結婚相談サーヴィスでポラジャズを

今年の3月末まで、公共図書館に委託会社の契約社員として働いていました。その会社と自治体との業務契約要項に「定期的に研修を行い、スタッフの技能向上に努めるべし」っていうのがありまして、私も例にもれずいくつか研修に行かされたんです。

図書館業務には直接役に立たないようなのも多かったのですが、そんな中のひとつに「POPの書き方」というのがありました。参加者は当然と言えば当然、ショップ系の人ばかり。一緒に行った同僚は「何の役にも立たない」とブツブツ言ってましたが、実はこれ、音楽ライター的にはけっこう「当たり」の講座だったんです。

その講師の方が言うには、POPを書く上で大事なのは2つ。1つは「普段一番よく質問されることを書く」。2つ目は「ストーリーを作る」

この頃、自分が音楽ライターとしてなんだか伸び悩んでいるような気になっていて、特に「ちょっとオラシオさんの文章はわかりにくいんですよね・・・」と言われるのがコンプレックスになっていまして。そんな時だったので、講師の方の言っていたことが現状打破の手掛かりになったんですよ。以後は仕事の際、必ずではありませんが、この2つを念頭に置いて書いています。

なお、図書館の仕事には役に立たないと書きましたが、それも違います。図書館には「企画展示」というものがありまして、そういう時にPOP状のものを書きますし、POPでなくても、館内案内などのサインなどについて考えるきっかけにもなります。マンガ『暗殺教室』ではありませんが、良い図書館員ほどよろずを活かすのです。

さて、脇道に逸れまくっています。

私が音楽ライターとして一番質問されるのは「ポーランドのジャズにはまったのは何がきっかけだったんですか?」です。もう何百回も訊かれています。いろんなところにその回答を書いていますが、ここでまた改めて。

中学の時から聴き始めたジャズ好きが高じて、東京に住んでいた社会人時代は給料のほとんどをヨーロッパのジャズとかブラジル音楽とかにつぎこんで浴びるように聴いていました。でも、人の聴ける量ってしょせんキャパがあると言うか、ある時ふっと飽きたり疲れたりすることがあるんですよね。錯覚に過ぎないんですけど、どれも同じに聞こえてくるんです。そこでちょっとジャズを離れて、前から気になっていたブルーグラスに行ってみました。

別ジャンルに行ったからと言ってCDやレコードが要らなくなるわけでもなく、レコ屋通いは続きます。東京を離れる少し前、いつものようにブルーグラスの中古CDを漁りに行って、ほんの気分でひさしぶりにジャズのコーナーにも行ってみたんです。

中古ショップって、基本的に「A~E」みたいな感じで名前のアルファベット順に仕切りを作ってまとめているのはご存知でしょうか。当然たくさんいるアルファベットと、極端に少ないものが分かれます。Zとか、とても少ないです。

その時Zのコーナーにさびしく入れられてたのが、私がポラジャズことポーランドのジャズにはまるきっかけとなったアルバム。ベテランの天才作曲家でサックス奏者「ナミさん」ことZbigniew Namysłowski ズビグニェフ・ナミスウォフスキの『3Nights』という作品でした。

私はマイノリティなものが好きなので、まず「Zの棚にさびしく収まっていた」のにキュンとしたんでしょうね(笑)。でも、それだけではこのアルバムを買わなかったと思うんです。本作には以下の条件が揃っていたんです。

1.ライヴ・アルバム
2.3枚組
3.読めない言葉(ポーランド語)がたくさん書いている

ライヴで、~枚組で、知らない言語。すべて私が大好きな要素です。正直言って、内容が期待できるとかそんなのは二の次で、ただただこのアイテムが欲しかった。とりあえず耳にしてみたかった。結果、その時の自分にものすごくしっくり来るものを感じてのめり込み、今に至るです。

この時のことを説明するたびにいっつも思うんですよ。これって、結婚相談サーヴィスの候補者検索みたいだなって。今はまず会ったりする前に機械に希望条件を入力したりして、候補者をマッチングさせるところからはじめるんですよね。模擬でやってもらって、それから入会するかどうかを選んでもらうとかいう会社もあるみたいですね。

で、私はそこに上の3つの条件を入力して出てきた候補のうちからナミさんのアルバムを選んで出合ったと。それがきっかけで生涯の伴侶(と言うか隷属先?)を得たというわけですね。

これ、ポーランドジャズに限らずこういうサーヴィスが確立されればそれはそれで面白そうですね。例えば中欧、ピアニスト、美メロと入れたら候補作やオススメ・アーティストがずらっと出る。少し試聴も出来て、気に入ったものは「お気に入り」にメモしておく。

ネット全盛の今の世の中って「なんでも調べればわかる」ということになっていますが、調べる側のスキルが案外浸透していなかったり、結局調べる時に最低条件となる情報がなかったら無理だったりして、「なんでも知る」ためにはそれなりに高いハードルを越えなければいけないんですよ。特に音楽の分野では「あいまい条件検索」はまだそんなにシステムが確立されていないような気もします。と、また元・図書館員っぽい話に戻ったところで・・・。

とりあえず、私のポラジャズとの出合いは以上でした。あんまりドラマティックでもないですよね。これ、彼女とか奥さんとの出会いのエピソードを話しても他人にはピンと来ないのと似てると思うんですよ。その体験自体は言葉にすると結構平凡だったりしますからね。私の場合は、父に部屋に閉じ込められ爆音でエリック・ドルフィーを聴かされた音楽開眼の話の方がネタになります。みなさん、笑いますもん。

でも、結婚相談サーヴィスみたいな音楽検索システムができれば、私みたいな出合いをする人が増えるかもしれませんね。それは、半分人生をダメにするってことでもありますけど(笑)

では最後に、ナミさんの3Nightsの頃の演奏を聴いていただきましょう。アルバムではベースがウッドベースなの以外は、だいたい編成が同じです。


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オラシオ

コメント2件

「よく聞かれることを書く」「ストーリーをつくる」いただきました!
この2つ、ほんとうに使えますよ!
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