逃避のごみ箱
昨日食べたお菓子の袋が捨ててある
おいしかったなあ
あっという間に無くなってしまったけれど
食べている間、ぼくは幸せだった
*
さっき、ごみ箱に捨てたガム、ティッシュに
くるまなかったから、
ごみ箱にくっついちゃったの。
母さんがごみの日に気がついたら、
怒るだろうなあ。
ガムってすぐに甘くなくなるもの、
ぼくはかっとなって 「ぺっ」て吐いた
だからくっついてしまったんだよ
*
兄さんが鼻くそを拭きとったティッシュを
丸めて、わざと遠くからごみ箱に入れようと
している
ぼーっと見ている私の前で、得意げにごみ箱に
投げ入れた
「あー!くそう!」見事に外す兄さん。
格好わるくて、見た分、時間の無駄だった。
*
もしごみを捨てるごとに、水が流れ出すごみ箱
があったとしたら、次から次へと捨てていき、
気がついたら水があふれ出して
家中水浸し。ごみと一緒に家族と平泳ぎをし
て、身も心もくたくた。
水かさが増せば増すほど、ああ、きょうもごみ
が沢山でたんだな、って、
ぶくぶく水中反省会をするんだ
そうして次の日から、私たちはごみを捨てない
ように気をつけるようになるんだ
*
もしごみを捨てるごとに、ごみが消えるごみ箱
があったとしたら
次から次へと捨てていき、気がついたら家の外
にごみが積み上げられていく
隣の家の人が迷惑がって、わたしたちを
非難する
そう、ごみ箱の中は、玄関の外に繋がっている
のだ
なんて恥ずかしくて、迷惑なごみ箱だろう。
*
もしもごみ箱の中に小人が住んでいたら
どんなだろう
小人の暮らしをのぞいてみよう
おや?ごみ箱のおうちの中には、
私たちのおうちとおなじように、
ごみ箱が置いてあるぞ
きっと食べかすなどをすてているに違いない
哀れなことに、小人は私たちが捨てるごみが
降ってくる日常に疲れて、病気になるんだ
それを知った私たちは不憫に思い、
具合が良くなるくすりを投げた
たちまち小人たちは元気になるけれど、
ごみが降ってくる暮らしは変わらない。
小人の暴言ってやつは、体のわりに、ひでえ
ものさ。
「あんたらみたいなクズ、ごみ箱にすてて
やるぞ」「このクズ野郎!こんなごみ箱、
くれてやる!」
そうこう不満を言いながら、小人は家族で
出てってしまった。
私たちは安心してごみ箱にごみを捨て続けた。
しかし今度はわたしたちのおうちに何やら
ごみが沢山降ってくるんだ
天井を見上げると、私たちを覗き込む、
先ほどの小人の家族が・・・!
彼らは巨人となって私たちの家をごみ箱に
してしまったのだった!
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