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嵐ほど「優しいアイドル」を、私は知らない

 それは突然の出来事で、世の中を震撼させた。
 人気アイドルグループ・嵐の活動休止報告。
 嵐というアイドルを知らない日本人など、存在しないだろう。
 嵐は日本が誇る、トップアイドルだ。

 そんな嵐が、2020年末をもって、「活動を休止する」と発表した。その発表内容は、とてもファンの心に寄り添った、真摯なものであった。

まずはファンクラブで伝える

 「ファン」といっても、嵐の規模になれば千差万別だ。テレビに出ている嵐を、お茶の間から応援するファンもいれば、彼らの載っている雑誌をすべて購入し、ツアーに可能な限り通うようなファンまで、いろんな形のファンが存在する。

 年会費を払い、ファンクラブに入ってまで、嵐のことを応援している人たちに、一番最初に今回の件を報告する。彼らがいかに、ファンを想っているグループであるか、ということが伝わってくる。

2020年末という、猶予

 活動休止の報告にしても、解散の報告にしても、殆どは「今すぐ」であったり、「あと数ヶ月」であったりすることが多い。
 嵐の活動休止の発表は、2019年1月27日。約2年間は、嵐は「嵐」でいてくれるのだ。

 2年を長いと思うか、短いと思うかは、人それぞれだが、紅白歌合戦に2回出場することができる長さでの、発表だった。

 「あと2年」と予め宣告されれば、ファンも動きやすいだろう。後悔しないように、自分の出来る範囲で、全力で嵐を応援しようと心に誓った人は、少なくないはずだ。
 ツアーに行く回数をもう少し増やしてみようと検討もできる。
 冠番組や、彼らが「嵐として」出演している番組は必ず追おうと決心もできる。
 今までは、「これは買わなくていいかな」と諦めていた雑誌も、購入しようと思わせてくれる。

 「2年間で嵐とどう関わるか?」という、応援のスタンスを、前もってファンに考えさせる時間をつくったのは、とても誠実な行為だ。

 会見で櫻井が述べたように、これは「無責任」ではない。2年という時間を設けたのは、彼らなりの「誠意」でしかない。

大野は事務所に籍を残して「お休み」をする

 嵐は「活動を休止する」が、活動を終えたいと提案した大野も、ジャニーズ事務所には所属し続ける。
 記者会見で大野は、最初は「この事務所を辞めなくてはけじめがつかないと思っていた」と述べていたが、メンバーや事務所の人と話す中で、「お休み」という形を選ぶことになったと説明している。
 「所属は所属だが、2020年が終わったら、ゆっくり休んでちょっと考えたい」というのが、大野の気持ちだ。2020年以降も、嵐は活動を「休止」するだけで、大野も、ジャニーズ事務所には籍を置いておきながら「お休みする」ということだろう。

 これは非常に重要な問題だ。
 事務所を辞めたら、大野は完全に「一般人」となってしまう。しかし、大野は「芸能人として」、「お休み」をするのだ。
 もちろん、他の4人のメンバーも、嵐が「お休み」している間も、ジャニーズ事務所に所属している。

 「事務所に所属している」ということの何が重要なポイントか。
 それは、「ファンレターが送れる」ということだ。完全に一般人になってしまえば、ファンの気持ちを、直接、本人に伝えることは不可能だ。

 しかし、事務所に所属していたら、事務所に宛てて、ファンレターを送ることができる。大野にも、他の4人にも、気持ちが伝えられるのだ。

 「想いを伝える場所を確保してもらえている」ということは、ファンにとっての安心材料になるだろう。

「欠けた嵐」を観たい人がいるのか

 二宮の発言の中に、「5人でなければ嵐ではない」「100%のパフォーマンスはできない」というものがあった。
 嵐のメンバー本人たちが、「嵐は5人のグループ」と非常に強く考えている。嵐自身は、あくまでも、「5人の嵐」としてのパフォーマンスを観てもらいたいと願っているのだ。

 本人たちがそう主張する中で、「4人でもいいから嵐として活動を続けてほしい」と思うファンは、果たして存在するだろうか?

 「大野のパートを他のメンバーが歌う姿」を観たい人は、存在するだろうか?
 「嵐です」と言いながらメンバーが並んだとき、4人しかいない状況を、誰が観たいのだろうか?

 嵐はずっと5人だった。もし4人で嵐を名乗られてしまうと、誰もが違和感を覚えるだろう。欠けた、もう1人について、想いを馳せてしまうだろう。

 無理に4人で嵐を続けるくらいなら、「また5人になるまで、一旦、嵐としての活動を休む」という選択は、賢明で、聡明な判断であるとしか言えない。

嵐である前に、1人の人間である

 筆者は以前、女性アイドルを応援していた経験がある。アイドルを応援していると、時々、「彼ら、彼女らの人生を搾取しているのではないか?」と不安に駆られることがある。

 アイドルは、人生のすべてを捧げ、アイドルとして生きてくれている。それはとてもありがたいことだが、「アイドルとしてしか生きていけない状況に立たせているのは、ファンなのではないか?」と悩んでしまう。

 アイドルだって、人間だ。気楽にスーパーで買い物をしたり、どこかへ友人と遊びに行ったり、恋をしたり…そういう、「普通の人生」を送る権利は、あって当たり前なのだ。

 今回大野は、「何事にも縛られず、自由な生活がしたい」と、ファンに伝えている。その考えを否定する権利を持つ者は、誰もいない。
 なぜなら、大野は、アイドルである以前に、人間であるからだ。
 自由に生活を送っている我々には、彼の考えを否定する権利はない。

 「ファンになる」のは義務ではない。個人の自由だ。ならば、アイドル側にも、個人の自由が与えられるのは、当然のことである。

ファンにも自由がある

 ここまでの文章では、アイドルの自由を述べたが、ファンにも自由があるということは、主張しておきたい。

 今回の突然の発表を、素直に受け入れることだけが、「ファンの形」ではない。哀しんだり、嘆いたり、怒ったり…、やり場のない想いを抱いてしまうのは、ごく自然な感情だ。

 「今回の報告を受け入れられない私は、ファン失格だ」と自責の念に駆られる人もいるだろう。もしかしたら、「嵐の決断を前向きに捉えられない人は、ファンではない」と言う人もいるかもしれない。

 断言しよう。失格者など、誰も存在しない。

 何年も応援してきたグループが、突然活動を休むと告げたのだ。今はまだ、心の整理ができなくて当然なのだ。

 その為に、嵐は約2年間という、心を整理する時間を設けてくれたのだ。
 悶々と悩んでいるファンは、嵐の優しさに、存分に甘えたらいい。悩み抜いて、いつか答えを出せばいい。嵐もきっと、それを望んでいるだろう。

 「自由」を求めている大野、そしてその考えを受け止めた4人のメンバー。そんな彼らが、ファンの「自由」を否定するだろうか

嵐と紅白歌合戦

 嵐と紅白歌合戦は、切っても切り離せない。
 何年間も連続で、白組の司会は嵐が担当してきた。

 近年の紅白歌合戦の白組の司会は、嵐のメンバーが順番に行っている。
 2016年の相葉から始まり、その翌年は二宮、そして平成最後の紅白歌合戦の司会は、櫻井が務めた。

 嵐はあと2回、紅白歌合戦に出場できる。まだ司会をしていないのは、松本、そして大野である。

 筆者は、今回の報告が出るまで、「なぜ櫻井を2018年の司会に起用したのか?」と疑問に思っていた。
 それは、2020年に東京オリンピックがあるからだ。当然、紅白歌合戦の番組側としても、東京オリンピックを絡めた内容にしたいはずである。
 それならば、ニュース番組で一番活躍しており、レポーターとしての経験も豊富な櫻井が、 2020年の司会に相応しい筈なのに、どうして2018年に櫻井を起用したのだろう…と不思議だった。

 しかし、今回の報告で、疑問は晴れた。おそらく、2020年の紅白歌合戦の白組司会者は、大野智だ。
 大野がメンバーに、嵐としての活動を休止したいと発言したのは、2017年6月。その時から既に、司会者の順番は決まっていたのではないだろうか?

 2020年の紅白歌合戦のトリは、嵐だろう。
 大野が司会をし、嵐がトリを務め、白組が優勝して、2020年が終わる。そんな筋書きを考えてしまう。

 優勝旗を手にした大野の笑顔で、嵐の活動の第一幕が降りるとしたら、それはとてもドラマチックで、幸せなことではないだろうか。

嵐はファンに、愛を誓った

 上で述べたように、嵐は、ファンに対して、非常に誠意を持って接してくれている。2020年まで、その姿勢が変わることはないだろう。

 私は、こんなにも全員が同じ方向を向いて、ファンの気持ちに寄り添ってくれるアイドルグループを、見たことがない。

 5人で記者会見に臨み、誰一人として、大野を責めず、誠実に気持ちを述べてくれた。

 嵐はどこまでも、優しいアイドルだ。2020年を終えても、きっとそれは続くだろう。

 何年先も、嵐はファンに、愛を誓ってくれている。嵐は、ファンを信じてくれている。

 そんな真摯な嵐に、我々が出来ること。
 それは、後悔せずに、出来る限り、嵐に向き合うことだ。
 時間が掛かってもいい。否定的に捉えてしまってもいい。
 しかし、誠意を持って、嵐に向き合わなくてはならない

 嵐はこんなにも、ファンを愛し、信じてくれている。
 ならば我々も、嵐を愛し、信じていこうではないか。

 「百年先も愛を誓った嵐は伊達じゃない」と、改めて思い知らされた。

 こんなにも優しいアイドルがいる。その事実は、とても奇跡的で、とても素晴らしくて、とても温かいことだ。

 活動休止の報告でさえ、ファンの心を温めてくれるアイドル。

 やっぱり、嵐ほど「優しいアイドル」を、私は知らない

【了】

 『news zero』の櫻井の発言を受け、もう一つ、嵐に関する記事を書いた。

 この記事も併せて読んでもらえたら。

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