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働くことで大切なものを守れるから

こんなことを話すのは、非常に恥ずかしいが、労働してお金を得ることの大切さが身に染みてわかったのは三十代になってからかもしれない。

私は本当にダメダメの甘ちゃんで、大学の学費は親に全額出してもらったし(しかも東京の私立。いま思えば親にどれだけ負担をかけていたのか青ざめてしまう)学生時代も、バイトが怖くてほとんどできなくて、就活もまともにできずこけた。

かろうじて、大学4年の二月に、地元企業の正社員になんとかすべりこんだが、そのころ、自分の未来を想像すると必ず真っ暗闇しか目に浮かばなかった。

「大人になれる気がしない。いつかどこかで倒れる気がする」と、幼い頃から虚弱体質だった私は、常にそんなことを思っていた。案の定、社会人一年目を無事に終えることなく、私は冬が来る前に入院して仕事を辞めることになった。

ここまで読んで、新社会人になろうとしている方は、どんな感想をもたれただろうか。「あ、この人より自分のほうがまだしっかりしている」と思っていただけたのではないだろうか。

大学生の私も、二十代の私も「お前は貴族の娘か」と自分で自分をなじりたいくらい、ふわふわー、と生きていたような気がする。それもこれも、親が「お金」という毛布で、私をずっと守ってくれていたからだった。

いま、三十代も半ばを迎え、実際に社会の歯車のひとつとなって働いてみて、また夫という伴侶を得てみて気づくことは「日々の生活を大切にしたりとか、家族が笑顔で過ごすためだとか、いざ病気になったりしたときだとかに、お金があると、それらをある程度はちゃんと守れるんだ」ということだ。

三十代は、大切なものが増えてくる時期。新しい家族を迎えたり、終の住処の購入を考えたり、一生打ち込みたい趣味を見つけたり、新たな仕事にチャレンジするための勉強をしたくなったり。そんなときのために、貯金があると、すごく助かる。

私は、趣味で小説を書いているが、二十代のころ、甘かったころなどは「働かずに一日家で小説を書いていたいなー」などと真剣に思っていた。

いまはそういうことは思わない。私の日々の仕事で得られる月給は、けして多くはないが、それらが入らない生活を想像すると、とたんにカツカツになり、家計は厳しく、もし何かがいざ起きたときのための貯金すらできなくなるのが目に見えているからだ。

お金がちゃんと得られることで、守れるものはたくさんある。でも、私のように、若いときはそれに気づきにくい人もいる。

三十代、仕事の向き不向きについても、思うことはいろいろある。何年続けても、人から「仕事としてやらない?」って声がかからない活動は、趣味でやったらいいんじゃないかな、って思う。生活の柱となる仕事を別に持って。生活の柱となる仕事は、あなたの毎日や、その趣味すらも支えてくれる。

私もそうだったけど、新社会人になりたてのころは「自分の一番やりたいこと=会社の仕事」とどうしても思えなくて苦しんだ。

だけど、会社の仕事は、自分の好きなことを守るためのセーフティネットと考えたらどうだろうか。そうして、好きなことを、日々の暮らしのなかで確保する。その好きなことは、いつかほんとに職業のメインにできる芽になるかもしれないし、細々と継続したらいいと思う。

もちろんブラック企業からは一目散に逃げなくてはならないが、会社の仕事を「つまらないし自分には合わない」と早々に決めつけるのも、ちょっと早いのではないかと思う。

事務があり、営業があり、人前で話す機会があり、請求書や領収証をつくったり、チームプレイをしたり、その経験は、いつかあなたが、希望して一人で独立して仕事を始めるときの、糧になりはしないだろうか。

そして、二十代のうちに、自分の仕事のスキルや、生活リズム、貯金などを確立しておけば、それらは三十代や四十代に、あなたが本当に好きなことに向かって飛ぶための、足掛かりとなるかもしれない。

社会人一年目、いろいろなことに遭遇するだろう。お客さんからこれでもかと怒られたり、上司や同僚とうまくいかなかったり、嫌な目にもたくさん遭うかもしれない。

でも、そこで得た経験も、お給料でつくられた貯金も、いつか必ずあなたを守ると私は思う。自分の好きなことや大事な人を守る力、それをつけるために、新社会人としてはばたくあなたを、私は応援します。




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上田聡子(ほしちか)

小説・エッセイを書いてます。日々のささいなことに光をあてて、温度のある言葉をつづりたい。Amazonkindleで掌編集「言の葉の四季」発売中です。https://goo.gl/EDhBTs  連絡先:satoko_nagai_0328@yahoo.co.jp

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ほしちかのエッセイを集めたマガジンです。

コメント2件

趣味として割り切ってやる、っていうある程度の千疋も必要ですよね
中原さん そうですそうです~、ま、人それぞれですけどね!
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