ポーランドで「パートナーとの距離感」について考えた

2週間くらいポーランドに取材に行ってきました。

主な目的はジャズフェスをがっつり取材してくることでした。知り合いのミュージシャンがたくさん出演するので、そのみんなとの再会も楽しみでした。

2014年にはじめてポーランドに行った時はそうでもなかったのですが、今回改めて感じたのは「こっちの男性ミュージシャンって、会場やツアーに彼女や配偶者を連れてきていることが多いなあ」ということでした。

これはポーランド人だけに限らず、ヨーロッパの男性ミュージシャン全般に言えることかもしれません。日本ツアーに彼女も同行してたりする。

日本の男性ミュージシャンがツアーに彼女を連れて・・・ってちょっと考えにくいですよね。やっぱり、日本とヨーロッパでは人間関係に関する考え方が根本的に違うのだろうなと思いました。

また、せっかく付き合っても、忙しいミュージシャンだと演奏活動に飛び回っているわけです。会えない時間が増えると、人は別れることが多い。それを考えれば、パートナーと一緒に来るのはある意味合理的なやり方だとも思えます。

イチャイチャしやがってとか見せつけやがってとか、周りのポーランド人の誰も思ってないようなので(笑)、この国ではこれが普通の姿なんだろうなあと推測しました。

また、単に音楽の才能がある者はモテるという単純な話でもあるような気もします。音楽の能力があるのになぜかモテないと嘆いている日本男子がいたら、ヨーロッパに行け!と強く薦めたいですね。

一方で、そうしたカップルを見て、こんなことも考えました。

結婚するなりしないなり、とにかく一生一緒にいようと考えたその二人は、きっと彼女の側が彼の音楽活動をサポートするようになって行くのだろうなと。

と言うのも、私が知っている限り、ミュージシャンの彼女や妻、または家族がマネージャーみたいな裏方をやっているパターンがものすごく多いからなんです。

ひとつにはヨーロッパにおける「芸術」というものに対するリスペクトの大きさもあると思います。家族やパートナーが、芸術の才能という特別な力を与えられた者であるならば、それをサポートしたいと思うのがごく自然な流れだという文化が根付いているのでしょう。

あくまで印象論なので、ここで書いていることがヨーロッパの実際かどうかはわかりません。でも、そういう価値観がバックグラウンドにあるのなら、すばらしいことだと思います。

その「家族」の背後には公的機関とか国とかがあるので、芸術や文化へのサポートが手厚いだろうことが想像できます。

一方で個人的には、愛し合うふたりがプライベートも仕事も一緒にって、お互い息が詰まらないのかなあと疑問に感じてしまうんですよ。

例えば、ある街で、いろんな文化的プロジェクトを手がけている敏腕女性プロデューサーに会って話を聴いてきたのですが、彼女は今、あるミュージシャンの妻でもあって、彼のマネージメントその他一切を引き受けているようでした。

「この3年間、毎日彼のことばっかり。子育てもあるし、彼は音楽のことしかやりたくないという人だし、もう頭がぐちゃぐちゃになってる。今あなたに言ったこともここにメモしとかないときっと忘れてしまう」

もちろん、そうやって才能ある人間をバックアップする喜びまじりのグチなのは理解できるのです。言いながら笑ってましたし。

でも、自分には無理だなあとつくづく感じました。

そのプロデューサーの彼女が「あなたは、パートナーいるの?」と訊いてきたので、大学時代から付き合っていること、ここ数年は一緒に暮らしていること、そして彼女の職業について説明しました。すると、返ってきたのがこんな質問でした。

「あなたたちふたりは、仕事でコラボレーションしてたりするの?」

それを聴いて、わあ、本当にパートナー同士で仕事をやる文化が当たり前になってるんだなと改めて思いました。

「えっ、コラボ? そんなのやんないよ」と即座に返しましたが、お互いの仕事にあまり立ち入らないようにしていること、独りの時間を意識して作っているということなど、私たちふたりが大事にしている価値観については、説明が難しいと思ったので言うのはやめました。

まあ日本でもありますよね。男女どちらでもいいんですが、片方が売れっ子クリエイターになって、そのパートナーが自分の務め仕事を辞めて相方の裏方になったりするパターン。

大事な人の大事なことを他の人に任せられないという気持ちなのかもしれませんね。

もちろん、私たちも相手の仕事が忙しかったら家事を優先して担ったり、どちらも疲れていたら一緒にサボることを互いに許し合ったり、そういう意味では支え合っているとは思います。

でも、その支え合いを仕事のレベルにするのは無理です。

たぶん私たちふたりは、心のどこかで「独りで生きて行く」ということを基準に人生を生きているのだろうなと改めて気づきました。実際、彼女とは仕事のパートナーとして一緒にやれる人だとは思えない(笑)。向こうもそう思っているはずです。

それは相手の仕事について敬意を払っていないということと違いますよね。あと、四六時中一緒なのはかえって関係がおかしくなりそうな予感があります。

私生活も仕事も含めてがっつり全力でサポートしていくという愛もあれば、私たちのように適度に距離を保っているほうがうまくいく愛の形もある。言い換えれば、「愛する」という行為は感情のことではなく、自分にとってのその形を見つけていく作業のことなのかもしれませんね。

ポーランドを2週間旅して、自分が大事にしているものを改めて認識するきっかけになったという話でした。

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オラシオ

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オラシオ

ライター、コラムニスト。青森市在住。『中央ヨーロッパ現在進行形ミュージックシーン・ディスクガイド』(DU BOOKS)監修。コンピCD『ポーランド・ピアニズム』『ポーランド・リリシズム』(コアポート)選曲・解説。ご依頼はaladyhasnoname@yahoo.co.jp

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