バイロンホテル

【#旅とわたし】二人で夏旅!イギリス・スコットランド7日間

2016年夏に行ったイギリス・スコットランドへの新婚旅行の記事、マガジンにまとめてあったのを今回「旅とわたし」用に1つのノートに書き直しました。

私はヨーロッパに行ったのは初めてだったのですが、小さな島国の日本の田舎に生まれ育ち、一人で海外へ旅行に行く勇気もなく、本当に自分は何も世界のことをわかっていないなと、どこか忸怩たる思いでいたように思います。でも、伴侶を得て、彼と一緒にこの7日間のイギリス・スコットランド旅行をしたことは、自分に風穴を開けるようなことだったのではないかなと思います。

読んでくださる方、楽しんでいただけたら嬉しいです。

1.夏のロンドンへ

8月の12日から19日まで、新婚旅行と称してイギリスとスコットランドを旅してきました。海外といえば、いままで台湾しか行った事のなかった私。でもなぜか、イギリスは子どもの頃からいつか行ってみたい場所でした。

7月半ば、夫と私、お互いの夏休みが重なることがわかり、急いで航空券とホテルを取って旅行が決まりました。

母「ツアーで行くんじゃないの!?」

私「ツアーじゃないよ。りょうくん(夫のこと)はイギリス詳しいからたぶん大丈夫」

夫は大学を卒業してから、イギリスの大学に留学していた時期があるのです。英語も読んだり話せたりするので、私はツアーじゃない旅行も、たぶん大丈夫だろうと見込んでいました。

でも、念押しはしました。

私「私を置いてどっか行かないでね!トイレの時も待っててね!怖いから」

私の英語は、高校時代以来ろくに勉強したこともないのもあり、非常にお粗末です。

旅行までは、無事に帰って来られるかしら、と大変ドキドキしてました。

8月11日、まず金沢駅おからサンダーバードに乗って大阪へ。旅の前日は、大阪駅までお義母さんが来てくださいました。

「ハゲ天」という天ぷら屋さんに入って、お食事をしたのですが、やっぱり治安のことを大分心配されました。

うちの両親からも「無事に帰って来てね!」と何度も言われています。フランスのパリやニースで起きたテロのことが、やっぱりみんな頭にあって、私自身も気になっていました。

食事のあと場所を移動してホテルのラウンジでケーキセットを食べた後、お義母さんと別れて関西空港行の列車に乗りました。空港のひとつ手前の駅の、りんくうタウン駅で降りて、今夜は空港近くのホテルに泊まります。

夫「ホテルのレストランは高いねえ」

私「ファミマがホテルの中にあったから、今夜はコンビニ飯にしよう」

実際ホテルの中にあるファミマは、とても品物や食品が充実していました。カップヌードルとおにぎりを買って、ホテルの部屋の湯沸かし器を使って食べました。

8月12日の朝、ホテルからシャトルバスで関西国際空港へ出発しました。飛行機が飛び立つ時間は10時半の予定でしたが、お盆時期の空港はとても混むため、2時間前には空港に着いていなくてはならないそうです。

手荷物検査などは問題なく終わりましたが、持っていたペットボトルの飲料水は捨てなくてはなりませんでした。

いま、国際線の空港では、100ミリ以上の液体を機内に持ち込むことは禁止されています。もちろんテロ防止のためです。飲み物は検査が終わってゲートを通ってからなら、買っても良いみたいです。

今回の旅路は、オランダのアムステルダムで飛行機を乗り継いでイギリスに行きます。私達は、オランダ航空のスカイブルーのジェット機に乗り込みました。

フライト時間はおよそ11時間です。スムーズに離陸してほっとしました。

オランダ航空の添乗員さんは、30代、40代くらいに見える方が多くいらっしゃいました。日本では若くて美人の人しかフライトアテンダントになれないイメージがあったので、ほほう、と思いました。みなさん、笑顔が素敵です。そして、やっぱり背が高いし、大柄です。

離陸してしばらくすると、熱いナプキンが配られ、一回目の機内食が出てきました。フィッシュかチキンかを選べて、私はフィッシュにしました。

出てきたのは、魚の唐揚げとカレー味の炒めごはん、サラダにあんみつ。やはり日本のものとは少し味つけが違うような気がしたけど、無事完食しました。

食事が終わると、機内が暗くなります。長時間のフライトの間、ひまだったので、いろいろ思いを巡らせていました。

飛行機は高度1万メートル以上の場所を飛んでいて、外の気温はマイナス60度くらいになっているみたいでした。エコノミー症候群を防ぐためなのか、添乗員さんがジュースや水をどんどん持ってきて、おまけに機内が寒いので何度もトイレに立ちました。

9時間を過ぎたあたりから、だいぶしんどくなってきましたが、もう少し我慢です。

日本を朝の10時半に出て、その日の日本時間夜の10時過ぎにアムステルダムのスキポール空港に着きました。

スキポール空港は、とても現代的なつくりの、すごくお洒落な空港でした。

照明や、天井のつくりや、カフェスペースがいちいちハイセンスでびっくりしました。

空港のカフェで、重たいものは胃が受けつけそうになかったので、私はトマトスープを頼みました。日本のより、だいぶしょっぱくて、味の違いに驚きました。日本で円をイギリス通過のポンドには両替してきましたが、ユーロは持っていなかったので、カードで払いました。

夫はハンバーガーを食べています。

スキポール空港で、眠さと疲れを我慢しながら、3時間待ってひとまわり小さいシティージェットという飛行機に乗って今度はロンドンシティー空港に向かいます。

約50分くらいの飛行時間で、ロンドンの街中の空港に着陸しました。

ロンドンシティー空港で、まずはオイスターカードという地下鉄のカードを買います。

ロンドンの地下鉄に乗って、ホテルのあるクイーンズウェイに向かいました。ロンドンの地下鉄の中には、いろんな人種の人が乗っていました。

西洋の人、アジアの人、アフリカ系の人、アラブ系の人…このいろんな国をルーツに持った人たちが、一緒に生きているのが、イギリスという国なのだなあ、と実感しました。

クイーンズウェイで降りると、街には匂いがありました。中華料理の店、トルコ料理の店、ハンバーガーの店、という食べ物の匂いに混じって、人々の生活の匂いが、日本よりもずっと強くしていました。

現地時間の8時を回っても、外はまだ薄明るく、その中でスーパーマーケットに入り、とりあえず食べられそうなバナナと、ミネラルウォーターとお菓子を買って、ホテルで寝ました。とても長い一日でした。

2.オックスフォードでハムレット

ロンドンに着いてから、ホテルでぐっすり眠って夜が明けました。ロンドンで泊まったのは、クイーンズウェイの近くにあるバイロンホテルです。

ホテルの朝食は7時半からで、それまでにもう少し時間があったので、近くのケンジントン・ガーデンズを散歩することにしました。

ケンジントン・ガーデンズは、ロンドンの真ん中から西のほうにある王立公園です。とても広い芝生に、たくさんの木陰。朝早いのに結構人がいます。ジョギングランナーや、犬の散歩をする人。

夫「リスもいるはずやで。あ、いた!」

大きな木の幹をちょろちょろと登るのは、たしかにリスです。リスを近くで見ようと木に近づくと、さっと幹の裏に隠れます。裏を見ようとすると、リスは表に回ります。結局木の周りを、私もぐるぐるしてしまいました。

ガーデンズをどんどん歩いて行くと、広い湖に出ました。すごく綺麗な湖です。いつまでも眺めていたいような。

湖のほとりには、水鳥がたくさん羽を休めていました。羽にくちばしをつっこんで毛づくろいしています。

しばらくぼーっと湖のほとりにたたずんでから、ホテルに戻って朝食です。イングリッシュブレックファストではないですが、ヨーロッパの基本的な朝食です。

コーヒーと紅茶をホテルスタッフさんがついでくれて、トーストを「White or black?」と訊いてくれます。ホワイトは普通の白パンのトースト、ブラックは黒パンのトースト。あとはみんなバイキング形式で、クロワッサンにセサミパン、サラミにハム、チーズ、ゆでたまご、缶詰のフルーツ、ヨーグルトなどを好きにとっていいのです。

おいしくて、おなかいっぱい食べました。今日の予定は、オックスフォード大学の敷地内で野外劇のハムレットを見る予定です。オックスフォードに行くために、まずパディントン駅に歩いて行きます。

9時30分発の列車に乗り込みます。チケットは事前に日本でネットで押さえてありました。

夫「これ、ディーゼルの電車だね」

列車はパディントン駅を出発して、ディドコット・パークウェイという駅オックスフォード行きのバスに乗り継ぎです。オックスフォードはご存知の通り名門オックスフォード大学がある街です。バスの中は、各国から来ただろういろんな学生でいっぱい!みんな騒がしく喋りまくってにぎやかでした。

バスを降りると、オックスフォードの街並みが広がったのですが、これがまた素敵で。イギリスの街は、ほとんどどこでもですが、古い昔からの建物を、修復しながら使っているのですね。町全体の雰囲気に統一感があります。

オックスフォードの街は、なんだかとても平和な雰囲気でした。みんな街ゆく人々がのんびりして幸せそうで、天気の良さもあいまって。そうそう、こっちは夏でも日本の10月半ばくらいの気温なのですね。だからとっても晴れた空の下歩くのが気持ちよかったです。

おもしろいお店もいろいろあって、たくさんのカードゲームを集めて店のテーブルでもそのゲームで遊べるお店とか、海辺で少年と犬がたたずんでいて月が出ている素敵な絵を置いてある画廊とか、名作児童文学が置いてある書店とかがありました。

黄色と青のテントの屋台で、古着やアクセサリーや食べ物が売っていたので、そこでお昼ごはんです。中華系の屋台を選んで、私はシンガポールヌードル、夫はチキンカレーを選びました。どちらも、パクチーが散らしてあります。

私「おいしい!でも辛い!でもうまい!」

夫「チキンカレーも辛いけどいける」

オックスフォード大学で、見たかったのがボドリアン図書館でした。映画「ハリー・ポッター」シリーズの撮影でも使われたそうで、1100万冊もの蔵書を誇るそうです。でも、残念ながら、ツアーの時間が合わなくて、外観しか見られませんでした。

さて、野外劇のハムレットは二時からです。お昼を食べて、いろんなお店をぶらぶらしてからいざ会場に向かったのですが、広いオックスフォードの敷地内の中、思いっきり私たちは迷ってしまいました。いつまで経っても会場にたどりつきません。

やばいやばいと騒ぎながら、何人もの人に訊いて、ぎりぎりになって広い公園内の会場にたどりつきました。

公園内の池の前が会場で、椅子が置いてあります。日本でとったチケットは何と最前席!水とオレンジジュースをそれぞれ買って席に着きました。

時間になると、赤いワゴンが走ってきて、後ろに乗っていた役者の男性が「オックスフォード!」と叫んで、劇が始まりました。このハムレットは、現代風にアレンジされているのが特徴だそうで、キャスト5人は、みんなパンク風のメイクをしています。

私「英語わりとわかりやすくない?」

夫「そんなことない。これだいたい古典英語やで。難しい」

それでも「To be or not to be」の一番有名な台詞は聞き取れました。現代の新聞が出てきたり、舞台上で携帯が鳴ったり、BGMがロックだったり、いろいろとアレンジがこらしてあります。

野外劇はとても面白く、思いきり拍手しました。ハムレットは二時間以上あったので、あっという間に夕方です。カフェに入ろうとしましたが「もう閉める時間だよ」とお見せの人に言われてしまいました。

夫「しゃあない。パブに入ろう」

オックスフォードの街中にあるパブ(酒場)で晩御飯です。私はイギリス名物フィッシュアンドチップス、夫はステーキを頼みました。

出て来たお皿を見てびっくりしたんですが、メインはともかく、山のようにグリーンピースが添えてあります。

私「日本でこのグリーンピースの量はありえんな」

夫「ありえんやろ」

フィッシュアンドチップスももちろんおいしいのですが、イギリスはやっぱりポテトがどこもおいしかったです。日本のバーガーチェーン店でしかポテトを食べないせいもあるかもですが。

オックスフォードを出て、今度はレディングという街でパディントン駅の列車に乗り継ぎです。レディング駅は、サッカーの試合があったのか、大声を出して騒いでいる男の人が何人もいました。

列車を待つ間、スターバックスが駅構内にあったので、飲み物を買うことにしました。アイスティーを頼むと「ブラックティー(日本の紅茶と同じ)はもう売り切れよ。グリーンティーならあるわ」と言われました。

グリーンティーと聞き、日本のおーいお茶や伊右衛門を想像して、グリーンティーを頼んだのですが、一口飲んで衝撃。

私「甘い!このグリーンティー、砂糖が入ってる!!!」

砂糖入りの緑茶は、とっても奇妙な味でした。ある意味、忘れられないです。パディントン駅に着き、へとへとになってホテルのベッドで就寝しました。

3.ロンドン名所めぐり

昨日オックスフォードを歩きすぎたのか、疲れてこの日は8時にバイロンホテルで朝食をとった後、昼近くまで二人で二度寝してしまいました。ツアーでない旅行のいいところは、休みたいときに好きなだけ休めることですね。

この日はロンドン観光をするつもりで、お昼にホテルを出たのですが、ケンジントンガーデンズを通りがかったら、アートギャラリーが出ていまして。一人の中東系の男性が、たくさんの絵を並べて売っていました。

彼の名前はニコライさんというのですが、本業は似顔絵作家のようで「写真を見せてくれたらそっくりに描いてあげるよ!」とにこにこしていました。似顔絵の絵の見本としてかかっていたのが、エリザベス女王や、何と日本の天皇陛下の肖像。

イギリスで陛下の絵ははたして売れるのでしょうか?ニコライさんは「結婚の記念や、家族が産まれたら描いてあげるから事務所においで」と名刺をくれました。そして、似顔絵とともにたくさんの抽象画や静物画が二十枚ほど並べてありました。その中から、一枚買いたいねという話になって、私と夫は吟味した結果絵を彼から75ポンドで買いました。日本円で約一万円ほどになります。

色合いがとても素敵じゃないですか? 日本に帰って彼の名刺から検索した結果、ニコライさんはシリア出身の方でした。シリアというと、今は厳しい状況下に置かれていることが日本のニュースからは伝わってきます。でも、彼の絵は、すごく何か、伝わってくるものがあるのですね。その思いを大切にしたいなあと思いました。

この日のお昼はクイーンズウェイの近くのタイ料理屋さんに入ってみました。イギリスの食生活に疲れたら、中華かアジア系の料理屋さんに入ったらいいよ、というのは鉄則のようです。日本人にとって。私は牛肉ヌードル、夫はローストチキンヌードルを頼みます。

出て来た麺は、日本ではあまり食べない味でしたが、やっぱり胃に優しかったです。イギリスに来てから、ずっと食べ物をうまく消化できてない感じがしましたが、この日のヌードルでやっと落ち着きました。

食べたあとは、地下鉄に乗って、オックスフォードサーカスへ。オックスフォードサーカスは、ロンドンの中心街です。降りて、その豪奢さに、びっくりしました。日本にも都会のデパート通りはありますが、建物がロンドンの場合どれもクラシカルで統一感があり、めちゃくちゃかっこいいんです。

夫「日本の銀座も、このへんの通りを参考にしたのかもなー」

ブランドもののお店がたくさんあるのですが、夫に連れられて、ファストファッションであるらしい「スーパードライ:極度乾燥(しなさい)」という謎のお店に足を踏み入れました。イギリスではわりと有名なところらしいです。(しなさい)までブランド名です。

夫「お土産にする?」

私「いいです…それにしても謎の日本語…いや中国語?」

絵をニコライさんから買ったものの、梱包をどうしようね、と相談していた夫と私は、オックスフォードサーカスのギャラリーに入ったとき、お店のお姉さんに相談してみました。

夫「僕らは絵を買ったんだけど、梱包に困っているんだ(英語)」

お姉さん「OK。じゃあ、梱包材(プチプチ)を分けてあげるわ」

イギリスのお姉さんめっちゃ親切!これで絵を持って帰るのも一安心です。

そのあとピカデリーサーカスという街を通り、私と夫はナショナルギャラリーに入ることにしました。ナショナルギャラリーとは、西洋絵画のコレクションが置いてあるイギリス屈指の美術館です。なんと無料で入れるのです。

宗教画もたくさんあって、もちろんどれも素敵なのですが、やっぱり一番見る価値があったのは、ゴッホのひまわりの原画でした。

薄い黄色のバックに、やはり黄色の少し枯れたひまわりが、なんともいえない雰囲気をかもしだしていて、じいっと見入ってしまいました。ほかにもモネやゴーギャンなどの原画があり、どれも素敵でした。

その後は、イギリスの観光地といえばこれ!のウエストミンスター寺院と、時計塔ビッグベンのあたりにやってきました。このへんはもう、ものすごい混みようです。そこまで歩く途中に、道路をローラースケーターの群れが音楽とともにわたって行って、ああ海外ぽいなと思いました。

ウエストミンスター寺院やビッグベンを見ても、イギリスのほかの見どころを見ても思うのですが、イギリスの人は伝統を重んじ、何世紀も前からの古い建物を大切にして、修復しながら住んでいるのですね。長い年月を経て、風雪に耐えた建物を見るのは、やっぱり感動的でした。

お次は、セントジェイムズパークを通って、バッキンガム宮殿に向かいます。言わずとしれた、エリザベス女王のお住いですよね。一番有名な衛兵式は、朝の11時に行われるそうで見られませんでしたが、遠目に真っ白い建物を拝見しました。

バッキンガム宮殿とほど近いセントジェイムズパークは、たくさんのお花が咲き乱れていてとても素敵でした。女王様のお庭なのですね、きっと。イギリスの公園は、ケンジントンにしても、ここにしても、ほんっとうに広いんです!それで人々も、緑の中でくつろいでいる。とても素晴らしいことだと思いました。

夕方になったので、さあ帰ろうと思い、ビクトリア駅から地下鉄に乗ろうとしたとき、古い教会に目がいきました。その外観のクラシカルな感じに惹かれて、夫と入ってみると、まさに、日曜礼拝のために人々が集まり始めたところでした。

夫「なかなかない機会だし、せっかくだから参加していこうか」

というわけで、飛び入りで礼拝(ミサ)を後ろの席で聞いていくことにしました。教会には、本当にたくさんの人種の人がいました。アジアの人も、アフリカ系の人も、何の違和感もなく、場に溶け込んでいます。現地の人も、私たちのような観光客も、御年を召した方も、タトゥーを入れているような若者もいます。

パイプオルガンが、石造りの教会の中に響き渡りました。讃美歌が始まって、じっと聞き入ってしまいました。パイプオルガンの反響が、とても素敵です。夫が、ここはカソリックだねと耳打ちしてくれました。神父さんがたくさん入って来て、説法をしたり、最近亡くなられた方の紹介をしたりしています。

だいたい30分ほど聞いていたのですが、その間に、神父さんの合図で、十字を切ったり、ひざまずいて祈ったりしなくてはなりません。なんと、前の椅子から、ひざまずくのに痛くないよう、革張りの台をひっぱりだしたりできます。

赤ちゃん連れの家族が何名かいて、礼拝の途中に泣き声が聞こえました。お参り用のろうそくの火が揺れます。ステンドグラスを透かして、午後の光が入ってきます。

私はキリスト教のことはよくわからないけど、雰囲気の荘厳さにやはり胸をうたれました。もっと、他の国の文化や宗教を学びたいなと思いました。礼拝の最後は、前の人や隣の人と、握手して終わりました。

地下鉄でホテルの近くに戻ってくると、夫が「今日は夕ご飯に良いもの食べよう」と言って、ガイドブック「地球の歩き方」に乗っているギリシャ料理の店に行こうと言い出しました。地元の方に人気の、おいしいお店らしく、ラッキーなことに歩いていけるようです。

にぎわう店内で、無事に席をとって、お料理を頼みました。と、そこまではよかったのですが。前菜が出るわ出るわ、サラダと、固いパンに何種類ものフィリングを塗って食べるお料理と、貝のトマト炒めを食べていたら、私たちのお腹はぱんぱんになってしまい、泣く泣くメイン料理のお肉をホテルに持ち帰るはめになってしまいました。

サラダはトマトとズッキーニとオリーブを、オリーブオイルと塩で味付けたもの、パンに塗っていたのは、ガーリック風味のマッシュポテトや、タラモサラダ、香草風味のバターとかでした。

こちらのお料理は、日本のものに比べて、とにかく量が多い場合があるので、頼むときにはどれくらい出て来るか、気を付けることが必要だと言うことがよくわかりました。

メインをテイクアウェイにしてくれたお店の店長さんには本当に感謝です。すみませんでした!

ホテルでのんびりミネラルウォーターを飲みながら、イギリス3日目の夜も就寝時間になりました。

4.スコットランドの古城にて

4日目の朝になりました。起床後は、いつもの朝食…ではなくて、昨日ギリシャ料理店でテイクアウェイ(イギリスではテイクアウトでなく、テイクアウェイというそうです)してもらったメインのお肉をいただきます。

羊の骨付き肉のグリルに、香草が混ぜ込んであるつくねのようなもののグリル。銀色のアルミのタッパーに入れられたお肉は、一晩たってもおいしかったです。気温も、日本の秋ぐらいの気候なため傷む心配もありませんでした。

お肉を食べて着替えたあと、いつものバイキング朝食のフロアで、夫はコーヒー、私は紅茶と、それぞれヨーグルトのパックだけをもらって食べました。

今日の予定は、4時間ほどかけて列車に乗り、イギリスの北のほうにあるスコットランドの首都エディンバラに行くのです。ホテルを出て、ポンドの手持ち金が少なくなっていたので、まずは日本円を両替します。夫曰く、全部空港で両替してしまうより、現地のレートを見て、お得なところで両替したらいいそうです。

エディンバラ駅の列車が出発するキングズクロス駅に、地下鉄に乗ってまず向かいます。さあ、キングズクロス駅に何があるかご存知ですか?すぐにピンと来た方はどのくらいいるでしょう。……そう、ハリーポッターの主人公ハリーが、ホグワーツ魔法学校へ行くときに、キングズクロス駅の「9と3/4番線」から出発したんでしたね。

キングズクロス駅で、案の定ハリポタショップを発見しました。ハリーの相棒、白ふくろうのヘドウィグのぬいぐるみや、4つのクラス「グリフィンドール・ハッフルパフ・スリザリン・レイブンクロー」のそれぞれのカラーのセーター、マフラー、カーディガンなどが売っています。魔法の杖も、いろいろな種類を置いてあります。

夫は9と3/4番線の、首から下げるチケットを購入し、百味ビーンズの購入も迷っていました。

ハリポタショップでいろいろ楽しく商品を見た後、ショップの外に出てみると、人だかりができています。なんと、本物の9と3/4番線がありました!カートと鳥かごが半分壁の中に吸い込まれていますよ!

たくさんの観光客が記念写真を撮るために並び、撮る順番が来たら、カートに手をかけ、巻いているマフラーを友人に引っ張ってもらって、ジャンプとともに、マフラーから手を離しています!これで、壁に吸い込まれる瞬間の写真を撮っているようです。

私たちは、エディンバラ行きの時刻もせまっていたので、残念ながら列には並ばずに、大人しく普通の6番線のホームへ降りました。

車内で食べるフルーツのパックとサンドイッチと水も買ったので、さあ、これから四時間の旅がスタートです。残念ながら、行きの座席は、お向かい同志に座れましたが、すぐ隣が窓ではなく壁になっていて、景色はあまりうまく見れません。

でも、遠くはありますが、反対の窓から、車外の景色が見えたので、ついついそっちに注目します。イギリス国内を列車で走ってわかったことは、とにかく、広い牧草地がたくさんあって、ものすごい数の羊や牛が放牧されているんですね。

白いもこもこした毛に黒い顔の羊たちは、みんな好きなように草原に寝そべって、草を食んでいました。そののんびりした様子を見て、イギリスの羊は幸せそうだなあと思いました。こちらも見ていて癒されます。

列車はどんどん北上し、夫が大学卒業後に学生生活を送っていたニューキャッスルの街も通り過ぎます。どこの景色を見ても、どの街を見ても、イギリスの街並は古く、積もる歴史を感じます。

11時にキングズクロス駅を出て、15時15分にエディンバラに到着しました。駅を出て、一歩大通りに足を踏み入れると、なんと、すごい数の人が道路にあふれています。そう、エディンバラは今、夏のフェスティバル中なのでした。

そこらじゅうに大道芸人や、音楽家たちがいて、その周りに人だかりができています。おもしろかったのは、ギターを奏でる男性と、その男性に肩車されているバイオリニスト。二人羽織、ではなくて、こういうのをなんていうんだろう。二人で、セッションしているんです。まわりの人たちも、はやし立てながら楽しそうに聴いています。

スコットランドの大通りには、お土産屋さんがたくさん並んでいるので、家族や職場へのお土産を買い求めることにしました。素敵なタータン・チェックのマフラーやストール、ツイードのキャスケット、牛の角で出来たさかずきに、スコットランドのショートブレッド(クッキー)やイングリッシュティー。ついついたくさん買ってしまいました。

さて、今夜泊まる予定なのは、エディンバラの少し郊外にあるダルハウジー・キャッスル・ホテルです。13世紀に建てられた古城を改装した宿泊施設だそうで、私は今回の旅行の中でも特に楽しみのひとつとしていました。

駅の近くから、タクシーで向かいます。スコットランドのタクシーは、日本のよりも大きくて丸っこい車体をしています。運転手さんは、すぐにホテルをわかってくれて、無事に送り届けてくれました。

到着したダルハウジー・キャッスル・ホテルは、蔦のからまる茶色い壁に大きな塔が印象的な建物でした。そして実は、夫はこのホテルに泊まるにあたって、とても楽しみなことがあったそうです。

夫「ふふふ…ネットニュースで見たけど、このホテル、幽霊が出るんだってさ…」

私「(しーん)」

ホテルのフロントで、早速チェックインです。赤い絨毯が敷いてある古い階段を上ると、ぎしっ、ぎしっと大きな音をたててきしみます。

あてがわれた部屋に入ってびっくり。なんと、ベッドに緋色の天蓋がついています!出窓があり、森が見えます。瀟洒な緑のタータンチェックのカーテンとベッドカバーがとってもこの国らしくて素敵。

大きな木製の暖炉と、鏡台が備え付けられ、本当に、貴族のお部屋といった感じです。部屋にもじゅうたんが敷いてあり、やっぱり古いのか歩くたびにぎしっといいます。

部屋で休んだあと、夕食はホテル内のレストランで摂ることにしました。私はサーモンとサラダの前菜に、マッシュポテトとグリルチキンのメイン、夫は野菜のスープの前菜に、ビーフハンバーガーのメインを頼みました。ペリエも一杯ずつ頼んでカンパイしました。

夕食のあと、ホテル内を少し歩いたのですが、古い本が置いてある書斎があり、このホテルで結婚式を挙げる人向けの広告であろうアルバムが置いてありました。たしかにこんな古いお城で結婚式は素敵でしょうね!

外に出て、夜の古城も眺めてみました。おぼろ月が夜空にかかり、オレンジの電灯でライトアップされた古城は、また素敵な趣がありました。さあ、今夜、果たして幽霊は出るのでしょうか…?

5.ハギスを食べてみよう

夜が明けて朝になりました。カーテンを開けると、まぶしい陽光が部屋に入ってきます。

私「幽霊出なかったね!!!」

夫「出るかと思って、少し睡眠不足だよ…」

チェックアウトの前に、ホテルのフロントスタッフさんに、ダルハウジー城の塔の前で、写真を撮ってもらいました。ツーショットです。

夫「タクシーでロスリン教会まで行こう。観光した後、そこからエジンバラまでバスが出てるはず」

呼んでもらったタクシーに乗り込むと、運転手さんがノリのいい音楽をかけてくれました。もしかしたらラジオだったのかもしれませんが、洋楽を聴きながらのタクシードライブはなかなか楽しいものでした。

ロスリン教会の開館15分前くらいに着いて、しばらく待っていましたが、中に入ることができました。

ロスリン教会は、スコットランドの観光地で、かの有名な映画「ダヴィンチ・コード」にも出て来る古い石造りの教会です。

教会の中に入ると、建物が石造りの彫刻で出来ていることがわかります。当時のお参りに来た庶民の人にも、聖書の訓話がよくわかるように、文字ではなく、彫刻の像という形で、表したものだそうです。

堕天使や、ベツレヘムの星、グリーンマンなどの彫刻がありました。建物の内部は撮影禁止でした。

ロスリンチャーチの案内所にはカフェがあり、私はそこで冷たいトマトパスタサラダとカフェラテで朝ごはんにしました。夫はチキンマヨのパニーニとジュースを飲んでいます。

と、その時、私は発見しました。

「スコットランドの伝統衣装を着たおじさん発見!」

スコットランドの伝統衣装とは、もちろんタータンチェックのスカートのことです。オープンカフェテラスでくつろぐ壮年のおじさんは、グレーに緋色の素敵なタータンスカートを穿いておられました。やっぱり、現地の人は、身に着けている人もいるんですね。

さて、ロスリン教会から、今度はバスに乗ってエジンバラに帰ります。初めての、英国二階建てバスに乗車でとってもうきうきします。

こちらのバスは、どこまで行くのかを運転手さんに伝えて料金を先払いし、乗車積の近くにある降車ボタンを押して、降りていくという形でした。

がたごとと、バスはスコットランドの住宅街を走ります。どのうちも、メルヘンというか、古い建物で、お庭があって、きれいなお花が咲いていて、素敵でした。

エジンバラに着くと、もうお昼近くです。ロンドンへ帰る列車が二時発なので、少し急いでお土産屋さんを最終チェックです。

母と祖母に、タータンのマフラー、父には牛の角でできた杯、弟にはツイードのカード入れを買いました。あと、職場にはショートブレッド。スコットランドのバターを使っているものです。

夫「カールトン・ヒルに登ろうか。10分くらいで着くよ」

カールトン・ヒルとはエジンバラの中心部にある小高い丘で、ここからエジンバラの街が一望できるのです。数々の石碑や歴史建造物などもあります。石造りの階段を上り、開けた景色があまりに綺麗で、思わず息を呑みました。

エジンバラの古い街並が、ぱーっと眼下に広がり、丘の芝生の上では地元の人や観光客がみな思い思いにくつろいでいます。なんか、本当にみんなのんびりして幸せそうに見えました。

同じくらいの大きさの、もこもこの犬を二匹連れたおじさんを見て私たちはささやきあいます。

夫「良い犬だ」

私「きっと毛の色からして、コーヒーとミルクティーっていう名前だろうね」

どこの国の子かはわからないのですが、小学校低学年くらいの姉妹が二人、きゃあきゃあいいながら、丘の上から下に、ごろんごろんと転がり落ちる遊びをしています。時が止まったように素敵な、カールトン・ヒルでの時間でした。

さあ、帰りの列車の時間までもうすぐというとき、夫が騒ぎ出しました。

夫「スコットランドにいるのに、まだハギスを食べてない!」

ハギスと聞いて、すぐなんだかわかりますか?ハギスとは、茹でたヒツジの内臓ミンチ、オート麦、たまねぎ、ハーブを刻み、牛脂とともに羊の胃袋に詰めて茹る(もしくは蒸す)詰め物料理の一種。スコッチ・ウイスキーの友だそうです。スコットランドの伝統料理なんです。

出してくれそうなパブを少しのぞいてみたのですが、どこも混んでいます。時間のない私たちは、熱々のベイクドポテトに、いろいろなおかずを載せて出してくれるお店を見つけました。ベイクドビーンズや、アボカドサラダの具のほかに、ハギスも載せてくれるようです。

夫は、もちろんハギス載せベイクドポテト、私は、ベジタブルカレー載せベイクドポテトを買って、エジンバラ行きの列車に乗り込みました。

私「わー、今度は広い窓の横の席だよ!!!」

お向かいの予約客が乗り込んでくるのは、もう少し先の駅だったので、早めに食べてしまうことにしました。

私「ベジカレー、これ、辛い!辛すぎる!」

夫「ハギスは俺、大丈夫。いける」

ハギスは、おいしいと思う人もいれば、本当に食べられない人もいるみたいで、私は一口もらって食べましたが、食べられない側でした。なんていうか、本当に、無理でした。

ダラム駅から、お向かいに、二人連れの客が乗り込んできました。西欧の青年と、東南アジア系の青年で、二人は友人のようです。西欧の青年の着ていた青いシャツの色がすごく良いなあと思って、見ていました。

あとから夫が話してくれたんですが、東南アジア系の青年の英語も、西欧の青年と同じくらい流暢だった。だから、きっと、東南アジア系の男性とはいえ、生まれは英国なのかもなあと言っていました。

私はハギスは口に合わず食べれず、ベジカレーは辛すぎて食べれず、お昼を食べ損ねてしまいました。それで、帰りの列車は、途中からずっと「日本食食べたい」ということしか考えられなくなりました。

からあげ、おにぎり、お寿司、肉じゃが、カレー。そういう単語が、頭の中をぐるぐる回りました。キングズクロス駅に着いて、夫と二人、夕食のレストランを探します。日本食はなかったので、中華のレストランに入りました。

チャーシュー炒飯を頼んだのですが、出て来たものを見てびっくり。刻んだちゃーしゅーが炒飯の中に日本なら普通入っていますよね? でも、出てきたのは、卵と米のチャーハンに、厚切りチャーシューが八枚ほど添えられたダイナミックな一皿でした。

私「イメージと現物と違うよ~」

夫「自分が頼んだ四川の炒め物は、かなり辛いな…」

炒飯は、細長い米で、とってもパラパラパサパサしていて、日本のものとだいぶこちらもちがっていました。

一緒に頼んだあったかいジャスミンティーは、おいしくて、たくさん飲んで胃を落ち着かせました。ギョーザは、皮がもっちりとしていました。

帰りは、めずらしく夫が地下鉄を乗り間違えました。環状線と、直線の地下鉄があって、反対のほうに乗ってしまったそうです。正しいものに乗り直し、やっとホテル最寄り駅に戻って来てほっとしました。

買いすぎたお土産を整理して詰めて、その日は熟睡しました。

6.ファニーガール!

エジンバラから無事に帰ったのは昨日。さて今日は、イギリスで遊べる最終日になります。前日の夜から、私たちは相談していました。

夫「ケンジントン・ガーデンズの中に、ロイヤル・アルバート・ホールがあるんだけど、そこで今夜、マルタ・アルゲリッチのピアノコンサートがあるらしい!チケットの当日券がとれたら、見に行きたい」

私「それはいいねえ」

といって話していたのですが、当日朝、ロイヤル・アルバート・ホテルまで当日券を買いに行った夫ですが、残念なことに「立ち見席しかもうなかったからあきらめる」と言って帰ってきました。

私「じゃあ代わりに何しよっか?」

夫「じゃあ、ロンドンの街中まで出て行って本場のミュージカルを見よう」

私「よし、決まりね!じゃあ朝は、ノッティングヒルゲートの骨董市に行きたい。ここから歩いていけるでしょ」

というわけで、午後のミュージカルを予定に入れて、10時ごろノッティングヒルゲートの骨董市に行くことにしました。

ここの骨董市はロンドン一素敵なアンティークのお店が集まっていることで有名だそうです。わくわくしながら向かいました。

ノッティングヒルゲートの地下鉄駅から、少し入ったところに、骨董市通りがありました。ティーカップやミルクカップなどの陶器のお店、銀食器や銀細工のお店、懐中時計に、人形のお店、とにかく、古くて年季の入った品物がとことん集まっています。

イギリスのティーカップは、やっぱりお洒落で可愛かったです。今回旅の荷物を軽くするために、あまりほしいものをばんばん買うということができなかったのが残念でした。

ツイードの商品を扱っているお店があって(ここはアンティークではなく新品のものですが)そこで自分用のお土産に、タータンチェックの布地の黒い革ショルダーバッグと、英国っぽいマフラーを買いました。

骨董市には、安い古着のワンピースや帽子なども、すごく安く売られていて、もう見てるだけですごく楽しい!向こうの若い女の子は、ミニ丈の半そでやノースリーブのワンピースをよく着ているのですが、みんな似合っていてかわいかったです。

さて、お昼になったので急いでピカデリー・サーカス駅へ地下鉄で移動!ミュージカルのチケットを買わなければいけません。ライオンキングやチャーリーとチョコレート工場など、名作チケットが並ぶ中、夫は「ファニーガール」という作品が見たいようです。

私「それでいいんじゃない?」

夫「じゃあ決まりね」

ちょうどキャンセルチケットが出たらしいので、上手く手ごろな値段で買うことができました。さて、朝から動き回ってお腹のすいた私たち。お昼ごはんを食べなくてはなりません。

私「こっちの食生活ちょっと疲れた…麺なら食べてもいい」

夫「お、日本料理店wagamamaがあるよ。ラーメンもあるから、入ってみようか」

というわけで、シアター近くの日本料理店でお昼を食べることにしました。夫はやきとり丼、私はチキンラーメンを頼みました。地下の広い店内で、いろんな人種の人が、いわゆるここでの「日本食」を食べています。

私「おおっ、向こうの西欧の若いお姉さんたち、大皿のソース焼きそばを食べてる!」

夫「働いてる人の中に、日本人、あまりいなさそうだね」

夫のやきとり丼を一口分けてもらったのですが、とてもおいしかった!懐かしいお醤油味に、普通の白いごはん。サラダのようなカット野菜も乗っていました。私の頼んだラーメンは、スープがとってもあっさりしていて、ベトナム料理のフォーのような鶏だしスープでした。

お昼を終えて、シアターに急ぎます。ロンドンの街中は、日本のように道案内の地図がポールに立て看板として載せてあるのですが、そのポールの横に、ボランティアなのか雇われなのか、道案内人のピンクのポロシャツのおじさんが立っているのですね。

「君たちどこへ行きたいんだね?何?サボイシアタ―?じゃあ歩いている方角が反対だ。向うにまっすぐ歩いて行って、ここを曲がればいい(全部英語)」

などと教えてくれるんです!親切!というわけで、無事に時間ぎりぎりではありましたが、「ファニーガール」の会場であるサボイシアタ―に着くことができました。

ミュージカル「ファニーガール」は素晴らしかったです。ブロードウェイで昔活躍した喜劇女優ファニー・ブライスの半自伝的ミュージカルがもとになっているこの作品。美人でもスタイルがよくもない女の子ファニーが、笑いを取れることを武器に、ショービジネスの世界でのしあがっていく話です。

ファニー役の主演女優さんがほんっとに魅力的で、惹きこまれてしまいました。なんて響くのびやかな歌声なんだ!と感動しきりです。そうそう、キャンセル分を買った席も、ものすごく良い席だったんです。ほぼ真ん中中央で、高い位置の席だったので、舞台がすごくよく見えました。大満足です。

ミュージカルが終わり、夫と感想を言い合いながらサボイシアタ―を出て、カフェでお茶をすることにしました。めずらしくストロベリージュースなんかがあったので、頼んだのですが、ジャムみたいな瓶を開けて店員さんがグラスに注いでくれたものが、また美味いの!

イタリア産のジュースのようでした。ほかにもずらりといろんな果物のジュースがそろったブランドでした。

夫「これ日本に輸入できたら売れるかも」

私「たしかにっ」

夕暮れ平日のロンドンは、仕事から帰る人の群れでごった返しています。地下鉄がいっぱいで乗れそうになかったので、ひと駅ボンド・ストリートまで歩くことにしました。真向から西日が照り付けてきて、まぶしさに目を細めながら歩きました。

途中でまたまた、日本料理のお店を発見。Wasabi(sushi & bento)というお店です。ちょっとだけ入って、そこの「弁当」はどんなものかと拝見すると、サーモンの寿司と焼き鳥と枝豆の詰め合わせでした。

私「日本食なことは認める」

地下鉄でクイーンズウェイまで帰って来て、スペイン系イタリアンのお店で夫はステーキ、私はボロネーゼのパスタを食べました。イギリス旅行ももう終わりだと思うと、淋しいです。

レストランを出て、トルコの人がやっているお店でケバブを買い、日暮れのケンジントン・ガーデンズの芝生に座って食べました。8時なのに明るい、不思議な夕方で、地球の反対側の国にいて、こうしてのんびりと夏休みが過ごせる喜びをかみしめました。ケバブは、パンに羊の焼肉と野菜を挟んだものですが、これはなかなか美味しかった。羊って、癖があるけど、おいしいと思いました。

ホテルに帰って来て、今日は早めに就寝です。明日は5時起きでホテルを出なくてはいけません。そして、最後の問題が…

夫「ニコライから買った絵、日本にどうやって持って帰ろう?」

私「機内に果たして持ち込めるのか?」

さあ、最後の難題です。

7.リンゴジュース危機

よく寝付けないまま、朝の五時にセットしたアラームが鳴りました。窓の外は真っ暗です。

私「ロンドンシティー空港から、9時半出発の便だから、二時間前には着いてなきゃ」

夫「眠いよー」

急いで身支度をして、荷物を持って、バイロンホテルとさようならです。受付も暗く、スタッフがいなかったので、置手紙を書いて、ホテルから出て行きました(宿泊料金は支払い済)

まだ暗い街並を、地下鉄の駅に向かって歩きながら、頭がさえざえとしてきます。もう、この国での楽しかった日々とお別れです。

朝早いはずの地下鉄なのに、出勤するのでしょうか、乗客はまばらですがちゃんといました。私たちは、少しずつ明るくなってくる外の景色を見ながら、ロンドンシティー空港に向かいます。

ロンドンシティー空港には、7時過ぎに着きました。さあ、結局、腕に抱えて持ってきたニコライ作の絵を機内に持ち込めるか、聞かなくてはなりません。

チェックイン列に並ぶと、空港の黒人女性スタッフが声をかけてきました。

スタッフ「あなたたち、9時半の便でしょう?まだ並ぶのが早すぎるわ!今は8時発の人たちを先に案内しているのよ!」

とても元気な彼女に、夫が交渉を始めました。

スタッフ「この絵を機内に持ち込めるか?OK、大丈夫よ!普通の手荷物と一緒に、飛行機の中に持っていって乗ればいいわ!」

私と夫「!!!」

絵を持ち込めなかったら、空港に置いていくしかないね、と話していたので、本当に良かったと思いました。

しばらく待って、大きい荷物を預け、手荷物検査の列に並びます。私は何の問題もなく通れましたが、夫がひっかかりました。手荷物を開けて、空港スタッフと話してから、戻って来た夫に聞いてみると、ビタミンサプリの瓶がひっかかったそうです。

夫「液体でもないのになんでや…」

手荷物検査も無事終えて、後は出発便に乗るためにどこのゲートに行けばいいか、出発ロビーの中で電光掲示板に情報が乗るのをソファで待っていたときに、この度最大のトラブルが起きました。

夫が空港内で買ってきてくれたリンゴジュース。500ミリサイズのペットボトルに入っていたので、少しだけ飲んで、フタを閉めて、ナイロンのショルダーバッグに入れていたんです。

それを、また飲もうと取り出してみると、やたら軽い。嫌な予感に、バッグの中に手をつっこんでみると…

私「バッグの中にリンゴジュースの池が出来てる!!!」

夫「ああ、こっちのペットボトルって、日本のとは違って、しっかりフタがしまらなかったりたまにするから、バッグに入れちゃだめなんだよ☆」

私「先に言え―――!!!」

パスポート、搭乗券、お財布、財布の中のお札、地球の歩き方イギリス編、それらがすべて、リンゴジュース浸しになってしまうという、大惨事。

と同時に、出発ゲートが決まったことが、電光掲示板に乗りました。しょうがないので、リュックの中につめてあったTシャツをタオル代わりにしてリンゴジュースをぬぐい、ほうほうの体で出発ゲートに向かいます。

この旅、最大のやらかした感を、まさか最終日空港で感じるとは思いもしませんでした。

ロンドンシティー空港で乗り込んだアムステルダム・スキポール空港行きの飛行機は、出発が非常に遅れ、30分以上も、機内で待機しながら離陸を待たなければなりませんでした。

それでも、無事に飛び、アムステルダムで二時間くらい待った後、スキポール空港から、またオランダ航空のジェット機に乗り、関西国際空港へ向けて、出発することができました。

帰りの飛行機でも、機内食が最初と最後に出ました。帰りの飛行機は、行きに比べて、やたら上空で揺れます。怖いと思って、夫に聞きました。

私「なんでこんなに揺れるのかな?行きと違って」

夫「風っていうのは、西から東に吹くやろ。いまヨーロッパから、日本に向かっているということは、西から東へ吹く風の、気流に乗っているってこと。気流に乗るから揺れるけど、その分スピードは速い。目的地にも、早く着くはず」

行きの飛行機ではほとんど寝れなかったのですが、帰りの飛行機では、行きよりも慣れたのか、多少うとうとできました。

日本に無事に着いたときには、安心してちょっと気が抜けました。10時間以上のフライトの後で、すぐサンダーバードで三時間かかる金沢への帰還が出来るかな?と危ぶんでいたのですが、旅の興奮のせいか、機内で少しは寝れたせいか、それほど起きているのも動いているのも苦痛ではありませんでした。

大阪駅から、金沢行のサンダーバードはちょうどいいタイミングで、ほぼ待たずに乗れました。発車ぎりぎりに、駅弁をキオスクで買って、乗り込みました。

サンダーバードが動き始め、流れて行く日本の街の景色は、イギリスとは全然違うもので、んだか自分のふるさとの国なのに、とても感慨深く感じました。

私「お弁当おいしい…なんのへんてつもないのに、こんなに日本のお弁当と伊藤園のペットボトルのお茶がおいしいと思ったことはない!」

夫「いま泣きそうになりながら言ってるその感想が、この旅行のハイライトだね」

というわけで、私のイギリス旅行記は、このあたりでそろそろおしまいです。初めての長期海外旅行が、余りに楽しかったので、ついついこんなに長い旅行記を書いてしまいました。最後までお付き合いいただいた方々、本当にありがとうございます。

つまみ食いしてところどころ読んでくださった方も、とっても幸せです。お弁当美味しいとか最後にぬかしていますが、イギリスは、本当に伝統と歴史を重んじる、素晴らしい国でした。本当に機会があれば、また行きたいです。

私は、小さい頃から英語は勉強してきたけれど、国際社会って言葉では聞いて頭ではわかってても、実感があまりありませんでした。でも、ロンドンを歩いてみて、その街で日々の暮らしを営んでいるいろんな人種の人々を目の当たりにして、言葉では上手くいえないけど、深く何かが胸に刻まれました。

「ふるさと」って言ったときに、石川県だとか、日本だとか、県境、国境で囲まれたその中を普通にこの国で暮らしていたら考えてしまうけど、ほかの国に暮らす人々も、同じ地球という星をふるさとに持つ、仲間なのだよな、っていうことが実感できました。

日本に生まれて、普通に日本の国の文化が好きで、日本語を愛していて、大好きな日本語で何か表現したいなと思っていたのが、今までの自分でした。でも、それは何が根拠だったのかなって、今では自分に問うてみたい気分です。

自国文化を愛するのは、産んでもらった家族を無条件に愛するのと、同じようなことで。それは、微笑ましい温かい感情ではあるけど、そこにとどまったらいけないのかもしれません。

赤ちゃんがやがて成長し、家族のほかに友だちをつくろうと思うのと同じように、人は自分とは違う匂いのものを、求めていくのが大人になることなのかもしれません。自分の家族も愛し、大切にしつつ。それが相互理解ということなのではと思います。

自分の国を大切に思うように、他国の文化や人にも、関心を持てたら。大切に思って、尊重できたら。そのために、外国語や外国文化を学ぶ意味があるのだと思います。

とりあえず、外国映画や翻訳作品を愉しむことから、まずは始めようかな、と思った、7日間にわたる旅の終わりでした。

現在のわたし

現在について少し書きますが、このイギリス・スコットランド旅行以来、海外には一度も行けていません。日々の仕事に追われています。

だけど、冒頭でも書いたように、この旅をきっかけに、私の中に空いた風穴に、はるか遠い異国の地から、風が吹いてくるのがわかるようです。

どの世界の、どんな国の、どんな地方に暮らしていても、人々は日々を営み、仕事に行き、勉強したり遊んだり、泣いたり笑ったり、自分と見た目形が似ていない異国の人であっても、そうして人生を送っているのだなと、ひしひしと身に染みてわかった海外旅行だったと思います。

楽しい事があれば幸せを感じ、辛いことがあれば、痛みを負う。その事実は、世界に生きるどんなひとであっても、変わらないのだと思います。

また、いつの日か、知らない文化や人々に会いにいく旅をして、自分のなかの風穴をもっと大きく空けてきたいと思います。

いつも温かい応援をありがとうございます。記事がお気に召したらサポートいただけますと大変嬉しいです。いただいたサポ―トで資料本やほしかった本を買わせていただきます。