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感想 | ほりそう

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世の中の「もの」「こと」に関して、感じたこと / 想ったことを綴ります。
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記事一覧

逃げるは恥じゃない。(菅野久美子『母を捨てる』を読んで)

4月上旬、衆議院議員の谷川とむ氏の「ドメスティックバイオレンスや虐待がない限り、離婚しづ…

クマーがコカインをキメたら。(映画「コカイン・ベア」を観て)

ある日、熊がひょんなことからコカインを摂取したら。 そんな非現実な設定の映画は、なんと実…

愛の正体、美しさの言語化。(最果タヒ『落雷はすべてキス』を読んで)

1986年生まれの若き詩人。2004年にインターネット上で詩作を披露し、今に至るまでたくさんの詩…

不安や恐怖が、健全さを伴わないとき(映画「ボーはおそれている」を観て)

ホアキン・フェニックス演じる主人公ボウが抱える不安や恐怖。幻想世界の中で投影され、摩訶不…

子どもにとっての罪の意識は、グラデーションである。(映画「イノセンツ」を観て)

「わたしは最悪。」の脚本を務めたエスキル・フォクトによるスリラー作品。特殊能力を持つ子ど…

優しすぎた清原。(鈴木忠平『虚空の人〜清原和博を巡る旅〜』を読んで)

プロ野球選手として活躍していた頃の清原和博は、僕にとって“傲慢”な人のように映っていた。…

確かな一人称小説、そしてクイズの深淵さを描く。(小川哲『君のクイズ』を読んで)

『地図と拳』で注目を集めた小川哲が、「クイズ」をテーマに著した中編小説。「クイズ」という身近でありつつも、深淵な世界をカジュアルな語り口で描いている。 『君のクイズ』 (著者:小川哲、朝日新聞出版、2022年) クイズプレイヤーの頂点を決める、テレビ番組「Q-1グランプリ」。生放送の決勝戦に出場した主人公・三島玲央が対峙するのは、東大医学部4年でテレビにも多数出演する本庄絆。最終問題で、一文字も問題が読まれぬうちに早押し回答で正解を出し優勝を果たした本庄に、三島は「なぜ正

SOLER原則で寄り添う。

四半期〜半年を目処に、何でもいいから「育児本」を読むようにしている。 科学的な根拠が疑わ…

おもろい高校がないように、おもろいスナックもない

2011年に芸能界を引退した島田紳助さんは、とことん「発信」する側の人間だった。 お笑い芸人…

弱さの許容ライン。(島本理生『憐憫』を読んで)

1時間で読める不倫小説。 不憫に思うこと、憐れむ気持ちを表した「憐憫」という言葉に、小説…

挑戦者ではなく、挑発者として(レイ・ブラッドベリの作家姿勢)

『華氏451度』で知られるレイ・ブラッドベリの最高傑作とされる、1950年刊行の『火星年代記』…

砂に抗えるか。(安部公房『砂の女』を読んで)

久しぶりに安部公房『砂の女』を読んだ。 砂丘へ昆虫採集に出掛けた学校教師・仁木順平が、砂…

社内政治なんて幻想だったかもしれない。(石倉秀明『THE FORMAT』を読んで)

「根回し」という言葉があるように、誰に何をどのように伝えるべきかといった、“会社ごとの暗…

映画「夜明けのすべて」は、原作『夜明けのすべて』の「その後」を描いた物語だった。

瀬尾まいこさんの小説に、いつも感心してしまう。 大きな事件が頻発するわけでもないし、理不尽な環境変化が訪れるわけでもない。偉人の名言がこれ見よがしに引用されるわけでもない。 キャラクターがちょっぴり変わっていて、ちょっぴりズレた会話を展開する。ゆったりしているようで、実は、冗長な表現は一切ない。読者に「作家としてのシグネチャー」を感じさせないような、何でもないような物語をいつも描いてみせる。 瀬尾さんの代表作『そして、バトンは渡された』は、まさに瀬尾さんの集大成といえよ