『ごはん小説』多くないですか?

「食べること」をメインに据えた小説や漫画が、本当に最近は多く出版されるようになった。私が高校生くらいの頃(今から10数年も前)は、高校の図書室に並んだ小説を見ても、人気だった漫画雑誌にも、今ほど「食べる」お話は載っていなかったと思う。

とはいえど、村上春樹さんの「ねじまき鳥クロニクル」はスパゲティーをゆでる描写から始まっているし、山田詠美さんの「風味絶佳」の中の一篇でも、女の人が「私は、男に食べさせる」と美味しそうな食事を用意していた。人の営みそのものである「食」を小説の中に出すことは、そう不思議なことでもなかったが、今書店でそのたぐいの本がとても多いのを見ると、少しくらくらしてしまう。

小川糸さんの「食堂かたつむり」のヒットがその走りだっただろうか。私の本棚に並んでいるだけでも「食べること」が中心の作品は、友井羊さんの「スープ屋しずくの謎とき朝ごはん」、十三湊さんの「ちどり亭にようこそ」、柚木麻子さんの「ランチのアッコちゃん」シリーズ、高田郁さんの「みをつくし料理帖」シリーズ、マサト真希さんの「まいごなぼくらの旅ごはん」、小湊悠貴さんの「ゆきうさぎのお品書き」など枚挙にいとまがない。ライト文芸に偏っていることは否めないが、それでも多い。

漫画では、よしながふみさんの「きのう何たべた?」をはじめ、新久千映さんの「ワカコ酒」では飲兵衛のOLが居酒屋でおつまみをおいしく食べるというのがコンセプトの漫画だし、マキヒロチさんの「いつかティファニーで朝食を」なども「おいしい朝ごはんを食べる」ということを焦点にあてて、お話が進んでいく。羽海野チカさんの「3月のライオン」にしても、あかりおねいちゃんのつくるごはんを美味しそうだと思わない人はいないだろう。

食事のシーンを読むのは、正直すごく好きなほうだ。実際の食事を目の前に用意されるよりも、もしかしたら好きなことかもしれない。でも、こうして「食事」を話のメインに据えた小説や漫画が、どんどん発売されるのを見ると「やっぱりこういう話、ニーズがあるんだなあ」と思わずにいられない。

はてさて、食べ物系小説や漫画を好んで読む私たち読者は、そこに何を求めて読むのか、そして買うのか?

問いを立ててみたが、私がわかるのは自分のことだけなので、自分がなぜそういう作品を読むのかについて、考えたら、こんな答えが出てきた。

『精神的な「飢え」がそのコンテンツを読むことで解消されるから』

この答えが、そういうものを読む人たち全員の心情としてあてはまっているかは、私自身はわからないが、自分のことだけでいいなら、この答えを出したい。

食べることは「空腹」を満たすことだ。そして、私たちの食欲は絵に描いた餅にも向けられる。母から聞いた話で、自分自身の記憶はないが、私は幼い頃、料理の本のページをちぎって口に入れたことがあるらしい。よっぽど、美味しそうだったのだろう。

それと同じように、思春期の頃から、小説の中に料理の描写を好んで探すようになったけれど、その数行を読みたいのはなんでだったかといえば「なんだかそこを読むだけで、精神的に満たされた気分になるから」だった。たぶん実際のごはんを口にするよりも、満たされた。

たぶん料理というのは「誰かのために(それが自分であっても)」作られて、「誰かを満たすための」ものであるからだ。それはつまり、作った人の愛情を受け取っていること。ベタな回答で恥ずかしいが、紙の上であっても「誰かが誰かにつくったごはん」を、主人公に寄り添って一緒に受け取ることで、私は和んだり癒されたりしていたのだと思う。

まあ単に、料理描写が好きで仕方なくて読む、というシンプルな人も多いように思う。インスタグラムを開けば、ものすごい数の素敵な料理写真たちがばーっと並ぶ今日この頃だから、料理の出てくる小説や漫画も増えるのが自然な現象なのかもしれない。

今日もアマゾンkindleの画面を開きながら、ついついポチってしまい「またごはん小説を買ってしまった…やられた!策略にはめられた!」と一人反省会をしている私である。

出版されるとあるだけ買ってしまいそうなので、出版社の中の人には「少々出版点数を抑えていただけないか」と投書してしまいそうだ(嘘です)。

どの本のお料理描写も、温かくて大好きです。

追記:お料理描写が美味しそうな一押しの小説・漫画があったらコメント欄で教えてください。チェックします!

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ほしちか

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コメント19件

私もそう思ってました。アメリカ在住なので、漫画はピクシブコミック経由なので、ピクシブの選びかたが偏っているのかな?と思っていましたが、やっぱり一般的に多いんですね! 料理漫画の元祖といえば「美味しんぼ」と「クッキングパパ」ではないでしょうか。
サンフランシスコ講和条約さん コメントありがとうございます!アメリカからピクシブを通じてコミックを…!やっぱりそこでも食べ物系、多いんですね。美味しんぼもクッキングパパも、子供の頃から楽しんで読んでましたよ。この二本は外せないですよね。
初めまして。
ごはん小説というわけではないのですが、「花の下にて春死なむ」から始まる、北森鴻先生の香菜里屋シリーズおすすめです。
度数の違うビールを数種類揃えた、三軒茶屋の香菜里屋というバーに集まる人々の、ちょっと不思議なお話と、季節に合わせた素敵なお料理がたくさん登場します。
三倉井さん はじめまして!コメントありがとうございます。ご紹介作は存じ上げなかったので、ぜひ読んでみたいと思います。不思議なお話も素敵なお料理も大好きなので。素敵な作品教えてくださって感謝です。
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