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「ソロの前に緊張してしまう」あなたへ「天才の言葉:vol.1」

今回は僕の「音楽・楽器」の成長段階での例え話が多いので、音楽関係でない方は、大きくアイデアの外枠だけを自分向きに「自主変換」してお役立ていただければ嬉しく思います。

プロローグ

僕は今46歳ですが、人間的にもまだまだ未熟者ですし、楽器や音楽に関しても未だに未熟者で、日々少しづつ「成長」していけたらと信じながら様々な方のお言葉や行動から勉強をさせていただきながら毎日を重ねさせて頂いておりますが、

とかく「上級のレベルの領域でご活躍の方」というのは、

時に首をかしげるような「意味がわからない言葉」というのを発せられる事が度々あるものでして、

その紡ぎ出される「意味の判らない言葉」にも2種類ありまして。

例えば音楽の世界だと

「天才」の部類の方々と「凡人・復活者」の方々の双方で

それぞれ別の意味での「意味のわからない言葉」を紡ぎ出されたりします。

どちらも「学びの多い言葉」いわば「成長の種」とでも言いましょうか、受け取り手しだいでその「種」が芽吹いたり「種」のまま記憶から消えていったりいたします。

今回は、そのうちの「天才の言葉」の方に「焦点」を当てて少し書き始めていていきたいと思います。

その前に、ふと思い出したので「関係ありそうでなさそうで、なさそうで有りそうな」どうでもいい「言葉」の話をひとつ挟ませて頂きます。

「ファッハ キネージッシュ」という斬新な言葉

以前ドイツで、演奏会でお偉いさんが急に「スピーチする」と言い出して、急いで機械類を一式借りてきて「何だか回せる部品が無数についたアンプ」や「有線・無線のマイク」などと「巨大なスピーカー」をつなげて設置するという作業を手伝った事があったのですが、その時に始めようにも良くわからなくて説明書があったので一緒にいたドイツ人に

「この説明書ドイツ語だから読んだらいいんじゃない?」

と渡したら、彼が「前に似たような事やったことあるし、そもそも、こんなの読んでも意味がわからないよ、こういうのをファッハキネージッシュで書いてあるってドイツでは言うんだよ」と読まないで急いで作業を進めた。

なんだその「ファッハキネージッシュ」って?

「Fach(ファッハ)」とは「専門」という意味があり、

「Chinesisch(キネージッシュ)」は「中国語」という意味で、

あわせて「その筋の中国語」要は「意味がわからない言葉の羅列」を指す造語なのだそうだ。機械関係の説明書などを「全然意味わかんねぇよ」と皮肉って使っているようです。

日本語でも「説明書」って読んでも意味わからないもの多いですよね?

逆に「書かずとも意味が判る物をあえて書いてある」という類の物もありました。

30年近く前に日本で大学生に成りたての頃に、寮で「嗅ぎタバコ」という洒落た物を嗜む方がいらして、その「嗅ぎタバコ」の箱の説明欄に

「鼻に指を入れないようにご注意下さい。見栄えが悪いです」

と書かれていたのも、ついでに思い出しましたとさ。

さて、本題に入ります。

「天才」の人の放つ言葉

「天才」の人の言葉の方は「意味がわからない」という事よりも「アドバイスとして機能しない」といった部類の方が多いかもしれません。

とある世界的に有名なトランペット奏者の講習会を聴講しにいったときに、質問コーナーでこんな質問がありました。

「合奏中に自分のソロの前になると緊張して思うように演奏できません、どうすればいいでしょうか?」

というような質問だったと思うのですが、その回答は

「それは、君の仕事じゃないって言うことだよ。僕は緊張などしたことがない。むしろソロの前は楽しみで仕方がない。そういう人がやる仕事なんだよ。」

というような回答でした。

ある意味「おっしゃるとおり」の「ど正論」です。

ですが、これは「質問の本質」を見事に突いてはいるのですが、その質問者のような「凡人が頑張って成長する為」には全く役に立たない回答です。

プロになる為に、あえて「役に立つように解釈」するとするならば、

「そんな全く緊張しない人たちと、今後は勝負して行かなければいけない」

という「現実・現状把握」として受け取り「ならどうする?思考」で「自分に有効な打開策」を考えて実行しないといけないと受け取る事が出来ます。

が、たいていの場合欲しいのは「そんな高いレベルの答え」ではないでしょう。

他にも、大学の頃にとある先生の「トランペットのレッスン」で、高い音が苦手な生徒が「先生この音が出ないのですが、どうすればいいでしょうか?」と質問したら、「えっ?ちょっと楽器貸してみて」とおっしゃってその音を「パンパカパ~ン」と意とも簡単に吹いて見せて、

「おれ出ちゃうからよくわからん、むしろ何で出ないんだ、その音を出したいと思ってプーって吹けば出るんだよ、ほら、パンパンカパーン」

と諭してらっしゃいました。

「天才との対峙」は、こういった悲劇・喜劇が度々起こってしまうのです。

こういった大多数の方が感じてしまうであろう「凡人の悩み」の類は、同じ「凡人で努力克服してのし上がっている人達」に聞かないと、

直接的な「質問者が求めている類の回答」

は、なかなか得られないでしょう。

例えば僕が「ソロの前の緊張の克服」に対して簡単まとめたとして

「究極の凡人の中の凡人」の僕の場合の「緊張の克服」の方法

として答えるならば

「緊張する」という事は「特別なこと」と認識しているか「出来ないかもしれない」という「不安」から来るか「自意識過剰」から来るものが大半で、

具体的な解決策は、その演奏する段階の前に

「十分な準備をしておくという事に限る」です。

仮に練習して10回吹いて10回出来る事、更に100回吹いて100回出来る事にしておけば、恐らく「緊張しない」と思われますので、それまで練習・準備するというのが一番の解決策でしょう。

ですが、その過程で大切なのは

「なぜ?演奏出来ないのか?どこが問題なのか?どこは確実に出来るのか?」などを、「よく考えて、分割して出来ない所を出来るようにする練習をすること」が大切です。

逆に言えば一番いけないのは

「何も考えず、ソロを最初から最後まで吹いて、出来た出来ないで○×をつける事」です

これは「練習」ではなくて、

ただの「博打」です。


「出来ている所・出来る所」は、

一旦「演奏・練習する必要がない」のです

分割して「出来ない所」を集中的に「本当の出来ない理由」を見つけてそれを「あらゆる手を使って克服」

それが出来たら「既に出来る所」を足してみる

「それで通して出来なかったら」更に

「なぜ分割したら出来て、つなげたら出来ないのかの理由・問題点」を検証

して、その解決策が見つかったら再度トライする。

少なくとも僕はそうです。

で、仮にその「緊張するソロ」というのが

10回吹いて1回しか出来ない場合

は、トランペットの場合

「書かれてある音符が既に出せる音域の高さの音符」

であるなら、それを信じて一旦上に書いたように分割して音を覚えて練習

※音の種類を覚えるための時は、指だけや吹いたとしてもオクターブ下げるなど無駄な頑張りは排除する

してみて「10回中何回になったか?」を、練習量と自分の実力を考慮して客観的にみて「10回中0~数回」など確実性が

「さほど上がっていない場合」

は、本番までの日程と自分の伸び代を考慮して

「自分に不釣合いなソロ」と判断したならば、後々に出来るようになる事を誓って、自分より「ソロに見合った人」に頼みます。

ですが、短期間で10回中5回くらい出来るようになったのなら「なんとか打開策はないか考える(マウスピースや楽器を変えるなどの練習以外の策も勿論含めて)」

10回中10回駄目でも「どうしても自分が吹かないといけない場合」は

「ならどうする?思考」で

「少し簡略化して自分の出来るレベルのソロに書き直して演奏」

させていただいて、今後の成長の確認の為の課題として

その「出来ないフレーズを記憶」しておいて「なぜ?何が足りなく演奏できないのか?」を真剣に考えて

「今後の成長に役立てる」です。

そして、実力と別の「自意識過剰」から起こる「緊張」は、根本的な「性格」ですし「自分の評価」を「他者」に依存した状態なので

「評価は自分がつけるもの」

という、他者と無関係で自分とだけ向き合えるようになるように長期間かけて「人にどう思われるか」という事を「下らない考え事」の部類まで落とし込んでいくしかないでしょう。

というような回答になると思います。

とある「エピソード」

ある日、ドイツの大学でトランペットのレッスンを受けているときに、確か「緊張してしまう悩み」をぶつけてみたときだったと思うのですが、先生が「お前は、デングラーを知ってるか?演奏してるの見たことあるか?」と聞いてきました。

ヨハネス・デングラー氏とは、僕の目指す「理想のホルン奏者」のお一人であるバイエルン歌劇場の首席ホルン奏者で、いつ見ても「冷静沈着」なたたずまいで、そもそも生まれてこの方は

「緊張」という「状態」を「知らないで育った」のではないか?

と思うような、冷静・正確かつ豊かな音楽を持つすばらしい演奏家なのですが、

僕は「勿論しってます!!、あの人は緊張の「き」の字も知らないんじゃないかってくらい、冷静な演奏でうらやましいです・・・・」

というような感じで答えたら、先生はこうおっしゃった

「そうだろう、そう思うだろう。デングラーは俺の大親友だ、昨日も一緒にミニゴルフして遊んだんだが、みんなはお前が言ったように思っているだろうが、実は奴ほど毎回の本番で緊張してしまう奴はいなんじゃないかと思うくらいの「極度の緊張しい」なんだ。ただ彼は努力してそれを表に出さないようにしているだけで、実は未だに毎回の本番で緊張して震えてしまうのが彼の悩みなんだぞ、緊張は誰でもするんだ、その緊張とどう向き合うかだ。」

とおっしゃっていた。目からうろこであった・・・・

※デングラー氏については、以前に書いたので気になる方はこちらもどうぞ

別の尊敬する名プレーヤーの方から聞いた言葉

に、こんな言葉がありました。

「皆さん楽そうに演奏しているように見えて、大抵の方は実は苦労しながら演奏しているんだよ」

ときき、腑に落ちました。

勿論、本当に楽にナチュラルに楽器を操っている「本物の天才」の方がいるのも確かで、そんな「上には上がいる世界」で対等に仕事しないといけないのですから、自分の「弱点・弱み」を見せないように表面上「簡単でこんなの普通ですけど」という風に見せかけているだけ、

いわば皆「本気でかっこいい痩せ我慢の為の本気の努力」をされているという事なのかもしれません。

成長段階での「意味の判らない言葉」(天才は勿論特に凡人の苦労人・どん底から復活を遂げた方々のなにげない言葉)は、

ちゃんと心に留めておきましょう。


今回はもっと他に書きたいことがあったのですが、

またおいおい書いてゆきます。

では、

「千里の道も一歩から」小さな一歩が、結局確かな一歩!!

ということで、最後まで読んでいただいて、ありがとうございました!!

皆さんの「夢や目標」がリアルに叶いますように!!

堀江努



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