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現実逃避のうた

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#詩

ロマンスの現実逃避30

この数日間
わたしはとてもわがままでした

あなたが全て受け止めてくれると
信じているからでしょうか

あなたという
綺麗に磨かれた鏡の中に
みにくいわたしが映ってる

どうしようもなくわがままで
まるで子どもに返ってしまったような
幼い馬鹿な自分が
容赦なくあなたの中に
映っている

あなたはこんなわたしを
そのまま映し出し
きらきらした瞳を少し悲しそうにして
困った顔でいるのです
余計なことは

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コーヒーの現実逃避

一寸先は闇のような色したぼく

酸いも甘いも経験してきたけれど
やっぱりこの苦みがぼくの長所なんだって
思える

ぼくは1日の始まりにふさわしい飲み物
ではなく
もう1日の始まりそのものだ

暗いくらい途方もなく深い闇が終わり
明るい朝が来た
昨日の悲しみが何ともなかったかのように
とうめいな朝
ぼくは真っ黒な色で
あの人の
この人の
とうめいな朝を染める

サラリーマンが
電車のつり革につかまり

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オータムの現実逃避

今朝、1丁目の奥さんが向かいの奥さんと、
立ち話しているのを聞いたんだ。
「今日から衣替えをしなくっちゃ。秋分の日を過ぎたあたりから、もうすっかり秋になったみたいね。涼しくなったわ。」
って。

やったね、ぼくの季節の到来だ。
自己主張の激しいサマーは、今年は夏祭りも
花火大会も中止だったもんだから、
不完全燃焼で退散したみたいだ。
ついこの間のことさ。
少しかわいそうだけどね。
まぁ、梅雨明けし

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ゼツボウの現実逃避

なんとなくだけど
漢字で「絶望」とかくより、
カタカナで「ゼツボウ」
こっちの方が絶望感って少なく感じると
思わないかい?

だからついこの間、
「ゼツボウ」に改名したんだ。
漢字からカタカナに変えたから、
役所に出す時は少し恥ずかしかったけれど
この先の自分の人生のこと考えたら、
思い切って改名したかったんだ。
役所の人間も、「あ、こっちの方がいいですね」みたいな顔してた。

けど俺はこの名前だ

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はじけたいのにはじけることができないシビアの現実逃避

いいかい、
今日からぼくは新しい自分になる
この誕生の瞬間!
太陽はぼくだけを照らし
ぼくの中にある暗闇は幕を閉じた

夜が来たって平気さ
月はおしみなく柔らかいヒカリを
ぼくの頭に降り注ぐのだ
まるでコーヒーにうかぶなまくりーむ
みたいに、穏やかに
そして、なめらかに

あははは
変われるって素晴らしい
新しい人生を始めることは
こんなに簡単なことだったのか
これまでの自分は本当の自分じゃない

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きんねんまれにみるの現実逃避

(80才、三郎の場合)

近年稀に見る正月を過ごしておる。
ことしの正月は、おもちを食べない代わりに、わしは駄菓子屋の餅を買ってきた。
ほらあの、ピンクの色した小ちゃい餅の菓子で、つまようじが入っているやつ。
孫が食べているのを見て、コレが、わしには合ってるカモと思った。
もちは食べきれないし、もう歳だから
あれで十分じゃ。甘くてうまいし、胃にもたれんし。
なにより喉に詰まらなくて済む。
妻はきな

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ロマンスの現実逃避29

ロマンスの現実逃避29

わかってください、どうか
あなたという名の迷宮に迷い込んでしまったわたしがいるということを

いつでも、まっすぐと
呆れるくらい
まっすぐに
あなたという人の中に
わたしは向かっているのです

とても、とても孤独なのです
だけど
不思議と寂しくはないのです

あなたは海のような人です
深くて
もうあっという間に大きく広がっていき
私という小さな存在を隠そうとするのです

とても、とても掴みきれない

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ロマンスの現実逃避28

ロマンスの現実逃避28

いつも
あなたに
助けられているのです

あなたは
今にも落ちそうな場所にいるわたしの
すぐ近くで手を差し出して
いつも私と同じ目線に立ち
助けてくれるのです

絶望を一瞬でも感じたとき
あなたの顔がすぐに
浮かぶもので
それは朝に必ず顔を出す太陽みたいに
当たり前に

私はいつでもあなたに頼ってしまうんです
どこかでいつも助けを求めているから
あなたの顔を思い出してしまうんです

あなたは私の苦

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ロマンスの現実逃避27

ロマンスの現実逃避27

あなたと喫茶店に入った

クリームソーダのさくらんぼは
あなたにあげるわ
あんまり甘くないし
どこか渋くて苦手なの
メロンソーダは私そのもの
しゅわっと弾けて自己主張
あなたの前だと素直に尖っていられるの

コーヒーフロートを頼むあなた
ビターなコーヒーはまるで
出会いたての私たちのようで
どこかそっけないフレイバーなのです
ブラウン色で澄ました顔をしているけれど
実はとっても臆病者で
まるで2人

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ロマンスの現実逃避26

ロマンスの現実逃避26

わたしには
たった一つだけ
自信を持てることがあります

もしもあなたを
世界中が敵に回しても
あなたの味方でい続けることが
できるという自信なのです
あなたを愛しつづけることができる
と誓えることです

その自信はいったい
どこから来るのでしょう?

それは紛れもない
「愛」という名の得体の知れない
大きな大きな海のようなところから
やってくるのです

この愛についてかんがえる時
「わたし」とい

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ロマンスの現実逃避25

ロマンスの現実逃避25

君の笑顔をみているとき
ふと、君が何を考えているのか
キミが何物なのかわからなくなることがある

なんだか無理して笑っているようでもあるし
本当に穏やかな人なんだな、とも思うし。

突拍子もないことを言うことがあるし
毒を吐くこともある
お喋りなくせに
ひどく話すのが下手くそなときがある
感情ばかりで生きていることもあれば
理屈ばかり並べていることもある
本心は、いつもどこかに置き忘れてて
それで

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ロマンスの現実逃避24

ロマンスの現実逃避24

はじめて幸せが怖いとおもった

半月の夜

2人の間では満月のように
満ちていて
欠けたところは何もなかった

ううん
欠けていたり穴が開いていたり
不完全だったのかもしれないけど
見えなかっただけで
全部がおだやかな光で包まれていた

何を話していても
ことばを通り越して
心の奥の奥の奥に
溶けて溢れていった
それでも
決して過激ではなくて
音もなければにおいも
形さえもなくて
穏やかさだけが

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ロマンスの現実逃避23

ロマンスの現実逃避23

ねえ あなたの心をのぞいていいかしら?

大丈夫、何にも邪魔しないわ。
ただ無のこころで
どこか冷めたこころで
微笑み絶やさずにいると
約束するわ

何にも求めない、だからお願い。
あなたの心をのぞかせて。
歪んだ顔した悪魔がいても
見ぬふりしてあげるから。

だけどできれば、
覗いてみたいと思わせないくらいに
あなたはあなた自身を見失わずに
どうか私には踏み込めない場所を
ただ一生守り抜いて欲

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ロマンスの現実逃避 22

ロマンスの現実逃避 22

あなたはとても正直な人だ。
あなたの褒める言葉には、心から出てくる言葉しかない。あなたがぼくを褒める時は、
決して嘘は言わないね。
あなたの感じたままに伝えてくれる。
とても信頼しているんだ。

だけど。
君がぼくを褒めるのは稀だ。
たまにしかないのだ。
本当に予期していない時に、君はぼくの心の準備ができていない時ほど、ぼくを褒め称えてくれるのだ。

ぼくはいつだって君の褒め言葉を求めてい

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