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ポーランドと日本の架け橋 若きピアニスト横山起朗さん 前編

昨年ワルシャワに行ったとき、物凄い偶然で当地に留学している青年に出会いました。その出会いのエピソードについてはまたいずれ書くとして、その青年、横山起朗(よこやまたつろう)さんがとても面白くて才能あふれる若者だったので、ぜひご紹介したいとずっと思っていました。

彼のような未来の可能性に満ちた人がポーランドで学んでいるという事例は、これから両国の関係が密になって行くうえでとても大切なんじゃないかと思いますし、もっとシンプルに、芸術の道を歩んでいる若者のことを知るのもなんかポジティヴな気分になれて良いのじゃないかと。

今、内橋和久さん、akikoさん、クリヤマコトさん、小曽根真さんなど主にジャズシーンを中心に日本とポーランドの間の架け橋がどんどん太くなって来ています。この横山さんもやがて、架け橋を架けてくださるでしょうか。夢が広がりますね!

はじめて彼とお会いした時にワルシャワで交わした会話は数分で終わってしまったので、改めてインタヴューさせてもらいました。詳しいプロフィールは後編の最後に書くとして、まずはかんたんにご紹介します。

横山さんは宮崎出身で武蔵野音楽大学所属、いまはワルシャワの名門音楽大学ショパン音楽アカデミーに留学し、ピアノを学んでいます。作曲にも興味があり、独学で作曲を学んでいるほか、即興演奏にも着手。そして、ここが面白いのですが、彼には素晴らしい文才もあり、月刊ショパンに「ポーランドに花束を」というエッセイの連載を持っており、時々Facebookにアップするショートショートもとても味わい深いタッチで、ただものじゃないところを発揮しています。

どんな若者なのでしょうか。いろいろ訊いてみました!

オラシオ(以下オ):ご出身は宮崎市なんですよね。どんな街ですか?
横山さん(以下横):太陽とフェニックスの樹々にあふれています。少し車を出せば、海を見ることができます。深い青色の海なので、一段と白波が冴え、とても綺麗です。離れれば離れるほど好きになって行きました。

オ:おっと、いきなり文学青年らしいところが出ましたね。表現が詩的です。では、ちょっと突っ込んで趣味とか好きな食べ物とかも訊いてしまいましょう。
横:趣味は特にないのですが、写真を撮るのは好きです。あとは、お酒をかっくらうことでしょうか(笑) 食べ物で好きなのは寿司です。帰省の折には必ず家族で行きつけ寿司屋に行きます。ここの寿司屋は本当に美味いです。あともうひとつは、母の作ってくれるうどんのドリアです。ホワイトソースとうどんとチーズの相性が絶妙です。

オ:うどんのドリア!それは食べてみたいですね。ご実家近くのお寿司屋にお母さんの手料理。横山さんはご自分のバックグラウンドを大事にされているようですね。

オ:写真と言えば、結構いいカメラを持っていましたよね。Facebookでアップしている写真もセンスがあって、才能のある人は何でもレベルが高いなーと思いながら眺めています。写真を撮る時にこだわっていることとか気をつけていることとかはありますか?
横:以前、カメラの詳しい友人に「物語のある写真を撮ると良い」と教わりました。なかなか難しいのですが、被写体の背後に物語を感じる写真を撮るように心がけています。

オ:「物語」と言えば、何と言っても横山さんが印象的なのはすごく味のある文章を書くということです。ワルシャワの郵便局ではじめて会ったとき、もし横山さんが「月刊ショパンで連載をやることになっています」と言わなかったら、僕の方でもそのまま「親切な人だったなあ」でまた連絡とることはなかったかも知れないんです。横山さんは、音楽と同じように文章も書いていきたいんですよね。どうして文章を書くようになったんですか? また、どんな文章や作品を書きたいのでしょうか?
横:正直なところ、いつの頃から文章を書き始めていたのか、覚えていません。私は長い間、ピアノを弾いて、好き勝手に作曲をしてきました。その延長線上で、いつの間にか文章を書き始めたように思います。ポール・オースターという作家の作品について、ある評論家が「彼の文章からは、旋律、律動、和声、といった音楽を感じる」と述べていました。私が思うに、文章と音楽はどこか通じ合うところが多いように思います。旋律という意味であるメロディーという言葉の由来も、古代ギリシャで歌曲の意味であるメロスと、詩の意味であるオードから出来た言葉だと聞いたことがあります。音楽と言葉はどこまでも繋がっているのではないかと思います。

オ:さすが文学青年。現代文学好きには必須と言われるオースターの名前が出て来ました。横山さんの好きな作家や愛読書は?
横:沢山あって挙げきれないのですが、最近では、ポウル・ボウルズ氏の作品がとても良かったです。作曲家としても活躍した多才な人でした。あとは、リチャード・ブローディガン氏の「愛のゆくえ」が忘れられません。須賀敦子さんの随筆も好きですね、文体が美しいです。
オ:うーん、僕はほとんど読んでない(苦笑)。挙げられたのを目にするだけでも横山さんが本当に文学好きなのが伝わってきますね。

オ:今、音楽の道を目指そうという若者がどれくらいいるのかわからないのですが、そこに行く前にその人はどんな人だったんだろうというのが僕は気になるんですよ。ピアノを真剣に学びはじめる前は、何になりたかったですか? その頃、どんな人生を思い描いてましたか。
横:ずっとお笑い芸人になりたかったです。人前で裸になって笑わせたりしていました。今でも、その欲求があるような、ないような。
オ:裸ですか。結構笑いに根性入ってますね(笑)

オ:さて、男の子と言うと避けては通れないのが「スポーツ」なのですが、好きなスポーツはありますか?
横:スポーツはあまり興味がないです。中学生のときに、好きな女の子がサッカー部の男子に捕られ、それからスポーツが嫌いになりました。脚が速い男子がモテる意味が分かりませんでした。食い逃げには役にたちそうだね、と嫌みを言ったら殴られそうになったことがあります。つまり、ひがみです。
オ:気が合いそうです! 僕もスポーツは全然ダメで。そしてひがんで「こいつら(=スポーツができる男子)の天下はせいぜい高校までや!」とか言ってました(笑)

オ:さて、横山さんはピアノ留学のかたわらライターとしてもご活躍とのことですが、どういうお仕事をされているんですか?
横:私の伯父がコラムニストでして、彼の発信するメールマガジンの中で、短編小説を読み物として書いていました。それは楽しかったですね。ツイッターなんかに、感想が書かれる時があって、それを読むのがおもしろかったです。あとは、バーテンダーや、ベルギービール専門のバーで働いてみたり、バーでピアノの演奏をしたり、演劇用の音楽を制作したりと、色々していました。

オ:何と、メルマガとは言え、もう作家デビューされてるんですね! 道理でFBの投稿のショートショートが手馴れているわけですね。若いのにすごい。バーで働いていたというのもカッコいいですね。 僕は40近くなるまでほとんどバーみたいな感じのお店に入ったことがなかったんですが(笑)、そちらの世界は横山さんの方がよっぽど大人ですねえ。そうそう、僕も若いころ演劇用の音楽を作っていたので、ほんとに横山さんには親近感をおぼえますね。


さて、前編はここまでです。横山さんってどんな人なんだろうって、興味わいてきましたか? 後編ではいよいよ横山さんの音楽観やワルシャワ生活についてお訊きします。お楽しみに!

後編はコチラ↓


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