鍵盤の国「波蘭」の豊かな孤独 ポーランドのピアノソロ名盤セレクション

*2018.12.30.Spotifyリンクを追加しました。

普段ポーランドの音楽を専門にライターをやっていると「ポーランド出身の有名人って誰なんですか?」という質問を必ず受けます。そしてこう答えるとみなさん「ああ!」って言ってくれるんです。

「ショパンはポーランド人ですよ」

今年は5年に一度のショパン・コンクールが開催された年でもありましたが、ショパンってとにかく「ピアノ」のイメージが強いですよね。作った曲がほとんどピアノ曲だけなのに遠い日本で最も愛されている作曲家で、本国ポーランドでは国の象徴のようになっているというのも何ともすごい話です。

そんな「鍵盤の聖人」ショパンの国だけあって、ポーランドのピアニストの演奏ってずば抜けてレヴェルが高いです。近年ではジャズ界隈の「ピアノ・ソロ」アルバムが大変な豊作。今回はそんなポーランドのすばらしいピアノ・ソロ作品をまとめてご紹介します。各アーティスト紹介の後に、そのアーティストの他の作品のSpotifyリンクも貼ってあります。

Improludes / Piotr Wyleżoł
コンテンポラリーなクィンテットに美音トリオにデュオ、ソロと最近とどまることを知らない活躍ぶりのピアニスト、ピョトル・ヴィレジョウの作品。

Moments / Sławek Jaskułke
今、私が一番注目しているピアニストがこのスワヴェク・ヤスクウケ。最近ピアノ・ソロを三連発したのですが、その2枚目がこちら。マイ・オールタイムベスト級の一枚。

Sea / Sławek Jaskułke
こちらはソロ三連発の3枚目。エフェクトかけまくってピチカートで弾いたチェロにしか聞こえない「海の音」。本当にピアノ? これはすごいです。
*3/23にCORE PORTから国内盤が発売されます!

Luminiscence / Sebastian Zawadzki
『幸せのありか』や『ワルシャワ蜂起』などの音楽で知られる映画音楽家バルトシュ・ハイデツキ御用達のピアニストで、自身も映画音楽を制作するセバスティアン・ザヴァツキの作品。

Komeda / Leszek Możdżer
最近は百花繚乱の気配があるポーランド・ピアノ・ソロ・シーンですが、数年前まではこのレシェク・モジュジェルの独壇場でした。ポーランドの現代の楽聖クシシュトフ・コメダの楽曲を美しいピアノ・ソロへと再構築したアルバム。これまでのコメダ・カヴァーものからは聞こえなかった音が聞こえてきます。

Kilar / Kuba Stankiewicz
南部の大都市ヴロツワフ在住のピアニスト、クバ・スタンキェヴィチによるヴォイチェフ・キラル曲集。キラルは音楽大国ポーランドの評価を高めた現代音楽の巨匠なんですが、映画音楽にもたくさん関わっているんです。本作は、そのキラルの映画音楽をピアノでカヴァーしています。

Mazurki / Marcin Masecki
美音系の天才たちの中にあって、ひとり我が道を行くのがこのマルチン・マセツキ。バロック音楽からブラスバンドまで、いろんな音楽を独自のひねくれたセンスで演奏する多彩なミュージシャン。主にエクスペリメンタル・シーンでの評価が絶大で、内橋和久さんも「イケメンで変態で天才や」と言ってましたよ。そんな彼がソロで挑んだ、ポーランド伝統音楽のリズム「マズルカ」。

Mazurki / Artur Dutkiewicz
マセツキのマズルカが変化球なら、このアルトゥル・ドゥトゥキェヴィチのは正統派。とは言えマズルカはリズムが命なので、この作品も、美しい以上にとてもダンサブル。まさにポーランド人にしか作れない音楽です。

Grand Piano / Włodek Pawlik
こちらは「ジャズ界のホロヴィッツ」という異名をとり、しかもポーランド人ジャズミュージシャンとしてはじめてグラミー賞を獲得したヴウォデク・パヴリクの完全即興ピアノ・ソロ。2枚組ゴールド・ディスクで、音質にもこだわった一枚。パヴリクのピアニストとしての深みがにじみ出た作品。

15 Studies for The Oberek / Pianohooligan
マセツキとドゥトゥキェヴィチのところで伝統音楽のリズム「マズルカ」について触れましたが「オベレク」というリズムもあります。このリズムをモチーフにソロを展開したのが、ジャズと現代音楽を又にかけて活躍する若手の天才ピアノフーリガン。これはソロ演奏をする時だけの芸名、言わば別人格で、アンサンブル・ジャズをやる時は本名のピョトル・オジェホフスキ Piotr Orzechowskiを名乗ります。

Experiment : Penderecki / Pianohooligan
彼は21歳でモントルー・ジャズ・フェス・ピアノ・ソロ・コンペに優勝しました。で、そのオジェホフスキが受賞後どんな作品を出すか、みんなが固唾を飲んで見守っていたところ、誰もが予想だにしなかった、ロンドンのクラシックレーベルDeccaからクシシュトフ・ペンデレツキ曲集でデビュー。再び度肝を抜かれたのでした。

ここまでは、この数年で出たピアノ・ソロの名盤をご紹介しました。あとは、ポーランド・ジャズ史に残るソロものをいくつか。こちらもすばらしいです。今のピアノ・ソロ・ムーヴメントの根っこがここにあるのを感じとっていただけるはずです。

Winter Flowers / Adam Makowicz
70年代はじめから、ミハウ・ウルバニァク Michał Urbaniak、ズビグニェフ・ナミスウォフスキ Zbigniew Namysłowski、トマシュ・スタンコ Tomasz Stankoらの信頼が厚かった超絶ピアニスト、アダム・マコヴィチ。この作品は彼の数多いリーダー作の中でもダントツの、チェコ録音盤。

Piano / Vladyslav Sendecki
現在はドイツで活躍中のヴラディスラフ・センデツキ。ファーストネームは本当はポーランド語のWładysław ヴワディスワフですね。70年代はヴァイオリニストのMichał Urbaniak ミハウ・ウルバニャクの変態プログレジャズはじめ数々のプロジェクトで鳴らしましたが、近年はこのアルバムのようなピアノ・ソロの傑作も何枚も出す名手となりました。ちなみにこの動画の曲はJohn McLaughlin ジョン・マクラフリンの曲です。

Polish Radio Jazz Archives Vol.10 - Piano Solo / Mieczysław Kosz
東欧のビル・エヴァンズと呼ばれた天才ピアニストがこのミェチスワフ・コシュ。若くして自ら命を絶ってしまうため、残された録音がものすごく少ないのですが、彼の演奏は日本のミュージシャンにもとてもファンが多いのですよ。

いかがでしたか。さすがはピアノの国、ショパンの国という感じですね。特にここ数年がピアノ・ソロもののリリースがヤバいので、ぜひいろいろ聴いてみてください。

オマケ。クラシックの世界で多くの尊敬を集める現代のマエストロ、クリスティアン・ツィメルマン Krystian Zimermanのショパンのバラードを。これぞ波蘭。


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