稀勢の里の引退に思うこと

稀勢の里、引退しちゃいましたね。

私は相撲ファンじゃないので、彼がどれだけすごい力士だったのか、またはそうじゃないのかとか全然知らないのですが、個人的には、もうちょっとその、どうにかならなかったのかなあと思っています。

「どうにかならなかったのか」というのは、毎場所毎場所出場するのかしないのかやいのやいのと責め立てるんじゃなく、1年くらいじっくり回復期間をあげれば良かったんじゃないの、ということです。

私はアメリカンフットボールの最高峰NFLが好きでよく見ているんですが、NFLは選手のケガの管理や安全への配慮がほんとうに徹底しているんです。ケガした選手の出場の可能性を細かくカテゴリ分けして登録してリーグに提出しないとダメだし、どんな治療をしているのかもちゃんと発表しないといけないようになっています。

何より際立っているのは「根性論」的な考え方はむしろ嫌われるというムード。たとえば選手が「あの時オレは脳震盪の影響が残っていたが、チームのためにそれを隠して試合に出たぜ」とか言おうものならファンからもチームメイトからも総スカンを食らいますし、リーグから選手個人やチームに対して罰金も科されます。

昔は死人もパカパカ出ていたというハードな競技なので、「ケガしてでも出るのは悪」という環境づくりに努力していても、相変わらずケガ人はパカパカ出るし、先に書いた「カテゴライズ」により、最初の試合で重いケガを負い「シーズン全休」の宣告をされてしまう選手もいます。でも、ケガした後のサポートがほんとうにすごいし、年々進化していると思います。

アメフトは、現代アメリカ文化に大きく根付いているスポーツなので、教育的な配慮もあるのでしょう。無理して頑張る空気が当たり前になってしまったら、子どもがケガをおして競技を続け、体を壊してしまいますよね。

でもそれ以上に、選手はリーグの宝なのだからできるだけ選手生命を長く、フレッシュな状態でプレイしてもらいたいという「選手ファースト」のスピリッツがあるのでしょう。

稀勢の里も相撲の世界の宝だったはずなんですけど、ファンじゃない者がニュースでチラ見する限りでも、毎場所「出るか・出ないのか」が話題になっていたし、ケガをおして出て負けが込み、成績がどんどん悪くなるどころかケガまで悪化させるという負の連鎖が続いていました。

うーん、誰がどう見ても、稀勢の里はしばらく相撲が取れない体になっていましたよね。アメフトなら間違いなく「シーズン全休」処置が採られ、チームのドクターセクションが全力を尽くして完治に向けて彼の治療に取り組んだはずです。

でも相撲は、出るか出ないかはずっと力士本人の問題にされてるし、部屋(チーム)が彼に対してどれだけのことをしてあげているのか全然わからない。そして、出なけりゃ出ないで「横綱なのにこんなに休場を続けて」と責められ、出たら出たで根性だけではどうにもならない状態なのでケガを悪化させてしまう。

こんなの、あまりにも孤軍奮闘じゃん。

相撲は国技なんじゃないの? 青少年の教育にも尽力しているんじゃないの? 横綱はこの競技の宝なんじゃないの?

他のジャンルならチャンピオンにあたる地位にまでのぼりつめたのだから、稀勢の里はすばらしい才能の持ち主であったはずなんですが、結局引退に追い込まれちゃいましたよね。

ニュースを見ていた誰もが「稀勢の里、大事にされてるな」なんて一瞬も感じなかったはずです。

彼が横綱になり、ケガをし、そして引退するまでに起こったことのすべてが、はっきり言ってスポーツのていをなしていませんでした。ファンの姿勢も含め。NFLファンのアメリカ人ならきっと「スモウリーグはなんでヨコヅナを守んないの?」と言うでしょう。

「そんな競技があるんだ?」とバカにされるような設備も環境も整っていないマイナースポーツの話じゃなくて、国のシンボルとされるような分野なんですよ。

八百長問題があって、相撲のイメージっていったんすごく悪くなったのに、きっとクレバーな天才広報担当がいるのでしょう、スー女とか新しい若い相撲ファンが増えて、盛り返しましたよね。

そのこと自体はすごいなあと思って見ていたんですが、だからって例えば自分の子どもを安心して預けられる世界になってるかどうかと言うと、それは二の足を踏むという親御さんがほとんどなのでは。

体罰問題とかもさておき、稀勢の里みたいに、何かあった時に守ってくれない感じがするんですよね。国技だ伝統だとは言っても、このままでは相撲は決してアメリカにおけるアメフトのようにはなれないと思います。

アメフトは、アメリカ人親御さんの誰もが「アメフトをやって欲しい」と思う教育的プラットフォームでもあるし、現代アメリカ文化の要の一つでもある。ひるがえって、相撲はどうですか?

何度も書きますが、アメフトなら稀勢の里は最低1年間6場所たっぷり休場させられていたし、稽古なんてさせなかったし、場所ごと(2ヶ月ごと)のショートレンジで出場かそうじゃないか迫るなんてことは絶対になかったはずです。無理して出たら、協会からもファンからもむちゃくちゃ怒られていたはずです。「いいからたっぷり休んで治療に専念して、フレッシュな強い稀勢の里として復活してくれ」と。そして、罰金が彼や部屋に課されたでしょう。ハードなスポーツであればあるほど、そういう徹底した危機管理システムが必要なんです。

私は相撲ファンじゃないし、稀勢の里のこともよく知りません。ただ、国技を自称する競技の、あまりにもおそまつな選手のサポート体制のせいで、ひとりの天才選手が引退せざるを得なかったことが、とても残念です。

もうちょっとその、どうにかならなかったのかなあ。稀勢の里のセカンドライフが幸せなものであることを願っています。

投げ銭制です。面白かったという方はぜひ応援よろしくお願いいたします。

この続きをみるには

この続き:0文字

稀勢の里の引退に思うこと

オラシオ

100円

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

フリーランスのため、みなさまのサポートは取材や執筆活動の貴重な経費とさせていただいております。また、サポートいただくとものすごく励みになります。最高のエネルギーです。よろしくお願いします。

ありがとうございます!SNSでシェアしていただけるとさらに嬉しいです!
30

オラシオ

コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。