、違ってくるでしょう。まだ存命のコレクターも安心です。

とは言え、そのコレクションが図書館の資料として引き取るべきものかどうかの評価は話は別です。そこでこの図書館のスタッフがやるべきこととしては、引き取れなかった資料をきちんと評価し買い取ってくれる業者とご遺族をつなぐことです。また、コレクションの価値をスタッフが改めてわかりやすく説明することで、寄贈したことに誇りも持てるでしょうし、いくつか手元において亡くなった方を偲ぼうと考えるかもしれません。これこそが「あらゆる情報」と利用者をつなぐ、図書館の役割です。それに、人間味もあるでしょう?

そして何より、①に重なるのですが、貴重な資料が最も良いかたちで保存され、アクセシビリティが確保され、死蔵にならないということが最高の成果でしょう。

さて、資料を「作る側」「売る側」にとってみれば③が一番大事でしょう。YouTubeやApple Musicは、制作側からは賛否両論がありますが「試しに聴いてみる」ということが販売促進にもたらした効果は決して少なくないと私は思います。

図書館なので、基本研究のためにたくさんの音源を収集・保存するわけですが、独自の配信サーヴィスでアーティスト側に還元したり、②のようにショップと連携したり、どうすればこの音源が購入できるのかという情報を利用者に教えたりするのだって一助になるでしょう。

まあ、法的にいろいろ難しい問題はありそうですが、取り組むべき課題だと思います。私見では、図書館と販売・制作の現場はもっと連携すべきです。それをすることで創作ビジネスは盛り返すところもあるのではないでしょうか。

さて、音楽について文章を書く人間としては④が一番言いたいことです。日本ってフィジカル王国なだけでなく、音楽ライター王国でもあるし、コンピ王国でもあるんです。世界中のいろんな音楽について専門にしているライターがたくさんいますし、独自の視点で編まれたコンピCDもたくさん出ていますよね。実はこういう国は他にないんです。これだってクール・ジャパンなんですよ。

これらの人たちと連携して、音源を有効活用したトークイベントをやったり、実際にミュージシャンを招いて、館内のハイレヴェルなホールでコンサートを企画するのも良いでしょう。また、図書館が独自のコンピ・シリーズを出したりするのも良いのではないでしょうか。何より、市場やレーベルが持っているのとは規模が違う量の音源資料がバックグラウンドに控えています。そういうソフトと、ライター王国日本の人的資料というソフトの「ソフト×ソフト」のチームでいろいろ面白いものも出来そうじゃないですか。情報は、情報の集合体だけでは使えないんです。それに切り口や道筋を付与できる能力と連携してはじめて使えるのです。①にもつながる話です。

前ふらっと青森市に演奏に来たフィンランド在住のロシア人ピアニスト、ウラジミール・シャフラノフがカフェで「日本は良いBGMがいっぱいかかってて、いいね。他の国は街に音楽がない。うらやましいよ」と言ってました。彼の言葉を参考にすると、BGMチャンネルを図書館が発信するのも良いかも知れません。

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さて、いろいろ妄想を書いてみました。私個人だけでこれだけ出るのですから、もっともっと夢の施設にするアイディアがたくさん集まるでしょう。しかし図書館の常なのですが、図書館というのは運営費・資料収集費が出て行くばかりで、インカムがないという問題があります。

ひとつは、図書館法の第十七条に「公立図書館は、入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならない」というのがあります。この法律があるために、図書館ではお金が出て行くばかりなのです。ゆえに、予算を割きたくない → コストカットできる民間に委託する → 質が下がるなどの負の連鎖が生まれたりするのですが、グッズとかは販売できるはずです。そっちの方面から考えて行くのもありでしょう。④でコンピの販売とか書いているのはそのためです。運営費の問題がある程度解決すれば、図書館はもっとアクティヴに進化して行けるはずです。

もうひとつ。もしあなたがビル・ゲイツ並みの金持ちになったと夢想して。そんなにお金を持ってても何をすればいいかわからないよと感じたら、迷わずこの「音楽図書館」を作ってください。きっと世界の歴史に残る大偉業となるはずです。それくらい、この図書館の意義はあります。

そんな日が来ることを願いつつ、たくさんの可能性を示唆して、ここで終わりたいと思います。音楽図書館だけでなく、現行の図書館についても議論のたたき台となる内容だと、私は思っています。


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オラシオ

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