2getherの日本配給とYoutube配信停止について

2020年6月4日、株式会社コンテンツセブンが、タイBLドラマ「2gether The Series」(制作:GMMTV)の日本配給権を取得したことが発表されました。( http://c7fan.com/news/2020/06/2gether.html )これにともない、これまでyoutubeで日本語翻訳を作成してきた「2GETHER the series JapanFC」(@2GETHER_JFC)は、「本日より版権上、YouTubeでの視聴ができなくなりました。 短い間でしたが、作品と共に字幕を愛してくださった事に感謝致します。 YouTubeで視聴 はできなくなりましたが、これからも作品を愛していきましょう」というツイートを投稿しました。 (https://twitter.com/2GETHER_JFC/status/1268513797477548032 )

この文章は、20年近くBLを研究してきた研究者であり、現在のタイBLドラマの興隆を深い関心を持って見ている者からの、「2gether The Series」の日本配給によってyoutube配信が停止されることに関する一意見です。

私が希望することは、
①いつでも好きな時に繰り返し見られるyoutube配信はそのままにしてほしい。
②有料オンライン配信はCMがカットされるなど、youtubeより数段見やすいため①との差異化は可能。
③DVD,ブルーレイなどの販売を、俳優らへのインタビューなどの特典をつけることで、さらに熱心な「この作品のためにお金を使いたい」「この作品を『モノ』として手元に置きたい」と願っているファンに向けたものにしてほしい。
という、タイBLドラマのファンダムを無視せず、多様なファンの要望に答えるものであることを願うものです。

以下、その理由を述べます。

タイBLドラマは、放映がyoutubeなどで行われます。youtubeという、無料で誰もが好きな時間に楽しむことが出来るプラットフォームの利用は、ドラマ放送の新しいビジネスモデルといえるでしょう。国境という「壁」を超えるインターネットの利用が、タイBLドラマ人気の要因となっているのです。

けれど、ここでもう1つの「壁」として現れてくるのが、タイBLドラマはタイ語で制作されているという言語の「壁」です。タイ語を理解できる人はそれほど多くはありません。
そこで、幅広い層へのアプローチを見込んででしょう、制作会社(GMMTV)は英語字幕をつけて配信を行っています(付いていないものもあります)。英語を理解できれば、かなりの数の作品を見ることができるようになっているのです。
そして、さらに重要なのが、youtubeの機能としてある、他言語による「字幕の追加」を制作会社がオープンにしている点でしょう。
この機能の活用によって、タイ語(あるいは英語)を理解できるファンが翻訳字幕をつけるボランティア活動が行われてきました。翻訳というファン活動によって、タイ語のドラマであるという「壁」が切り崩され、クチコミによってファンが増大するという現状が起こっているのです。

タイBLドラマは2014年ごろから制作がはじまり、2016年に「Sotus the series」が大ヒットし、現在では年間20作品ほどが撮られる、タイドラマの一大ジャンルとなっています。
このタイBLドラマ人気の理由は、強力でフレンドリーなファンダムの存在にあります。
制作会社は作品の裏側の情報や、作品を離れた俳優たちの姿をひんぱんに放送していますが、これらはファンダムに向けたものです。ファンは、これらのスクリーンショットや、自作のGIF、写真などをSNSに投稿し、熱心にその作品や俳優の魅力を語ります。
日本でも、ストーリーの解説や、人物相関図などをコンパクトにまとめたシートがファンによって作られ、タイ語という「壁」を崩す活動が日々行われています。さらなるファンの獲得をファン自身が拡げているのです。

タイBLドラマの魅力は、高い作品クオリティと見目麗しい俳優の存在だといえますが、それにくわえなければならないのが、ファンダムが作品を支え、ファンの拡大に大きな力を持っており、作品・俳優とファンとの相互関係が現在の人気をもたらしていることです。この相互関係の意味は非常に大きいです。

今回、「2gether The Series」の日本配給権が決定したことで、youtubeの動画が削除されるといわれています。けれど、本作の人気は、youtubeというプラットフォームの気軽さと、ファンによる字幕翻訳という大変な作業なしには、成立しなかったものです。
それを示すのが、タイBLドラマを観ている人が世界中にいるという現象です。
先日、行われたGMMのグローバル・ライブ・ファンミーティングというオンラインでの「ファンとの集い」は、900バーツ(日本円で3000円程)というチケット代で、10万人以上の参加者があったといいます。
このFMに参加した人の多くは、youtubeなどでドラマを視聴し、ファンになった人びとだと考えられるのです。(参照:THOMAS BAUDINETTE REFLECTIONS ON GMM’S “GLOBAL LIVE FAN MEETINGS”: GLOBALISING THAI BL https://thomasbaudinette.wordpress.com/2020/06/02/reflections-on-gmms-global-live-fan-meetings-globalising-thai-bl/

版権を持つことが作品を囲い込むことになるならば、「壁」を切り崩してきたファン活動の意義や、ファン活動がさらにファンを獲得するというファンダムのダイナミズムに水を指すことになるのではなるのではないでしょうか。

日本のファンの購買力の高さは、世界でも知られるところです。
実際、私はある作品をyoutubeで知り(最初にあげた①にあたる)、まだyoutubeで見られる状態ですが、ストレスなく視聴したいため、有料オンラインで全話購買し(②)、さらに特典映像を見るめに、日本で販売されていないDVDをタイから取り寄せようとしています(③)。
ファンダムの存在が作品人気を高めたこと、ファンダム自体にファン獲得の力があることから、作品に触れる最初の「壁」を排除するyoutube配信継続を希望します。                     (堀あきこ)

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