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オトナ女子のあこがれ読書#001 大橋鎭子さん

大橋鎭子さんをご存知でしょうか。お名前に聞き覚えがないな、という方でも、雑誌「暮しの手帖」を知らない人はいないと思います。大橋さんは、いまでも多くの人に愛されている雑誌「暮しの手帖の創刊者のおひとりです。

大橋さんと一緒に「暮しの手帖」を創刊した花森安治編集長のもとで、大橋さんは、生活の知恵やおしゃれの方法などを描いた、小さなコラム集「すてきなあなたに」というページを、雑誌「暮しの手帖」で連載しはじめます。

その功績が称えられ、のちに「戦後の一般の人の暮しを豊かにした」として第10回東京都文化賞を受賞されました。

さて暮らしの手帖の、「すてきなあなたに」の欄を読んだことがある方はこの中にいらっしゃるでしょうか。私の祖母は、いつも暮しの手帖を本屋さんから届けてもらっていたので、小さい頃から、よく雑誌をめくっていました。

「すてきなあなたに」を私が読んでいたのは1990年代でしたが、その頃まだ大橋さんがこの欄をじかに書かれていたかはわかりません。もしかしたら、次の代の方が引き継いで書かれていたかもしれません。でも「すてきなあなたに」の特徴でもある、ゆっくりおっとりした、平仮名の多い、どこかぬくもりを感じさせる文体には、子どもの私も夢中になって読みました。

聞いたこともないようなめずらしい外国のお料理や、日々の洋服の素敵なコーディネートの仕方や、紅茶のおいしい飲み方、さりげない日常の中でのマナーなどについて、ほんのり柔らかな文章で、大橋さんは私たちに「こんな暮らしって素敵じゃない?あなたもやってみたら」と提案してくれます。

大人の女性っていうのは、こういう風に楽しみ上手なのよってことを、ほんの短いエッセイの中で示してくれるのです

ポケット版「すてきなあなたに」の第1巻「ポットに一つ、あなたに一つ」から、少しだけ大橋さんのエッセイの魅力を伝えるために引用したいと思います。

花のお皿
ハンガリーで生れた、その、派手すぎるほどのお皿を買う気になったのは、寒い冬の日が、あまりにも長かったからかもしれません。身のまわりに、なにか、パッと赤いものが欲しくなっていたのです。ふつうの大きなお皿で、白地に、ゼラニュウムの花のような赤と、緑だけで模様が焼き付けられています。
どんなふうに使おうか、と考えながら帰ってきました。ちょうど、つやのいい、いちごがありました。紅いいちごを緑のヘタごと洗いあげて、たっぷり盛りました。派手なお皿に、派手ないちごの山を、夕ごはんのテーブルに置きましたら、「まあ、元気いっぱいの感じでいいじゃないの」という声とともに、たちまち売り切れてしまいました。
この頃のいちごは甘いので、洗ったまんまを、ミルクも砂糖もなしに食べました。うんと派手やかなものが欲しいとき、このお皿に出てもらおうと思っています。

——いかがでしたか?

日常の中に、ぱっとご自身の工夫で、色を添えることが、大橋さんはとてもお上手です。「なにかおもしろいことなーい?」「つまんない毎日ばっかり」だなんて、彼女は絶対に言わないと思います。

日常を彩り豊かに、楽しく過ごすには、本人の機知と工夫が必要だと、大橋さんは知っていて、どんなにささいなことでも、その中に楽しみや美を見つけます。

【大橋鎭子さんから学ぶ、女性の生き方とは】

・ささやかな暮らしの中に、楽しみを見つける
・衣食住にちゃんと気を配る
・周りの人にさりげなく優しさを配る
・他国・他文化の暮らしに興味を持つ
・自分でなんでも手作りしてみる

今回はAmazonリンクを1巻だけ貼りましたが、私はnoteの売り上げで購入したポケット版「すてきなあなたに」10巻セットを持っています。

とってもとってもかわいい本で、寝る前とか、旅先とか、電車での移動とかにぱらぱらめくっていると、それだけで心が落ち着いてきて、口角も上がります。

まるで、本自身に魔法をかけられたみたいに。

と言う感じでお送りしました、オトナ女子のあこがれ読書 #001  いかがでしたでしょうか?

昭和を生きた女性エッセイストの方々は、みんなそろってそれぞれの美意識を持ち、心の中の強い芯がうかがえる方ばかりです。

よかったら、この紹介を機に、お手にとってみてくださいませ。

では、また第2回でお会いしましょう。

(残り9人のラインナップは下記記事内に記載してあります!お楽しみに!)




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