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ブロガーが番記者になって感じた、浦和レッズの「ニュースバリュー」 【エルゴラッソ沖永雄一郎記者インタビュー後編】

少し前のことになりますが、久しぶりに、コンビニでサッカー新聞エルゴラッソを買いました。

きっかけは、ジェイさん(沖永雄一郎記者、エルゴラ浦和番)のツイート。

中を開くと、カラーの見開きが2つも!

新生レッズ始動。集った野心溢れる男たち

3年計画の2年目。”らしくない”補強は変化の証

開幕前というのもあると思いますが、浦和がこれだけ大きく取り上げられるのは久しぶりな気がします。

もちろん、記事はすべてジェイさんによるもので、新加入選手記者会見のレポートや補強分析が載っていました。

「男たちの決断。新天地への推薦状」と題した、福島春樹の記事もアツかったですね(注:福島は今オフに京都サンガへ期限付き移籍)。

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そんなジェイさんには、昨年末にインタビューをさせていただきました。2020シーズンを振り返った前編は、おかげさまで多くの方に読んでいただきました。

今回はインタビューの後編をお届けしますが、いわば「番記者のお仕事」編です。番記者になった経緯から、シーズン中の取材や執筆の様子、そして2020シーズンの浦和レッズとメディアについて、お話を伺いました。

※このインタビューは2020年12月22日に実施しました。

この記事は「旅とサッカー」をコンセプトとしたウェブ雑誌OWL magazineのコンテンツです。OWL magazineでは、中村慎太郎さん、宇都宮徹壱さんはじめ、個性豊かな執筆陣によるサッカー記事、旅記事を更新しています。Jリーグはもちろんのこと、JFLや地域リーグ、海外のマイナーリーグまで幅広く扱っています。

番記者の1週間

――番記者として、どういうサイクルでお仕事をされているのでしょうか?

シーズン中は、ホーム開催の試合が基準になります。練習を見てレポートを上げ、スタジアムで試合を見て、コメントを取りマッチレポートを書くサイクルですね。Jリーグ公式サイトの業務もあって、公式ページの「見どころ」や「戦評」は、基本的にエルゴラの記者が担当しています。コアなファンは公式サイトのマッチレポートはあまり見ていないと思いますが(笑)

J公式サイトは速報的な位置づけなので、監督や選手のコメントとマッチレポートは、試合が終わってすぐにアップしないといけません。マッチレポートは試合を見ながら同時進行で書いているような感じですね。

その後にエルゴラッソ本紙の仕事です。月・水・金曜に発行されるので、土曜日の試合であれば日曜の朝が原稿の締切になります。なので、翌日の朝までにマッチレポートと選手の採点・寸評を書きます。扱いが大きい場合はコラムが追加になることもありますね。

あと「レッズプレス」さんの「ツヅキック」はエルゴラの浦和番が担当しているみたいで、僕もシーズンが始まってから引き継ぎました。試合の翌日に都築さんと連絡を取って、電話で取材をする形です。

――結構ハードですね。特にナイトゲームだと大変ではないですか?

そうですね。例えば19時キックオフだと21時に試合が終わって、会見などを済ませるとスタジアム出るのは22時から22時半頃になります。公式用のマッチレポートは、試合終了から会見までの間に終わらせますが、コメントの文字起こしもしないといけない。

今は新型コロナの影響でスタジアムの記者室も使えず、すぐに退出しなければなりません。埼スタは近くに作業できるファミレスみたいなお店もないので、ベンチでPCをカタカタやっています(笑)。コメントを送ったら帰宅して、まずは採点・寸評に取り掛かります。採点寸評は基本的に、アウェイチーム分も含めてホーム側の番記者が担当します。

慣れてる人や試合がよく見えている人はすぐにさっと書けちゃうんですけど、僕の場合は22人全てを現場ではチェックしきれないので、試合をもう1回見返します。リアルタイムだけだとどうしても誤認があったり「この選手印象がなかったな」という選手が出てきてしまって、適当に書いて点数をつけるのは申し訳ないですから。

映像を見返して、良いシーン・悪いシーンを追加でメモして点数とコメントをつけます。そこからマッチレポートなりコラムを書くので、翌日の朝5~6時まで掛かることもありますね。ホーム連戦だと、ひっきりなしにプレビューとレビューを書かないといけないので大変です。特に9月のホーム3連敗のときは、ひたすら負け試合を書くことになったので精神的にもきつかったですね。

逆に、10月の終わりころ、アウェイ連戦のときは比較的ゆっくりさせてもらいました。2020年は新型コロナによる取材制限(1社あたり1名など)もあったので、アウェイで現地取材したのは開幕の湘南戦と、代打で担当したアウェイ横浜FC戦だけでした。そうなると自宅でDAZNで試合を観て、zoom会見に参加してコメントの文字起こしをする、というのが基本作業なので、ホームに比べると非常にゆっくりできます。

アウェイでも勝ち試合だったり、トピックがあるとコラムを書く場合もありますが、普通に負けるとそれもないので。2020シーズンは巡り合わせも悪くて、アウェイ戦で特別に書くことがほとんどありませんでした。逆に川崎の担当者は大変そうでしたね。

メディアにおける浦和の扱い

――2020シーズン、浦和レッズが大きく扱われたのはどの試合でしょうか?

少なかったですよね。カラーになったのは、シーズン初戦ルヴァンカップの仙台戦(○5-2)、10月のベガルタ仙台戦(○6-0)とセレッソ大阪戦(○3-1)くらいで、それ以外はなかなか扱いが小さくて、話題性にも乏しかったので追加コラムなんかは少なかったですね。

SNSでも「浦和の扱いが小さい」という感想が多かったと思います。ただエルゴラッソに限らず、メディアやサッカー界として、浦和のプライオリティが落ちてきているなというのは感じました。

例えば、2020年で一番記者が少なかったなと感じたのは最終節でした。同時キックオフになるので、日頃は空いていたら浦和に来ていた記者さんも自分のメインのところに行ってしまっていまう。他にも、川崎のホーム試合とかぶったときなども少ないなと感じましたね。

逆に開幕戦の湘南ベルマーレとの試合は、金曜日開催で1試合だけだったこともあってもの凄い報道陣の数で、さすがJ1だな、浦和だなと思いましたけど、それと比べると最終節は寂しかったですね。もちろん、会見などはリモートで済むからというのもあると思いますが。

浦和レッズの存在感が少しずつ薄れてきていて、色々な意味で立て直しをしないと、今の地位が危ういのではないかと思います。クラブも危機感を持っているからこそ色んな施策をがんがん打って行っているのだろうと思います。

――チームの強化はもちろんですが、勝ち負けに限らず、話題を振りまかないといけないですね。

最初にリモートで選手のインタビューをやったときは結構話題になっていましたけど、あれも「何とか露出をしないと」と広報の方が試行錯誤されてのことでした。他のクラブが取材を中止していてどうしようかって考えていたときだったので。あの時は「他はだめだけど浦和は取材できるみたいだからいってみよう」と、普段来ていない記者の方もこられました。

――クラブハウスの記者室に繋いだというやつですね。

当時はzoomが浸透していなかったので、最初はビデオ通話アプリで別室と記者室を繋いでいました。ただ、その後コロナに対しての認識も変わったりして、今は各自の端末で参加する形になりました。車やカフェからつなぐ記者もいますし、移動しなくていいのでzoom会見にだけ参加する方もいますね。僕は大原から近いので、練習後は自転車を飛ばして自宅から会見に出ることが多いです。

活動再開後の町田ゼルビアとの練習試合も配信したりとかなりフットワークが軽くて、色々やらなければという危機感をもってやっていたと思います。「ウチがこんなことを」みたいな感想をつぶやいているサポーターも多かったですし、クラブも「勝てばいい」というだけではこの先やっていけないというのは常に考えて、色々やっていると思います。

なかなか練習が見られない

――コロナ禍でしたが、練習取材はどうされていたのでしょうか?

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