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年収 450 万円から 6 年で年収 1200 万円(+ストックオプション)(+副収入)になった話

※この記事は有料記事です。途中から、購入した方以外は読めなくなっております。


というわけで、書きます。趣旨としては、上のツイートの通り、何度かの転職を経て、年収をアップしてきたという話です。要約すると、プログラミング、英語、数学が私にはとても重要だったよ、あと、タイミングとかの運がよかったよ、ということになります。

話の詳細に入る前に、いくつかジェネラルな情報を書いておきましょう。

私は何者か?

科学計算総合研究所 という会社で数値シミュレーションと機械学習に関する研究開発や、プロジェクトのマネジメントをしています。タイトルの「1200 万円(+ストックオプション)」を得ているのは、この会社からです(詳しくは後述します)。

また、 ネイチャーアーキテクツ株式会社 という会社でも少しお手伝いをさせてもらっていて、タイトルの「+副収入」は主にこの会社からです(あまりコミットできていないのであまり詳しく後述しません)。

以降、おもに「現職」や「今の会社」と指すのは、科学計算総合研究所のことです。

この記事を書いた目的

この記事を書いた目的は、以下の通りです。
・私の収入とそれを得るまでの過程を共有する
・他の人が収入を開示するためのハードルを下げる
もう少し詳しく説明していきましょう。

私は、この資本主義というフレームワークの上で労働をする本質的な目的は、「お金を稼ぐこと」だと思っています。例えば、「今の仕事を無給でもやるか?」を考えてみてください。ほとんどの人は「ノー」と答えるのではないでしょうか。

それにもかかわらず、労働の目的たる「収入」というトピックは、ある種聖域の扱いを受けており、ごく親しい友人を除いて情報交換をする機会は限られているように感じます。前述の通り、労働の本質的な目的は「お金を稼ぐこと」ですが、その目的を達成するためにあまりにも情報が少なすぎる状況に違和感をおぼえます。皆が同じゲームをプレイしているはずなのに、ゲームのルールがまともに共有されていない。もしもっとよく共有されていれば、みんなもっとよく動けるのに。そんな思いがずっとあります。

そこで、収入に関する情報をなるべく流通させるべく、まずは私の情報を共有しようと考えました。また、「転職エントリ」に代表されるような、労働に関する情報がオープンに共有され始めている昨今の流れに加わる形で、「収入エントリ」がより盛んに共有されるといいなと思い、このエントリを共有するに至りました。

対象とする読者

この記事は、以下のような人に向けて書いています。
・企業に就職して 1 〜 3 年程度の、今後のキャリアパスについて考え始めている方
・転職を考えており、そのための戦略を練りたい方

また、直接の対象ではないですが、少し読み替えれば、
・就職活動を考えている学生の方
にも有用な部分があるかもしれません。

また、内容的に理工系のバックグラウンドを持った方になじみやすい記事ではありますが、他の分野の方でも参考にしていただける部分はあるかと思います。

この記事に書いてあること・書いていないこと

この記事に書いてあることは、以下の通りです。
・私の年収遍歴
・私がどのようなことをしてきたか
・私が現在どのようなことをしているか

一方で、この記事に書いていないことは、以下の通りです。
・どのようにすれば年収が上がるかの一般的な情報
・世渡りをうまくしていくためのノウハウ

言いたいことは、この記事はひとつの参考情報にはなり得るかもしれませんが、あなたの行くべき道を直接教えるものではありませんよ、ということです。

有料記事にした理由

もっとも大きな理由は ばんくし氏 の note 記事 に感化されたことです。年収エントリが世に広く流通してほしいとはいえ、それは私の利益を害さない範囲で、の話です。こういった話を公開すると、否が応でも「実力がないのに給料だけふんだくっている」と言われたり、「1200 とか普通にやってればもらえるっしょ。俺は〇〇で〜」みたいなマウンティングがあることは避けられないと思います。

基本的にはそういう反応もウェルカムなのですが、私の文章をロクに読んでいないにもかかわらず雑に自分が言いたいことだけを言ってくるような手合とはなるべく関わりたくないので、有料フィルタを設けさせていただきました。とはいえ 100 円なので、1200 万稼ぎたいんだったらこれくらい払うでしょ? と思っています(マウンティング)。

学生時代

さてお待たせしました。ここからが本題です。

私は地方の県の(トップではない)いわゆる「自称進学校」のようなところから、地方国立大学(旧帝大ではない)の理学部物理学科に進学しました。物理学科を選んだ理由も、特に物理を愛しているといったようなこともなく、たまたま進路希望調査の直前の模試で物理の点数がいちばん高かったから、くらいのものです(本来の得意科目は国語のつもりで、文学がとても好きです(ちなみに太宰と芥川がとても好きです))。

あまり真面目なタイプの学生ではありませんでしたが、何の奇跡か留年も浪人もすることなく、物理専攻の修士課程に行きました。大学では非線形・非平衡物理という、普通の人がおおよそ想像するような(宇宙とか素粒子とか原子核とか磁性体とか)ではなく、生物とか化学反応とか油膜とか粉とか、そういうよくわからないものを扱っている研究室で流体現象の研究をしていました(いちおうジャーナルに論文が通りました)。

この研究室は、実験と理論と数値シミュレーションはバランスよく調和すべきというような思想を持っているところでした。実際私も実験を元に理論(と呼ぶには心もとないような数理モデルでしたが)を作ってそれを数値シミュレーションする、というような形で研究のサイクルを回しており、このときに、数理とプログラミングって楽しいな、と思ったように記憶しています。プログラミングは、講義ではじめて C を書いて以来、研究で C、 C++、Ruby、 Java などを少し書いたことがある程度でしたが。

研究が楽しかったので博士進学も考えたのですが、最終的には進学をやめました。早く就職してお金が欲しかったというのもありますが、物理といういわば「なんでもあり」のフィールドで、自分が情熱をもって取り組める問題を作れなかったことが最大の理由のように思います。言い換えると、物理でよくある「これ、何に使えるんですか?」という質問に嫌気が差していたということでもあります。

そんなわけで、修士 1 年で就職活動をはじめました。やはり数理とプログラミングが好きなので、それらを扱える仕事に就きたいと思っていました。

就活は 2013 年度新卒のグループで、 12 月から 5 月頭くらいまでリクルートスーツを着てオンシャオンシャ言うような標準的な(?)タイプのものをやりました。が、受かったのは外資系メーカーと中小コンサルティング会社の 2 社だけでした。手書きのエントリーシートを書かせるような会社を切ったり、社員の方の受け答えがはっきりしないような企業を切ったりしたというのもあったかもしれませんが、それ以前に、明らかに周りの学生よりうまく「就活」をやれている感じはなかったので、順当な結果だと思います(若干ナメていたのもあったと思います)。結局、外資系メーカーの研究職に就職を決めました。

1 社目(外資系メーカー: 年収 450 → 475 → 500 万円)

この会社は外資系の自動車部品メーカーで、そこの研究よりの部分のシミュレーション手法開発とそのための実験をおもに担当していました。わりとやりたいこととマッチしており、仕事内容はとても楽しかったと思います。

この会社で特に有用だと思っている経験は、以下の通りです。
・自動車業界のなんとなくの構造が見えたこと(現職での取引先に自動車関連が多く、重要になっています)
・シミュレーションに関する、ただのユーザよりはちょっと深い知識(現職で重要になっています)
・日常的に英語で情報収集、資料作成、ミーティング、プレゼンテーションを行った経験(英語論文を読むときや海外の研究者とコミュニケーションをとるときのハードルが低くなりました)
・さまざまな人種の人と仕事をし、ネゴシエーションをしながらプロジェクトを進めていった経験(日本人相手だとしても、交渉をするのに役立っています)

特に最後に書いたプロジェクトの経験は重要だったと思います。上司もプロジェクトの直接のリーダーも外国人であるという中で、いかにコミュニケーションをとっていくかというのは当時とても悩みながら進めていった記憶があります。また、相手のお国柄か(国名は伏せますが)何かを頼んでも一言目には必ずといっていいほど「No」が返ってくるため、自分がお願いしていることがいかに相手のベネフィットにも繋がるかを理解してもらうということを強く意識するようになりました。このときの経験が、現職で取引先とプロジェクトを進める際におさえるべきところの勘所を見極めるときに役立っているように思います(まだまだですが)。

また、基本的には MATLAB を用いてプログラミングをしており、当時はレガシーな言語と思っていましたが(実際そうかもしれませんが)、のちに Python の NumPy・機械学習フレームワークを扱う際や Julia を書く際に役立っています。


ではなぜ辞めたかということですが、主な要因は以下の通りです。
・収入面での不満足感
・場所のミスマッチ
・価値が出せていないことへの焦り
・専門性に対する不安

ひとつめは収入面での不満足感が大きかったことです。初任給は 450 万円と平均から見ると高めでしたが、あまり伸び幅が大きくないことに加え、部署でエース級に活躍している私の尊敬している方が私とそう変わらない給与で働いているという事実を知り、絶望したということがあります。

ふたつめは場所のミスマッチです。これはプライベートなことなのであまり深入りはしませんが、妻(1 社目在職中に結婚しました)の職場が遠方にあったということもあり、通勤でお互い片道 1 時間半かかっておりこの生活は長くは続けられないと判断したということもあります。

みっつめは、自分のやっていることがきちんと価値に繋がっているのだろうかという不安に根ざした焦りです。私はシミュレーション手法の開発のプロジェクトをひっぱっていましたが(といってもほぼ 1 人のプロジェクトでした)、それで開発した手法をあまり社内で使ってもらえなかったということもあり、学生の頃に嫌気が差していた「これ、何に使えるんですか?」の再来となってしまっていました。

最後にはーーこれが最も大きい理由なのですがーー専門性に関する不安があったことです。外資系かつ業界ではトップ 3 に入る会社ということもあり、業務はある程度パターン化されているのですが、そのパターンに縛られるあまり柔軟性を失ってしまったり、汎用的な知見を得られないというケースが目立っていました(また社内用語・社内プロセスもとても特殊なものでした)。向こう 10 年ほどは安泰な会社だとは思いますが、その先はまったく見えず(会社全体として業績が悪くなくても日本から研究拠点が撤退するなどの可能性もありえます)、汎用的な専門性を得ることを重視したときにはこの会社に残り続ける選択は取れませんでした。

このとき思っていたことは、「会社の名前ではなく自分の名前で仕事をしたい」「転職したいと思ったときにどこからともなく声がかかるようになりたい」ということで、今でも前者は実現できてはいないとは思いますが後者についてはある程度実現できているように思います(現状転職は考えていませんが)。

2 社目(IoT・機械学習ベンチャー: 年収 550 万円)

そんなわけで、これからは機械学習が基礎教養だ! と思い(当時 2016 年なので、たいぶ円熟した感はありましたが)、機械学習を学ぶには機械学習を仕事にすればいいと考え、 1 社目の通勤時間などに Python と機械学習の勉強をして、転職活動をしました。Python で簡単な数値計算のコードを書いたり、MLP の深層学習の本 を読みながらフレームワーク(TensorFlow と Chainer を試しました)を使ってみたりして、最終的には論文の実装などもやっていました。

いくつか応募を出していたのですが、転職活動のために 1 日有給をとって話をした企業 3 社ほどの中で、実務未経験でも機械学習をやらせてくれそう、ベンチャーなので意思決定が早そう、当日に内定をくれたという理由で、2 社目を選びました。かくして、転職活動は(ほぼ) 1 日で終わりました。

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