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現実逃避のうた

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#現実逃避

公園の現実逃避

おおやけのその とかいて、公園。
ぼくは、公園だ。
ぼくの周りは住宅街で、ぼくは家々に囲まれているといっていい。
春になるとぼくはさくらの木々でピンク色に染まる。秋には、ぼくは茶色や赤や黄色の木の葉で彩られるんだ。

ぼくのところには、いつもお子ちゃまばっかり寄り付くもんだから、いい加減飽きているのさ。
土管だの、ブランコだの、滑り台だのうんていだの、お子ちゃまが喜びそうなものばっかりあるから、

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ロマンスの現実逃避

君になら、ホンモノの「自分」を出せる気がするんだ。

君という存在が、荒んだ世界に溺れ苦しむぼくをいつでも助けてくれる。
そう、見返りも求めずにね。

その喜びはちょうど、
初めて逆上がりができた時の達成感とは天と地ほどの差で、
目玉焼きを上手くひっくり返せたときの快感とは月とスッポンで、
お誕生日のプレゼントを次々にもらって中身を確認しているときの嬉しさとは雲泥の差なんだ。

なあでも、1

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現実逃避の現実逃避

曇った窓ガラスを拭いきれずに涙を流す
己をよそに
ただひたすら穏やかな表情で料理をする婦人
召使という身分に誇りを持ち始める貴女
なぜあなたはぼくの傍にいるのか

その日は不思議だった
満月の未知なる白い影
そこにあるのは貴女とわたしの残影
まるでコーヒーに浮かぶなまくりーむのようになめらかで
おだやかで
そしてせつないわたしたちの化身。

月はそれをおしげもなく私たちの頭の上にこぼし、優しく

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デイブの現実逃避

食べていると安心する。

わたしはデイブ。
通勤時間。走ることはないけれど、
まあるいどでかい握り飯が転がるように
坂を下るわたし。

みんながわたしを物珍しそうにみるのが
たまらなく好きなんだ。

帰宅後、唯一の楽しみである夕飯を食べなが
ら、三日月をみておもう。
「たくさん食べてまあるくなって!」

満腹感に満たされながら床につくデイブは
いつのまにか夢の世界へ・・

「ねえ、デイブ、夢

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いえの現実逃避

今日もみんなおでかけだ。
いつも一人でつまんない。
となりのいえも前のいえも、みんな無口だし、
体が重くてうごかないんだよ。
「ねえねえ、みんなでトランプしようよ」
けれどもみんなは厳格な顔をして、どっしり構えたまま頷きもしない・・

退屈に耐えられないでいると、ぼくの中に見知らぬ者が忍び込む!
ところがぼくは安堵してこう言った。
「どろぼうさん、こんにちは!ぼくと一緒にあそぼうよ」

どろぼ

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さみしいガールの現実逃避

どようの夜に突然ピンポン!
どちらさま?どうようするわたし。
「なんかごよう?」ドア越しに、おそるおそるつぶやく。
「ようよう、ごめんくださいな」聞きなれないこえがする。
あまりの恐怖に「最近どうよ?」と知人に電話。
知人も驚きどうようしている
「ごめんよう・・ようはないけど、お願いだから、受話器越しにどうよう歌って。」

さみしいガール、ようきな歌声に安堵して
とうとうようすをみにいくが、
しく

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ボクサーの現実逃避

かさぶたがとれるまで、
なぐりあった日々。
惨劇の寸前と言われる程に、
きびしい戦い。
二人の汗と血と涙は、
勝敗という分かり易く哀しいもののために流すもの。
戦いは、どうしてこうも痛いのか?
友情は、どうしてこうも、もろいのか?

わかったこれからグーはやめよう
パーで構えて肩を抱き寄せる二人!
争わずに励ましあうことの素晴らしさを知った二人。

ところが観客ひどく激怒
それでも
やがてはふた

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さつきの現実逃避

きつつきがつつく木。
さつきが大事にそだてている木。
づつきよりも烈しい力でつつくきつつき。
それをみつめるさつき。

空のつきが顔を出すころ
その木はみごと、破壊された
にっくききつつき捕まえようと、
物陰にひそんで、待ち構えるさつき。
ところがにっくききつつき、
涙をながしてざんげしている。
その気高きこころにさつきはまごつき
なみだを流す、つぎつぎと。

ママの現実逃避

最近子供が懐かない
必死でうんだ、こどもなのに
運動会で、ぱぱと走りたがるむすめに、
泣いてお願いするわたし。
「まわりの子たちと同じように、お願い、マンナ、一緒にはしって。
あおくて澄んだ、御空のような心で、わたしはあなたを愛しているのよ。」
「いっしょにスタートしましょうマンナ、そうしてゴールまではしりましょう。あんたの足と、わたしの足で大地をけるのよ。はしりおわったら、ママのつくったおむすび

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とべいちろうの現実逃避

陸にあがったぼく。
カメのように歩くぼく。
太陽は、ついて回るし、
犬は尻尾をふってほえている。
ぱっとしない毎日。

「とべ!いちろう!
 あるくな!いちろう!
 重力にまけるな!
君はいつでもふんわり空をとべるはずさ。」

富井の現実逃避

わしは79歳になっていた。
骨を整えることは容易ではないけれど、
やりがいがある。

富井整骨院は、明日からトミー整骨院になる。
従業員がほとんど外国人になってしまったんだ。
英語を覚える毎日。
英会話のスクールに通いながら、辞書を片手にメールを送る日々。
いつのまにか私は腰をいためていた。

自分の骨を整えるのが先だけど、わしには人を診る義務がある。
我が身を犠牲にして、他人の骨を整える。

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ほちょうきの現実逃避

こおろぎがなくころ、何かを夢みていた。

大草原にさく花々がささやく音。
きつねの兄さんが勇ましく食べ物をさがしにいく音。
ダンプカーに人が乗り降りするおと。
手拭いをまいたおとうちゃんがトンネルの中をあるく音。

音が自分の体を支配していく。

やがてぼくの聴覚が、研ぎ澄まされていく。
全部の音を支配していく。

音の支配人となったわたしは、いつでも
自由に音楽をうみだすことができるよう

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決意の現実逃避

ああ なんて素敵な歌なんだ

もう、追われる人生はやめよう
そして追いかける人生もやめてしまおう

この曲が終わるまでに、
ぼくの中のくだらない小さな願望や
小さな希望すら
全て捨ててしまおうではないか

大きな自分になるのをやめよう
小さな自分になるのもやめてしまおう

ぼくはぼくであり続けよう、
ここに眠る自分の声に耳を傾けながら
静かな、誰にも分からない私だけの人生を
生きよう

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カタルの現実逃避

夢を語ろうみんなに語ろう。
知っている人全員に夢を語ろう。
語り合う前に取り合えず語ろう。
自分のことを話そう。

沢山はなそう、ついでに自分の今後の目標も
話してしまおう。
野心がなくても語ろう。
ろうそくの炎が消えても語ろう。
「夢って、人に語ると叶わなくなる」なんて全くの嘘さ。そう思わないかい?
いいかい、できるだけたくさんの人に伝えるんだ。
なんなら自分から寄っていって、夢を語ろう。

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