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犬力発魔のケイ

「すみません、その子をなでてもいいですか?」

「アッ…ハイ、どうぞー」

私は礼節を保って白い大型犬の前にしゃがみ込み、手のひらを差し出した。ヒヤリとした鼻の感触が懐かしく、心地よい。
豊かな毛に指を埋め、犬の匂いをキメる。干した布団をよりワイルドにした感じだ。モフモフの快感とかつての飼い犬の思い出が混ざり合い、脳から魔力があふれ全身に回る。

「モモちゃんよかったねえ、ナデナデしてもらって」
「こちらこそ!ありがとうございました」
涙ぐんでしまったのを悟られないよう長めにまばたきをして、ご婦人と犬から離れた。

弓を引くように両手をあげ、前後に開く。予想外の犬ボーナスだ。今ならミサイルだって撃ち落とせるだろう。

放たれた矢は不可視かつ無音。男に喰らい付き、オモチャをもて遊ぶ犬のように振り回してから地面に叩きつけた。

もげた首を拾う姿は不恰好だが、怪我のうちにも入るまい。

【つづく】

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