逃避のピクニック

レジャーシートを買った

1人分の尻を座らせることしかできない、

小さなシート

ストレッチの効いたズボンをはく

あたたかいミルクティをすいとうへ

耳のついたままの食パンに、チーズをはさんだ

はきやすい運動靴をはいて深呼吸

ぼくは安全なすみかのドアーを勢いよく開けて

外へ出た

「バタン!」後戻りできないような音がした

**

行こう

きのうまでのいじっぱりな自分を捨てに

歩こう

過ぎ去ったちっぽけな出来事を忘れるために

ぼくはいま、サンドイッチとミルクティという

心強い味方とともに、まるで敵討ちにでかける

かのような気持ちで歩いている

ことりの声が澄んでいる

木々の葉がほほえみながら、歩く人々を見守る

はしる車は感情をなくしたライオンのような顔

をして、ひたすら目的地へと向かっていく

下校中、楽しそうに笑う児童たち。

ランドセルの中身はつまらない教科書が

つまっている。宿題におわれる宿命。

教室というオリの中で人間関係を築き、

教師の教えを請う。

卒業という日が来るまでに、未熟なたましい

はどれほどの成長を遂げるのだろう

他人と戦うすべをもっていても

自分という味方を味方につけることができない

子どもが沢山いる

笑うその無邪気な顔の裏側には、どんな感情が

あるのだろうか

**

そんなことを、考えながら歩いていると

いつのまにか、ぼくは家の前にたどり着いて

いた

ぼくはなんの迷いもなく、

ドアーを開け、家の中へと入った

少し歩いただけだったけれど、ぼくはとても

お腹が空いていた

そこで四畳半の畳の上にレジャーシートを

敷き、そこへ座った

そしてすいとうのミルクティを片手に、

サンドイッチを笑顔でほおばった

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?